教会へ
GM:さて、旅籠のおかみさんから聞いた話によると、アルカス神父は教会にこもりっきりということだ。このまま待っていても、ラチがあかないかもしれない。
君たちは待つのをやめて、教会に向かうべきだろうか。
さて、どうするかな?
PL2:なるほど、そう言う話になるわけか、うーんどうするかな?
PL3:危険があるかも知れませんわよ。
PL1:この段階でいきなり戦闘になるということはないだろうが、備えておいて損はないだろう。ドミトリーの技能で、何かできないか?
PL2:よし、じゃあこうしよう。ナイフを作るぜ。ドミトリーはポケットの釘を叩いて圧延して、それを刃物のように加工しようとする。GM、できるか?
周りのプレイヤーは、その手があったかという顔をしている。
しかし俺はGMとしての長い経験から、このPL2のキャラクターが武器作製のために作られたキャラだということは見抜いていた。
ポケットに入れた釘は、どう見ても武器に加工するための素材にするためのものだ。わざわざ釘の材質を「銀」と指定したのは、今回のシナリオの冒頭の紹介文で、人狼が出てくることを確信し、「銀の武器」を用意しようとしたのだろう。
だがこれくらいの事は想定している。銀のナイフ一本で、シナリオが破綻するようには作っていない。
GMというものは、シナリオをうまいこと着地させ、プレイヤ―全員を楽しませることに責任を持つ、なのでシナリオに悪影響があると思えば、この手の提案をぴしゃりと却下することもできる。
しかし、プレイヤーの提案を却下して、楽しみを削ぐのは良くない。
コレくらいなら問題ないと思った俺は、PL2が操作するキャラクターのドミトリーに、武器の作製を許可することにした。
GM:まあ良いでしょう。しかし適切な道具が無いので、難易度が20上昇します。
PL2:成功率79%か。ちょっと怪しいな。ダイスロール!出目1、大成功だぜ!
GM:(マジかよ!!こいつら大成功か大失敗しか出さねぇな!!)
GM:えーではドミトリーの神がかった金属加工の技術で、何の変哲もない銀の釘は、ポケットナイフのような形になりました。そうですね、ダメージは拳をふるった時のダメージが3点ですから、それに2点加点して、5点取しましょう。
PL2:お、結構な威力になったな。4,5回刺せば、平均的な人間なら倒せるな。
GM:なんかヤベーこと言い出してますが、そうですね。そこそこ強い武器です。しかしなんでいきなりこの人、旅籠でナイフ作り始めたんでしょうね。
冷静に考えたら、めちゃくちゃヤベーやつだな。
シナリオの都合上、警察がいない辺鄙な村にしたが……街を舞台にしたシナリオなら、普通に捕まるだろこれ。
PL2:ではナイフを作った俺は、それを隠し持っておくぜ。
GM:わかりました。ではドミトリーの所持品に「銀のナイフ」を追加してください。威力は5点です。
PL2:わかったぜ。じゃあ教会に行く方向で※話を進めてくれ、教授。ここで待ってても、なんか展開しなさそうだ。
PL3:たしかにそうですねー。
※話を進めてくれ:テーブルで紙とペンを使って行うロールプレイングゲームでは、PLに数字が振られている場合、PL1が主人公の役割を果たし、ストーリーを引っ張るような行動を取る。あくまで慣例だが、ゲームによっては明文化されている場合もある。
PL1:では教授は立ち上がって、皆にこう告げますぞ。
「アルカス神父は教会にこもりっきりということは、ここに来るかどうかも怪しいですな。直接協会に行って、彼と話をすることにしましょう」
「わかったぜ教授」
「私も異論はないわ」
GM: では君たちは旅籠を出て教会へ向かった。教会は旅籠を出て右へ曲がったさき、村の中心を貫くようにしてはしる砂利道、それを進んだ終点にあった。
GM: 村の中心にある教会は、背の低い屋根にワラを葺いた家々に取り囲まれるようにしていた。それはどことなく、アリに群がられた獲物を思わせる。
GM:君たちは教会にたどり着き、金属の金具で止められた中世の城の城門を思わせる、
PL1:では扉を押し開けるとしますかな。
PL2:待て教授、その前に聞き耳と観察だぜ。何か罠があるかも知れねえぜ。GM、このあたりを目と耳を使って調べたいぜ。
むぅ、下手にベテランのプレイヤーだけあって、用心深いな。
特にイベントは用意してないのだが……。いや、まてよ?
ふむ、設定としてはあってもおかしくない。こうしてみよう
GM:良いでしょう。ではダイスを振ってください。スキルの値以下が、そのまま目標となります。
PL2:ダイスロール!うん、目と耳、二つとも成功だぜ。
GM:では周囲に聞き耳を立てましたが、静かなものですね。とくに何かが動いているような音、そういった気配は感じません。そして視覚の方ですが――
GM:ドアの取手の近くにキズがありますね。まるで動物が
PL1:おっこれは?
PL2:これは怪しくなってきたな。この傷を残したの、人狼じゃね?
PL3:じゃあ神父はもう死んでる?
PL1:その結論を出すには早すぎますな。「扉に傷がある」という事実だけを共有しましょう。とにかく中に入らないことには、何が起きているのかわかりませんから。
PL3:確かにそうね、決めつけは良くないわ。
流石だな。口先だけのプロレスだけでなく、実際に頭がよく回るからタチが悪い。
まあそれはともかく、彼らもシナリオに乗ってきたな、このままの調子で行こう。
PL2:ひとまず調査の内容を二人に伝えよう。そうだな、こんな感じで……。
「おい教授、この扉の取手のところを見てくれ。妙な傷があるぜ」
「妙な傷ですかな?ははぁこれは……まるで動物がつけたようなキズですな」
「何か気味が悪いわね。まるで人狼が現れたみたい」
「ふむ、教会に人狼ですか。もし人狼が現実に存在していたら、神の威光は通じませんか?いえ、変なことを言いましたね。ともかく、神父を見つけましょう」
PL1:そう言ってドアに手をかけて、そのまま開きますぞ。
GM: 了解。ではドアを開け放った教授だが、教会の中から生臭い異臭がしてきた。
GM:みると、乾いた血液がマホガニーの床の上に点々と続いている、その血の痕を視線でたどっていくと、その先には仰向けに倒れた人の遺骸があった。
GM:遺体にはステンドグラスから色とりどりの光が降り注いでいる。花畑のような光を受けるそれは、天を仰いだまま、その両手両足を放り出している。異様なのはその胴体だ。アバラが割られ、骨が花のように咲きほこっている、そしてその中に収められているはずのモノが、辺りにばらまかれていた。
GM:神聖な神の家、教会において、このような世にも恐ろしい血みどろの状況を目にした君たちは、驚き、恐怖して正気を失う。
GM:さて、正気度チェックの時間だ。ダイスを振り給え。
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