旅籠にて

GM:「さて、君たちはビノス村唯一の宿泊施設にして、食事処の『笑う子犬亭』にはいった。当然、君らは店内を見ることになるだろう」


PL1「おっとヘルメットで視界が悪いですからな、良く見えませんぞ」


PL2「オレも普段、銀の破片とかが目に入ってるから視力がお爺ちゃん並みだわ」


PL「私、モノを見るのは使用人に任せていますから、目をつむって入りますわ」


 何でこいつら無駄に警戒心が高いんだ。社会生活できねーだろ!


GM:「特に奇妙なものや、恐怖を感じさせるもの、神話的生物の存在を感じさせる遺物はない。ごく普通の、いたってなんでもない店内だ」


PLたち「「目を開けて普通に歩きます」」


 ……思うところはあるが続けるか。


GM:「中世そのままの古風な趣を残している店内は、民俗学の興味を持つ君たちにとっては、なおさら魅力的に映る事だろう」


GM:「では旅籠に入った君たちはどうするかな?」


PL1:「とりあえず入り口とは別の出入り口を探しますぞ。教授は防災意識が高いのですぞ」


 なんかしらんが無駄に警戒しているな。

 まあ説明するのも面倒くさいし、地図の絵をカカッと書いて出すか。


GM:「まあ普通に外につながった出入り口は一個ですね?従業員用のキッチンに向かうドアとトイレのドアがあります」


 俺は適当な紙にヨレヨレの線で建物の図解を書く。


PL1:「それはおかしいですな、『消防法の観点』から言ってもあるのが自然ですぞ、ここらに無くてはおかしいですな!!」


 そういって教授は建物に消防法の観点から出入り口をもう一個作りだした。

 勝手に何してんだこら!!!!


PL2:「では俺はポケットに入った銀の釘で、出入り口のカギをこっそり破壊するぜ」


 それ犯罪ぃぃぃ!!!


PL3:「わたくしはそれを隠すように前に立ちましょう」


 なんだこいつら!何も異常がない村でいきなり破壊工作し始めたぞ?!


 クソ!!なんでこんな無駄な描写を入れないとまともにうごかんのだ!

 ええい!動け!動かんか!普通にウェイターとか女将さんと会話しろ!!


 しかしここで好き勝手されてもシナリオの全体には大きく影響しない。


 ここはまあ適当に好きなようにやらせておくか。

 どうせこの旅籠は、この後たいして使う予定ないし。


GM:「えー、では製作の半分、目標値49でどうぞ」


 ここで100面ダイスを振って、値が49以下なら成功で鍵を破壊できる。

 そしてそれ以上の出目、50からは失敗となる。


 サイコロの目は……100か。出目100は「大失敗」といって、GMはプレイヤー側に何か不都合な結果を用意しないといけないのだ。


 ええい面倒ごとばっかり起こしよって!!

 そんなの用意してねえよ!!


GM:「えー、では鍵を破壊しようとしたドミトリーですが、ブチ折って失敗します」


PL2:「あ、やべぇ、釘折れた。」


GM:「ではそこに『笑う子犬亭』の店員のおかみさんが現れますね」


「おまたせしましたお客さん、どうぞこちらへ……一体どうしました?」


GM:「おかみさんはちょっと訝し気に君たちを見つめたあと、テーブルまで案内する」


PL1:「では教授はしれっとテーブルについて、おかみさんにアルカス神父の事を聞くとしましょう。人となりとか知っておきたいですぞ」


「世話になりますぞおかみさん。そういえば、我々はアルカス神父とここで会う約束をしていたのですが、なにか彼についてご存じありませんかな?」


 最初からこうして普通に話しかければいいものを、どうしてこんなに警戒するのか、これがわからない。


 さて、前もってシナリオとして用意した情報を、ここで出すとするか。


GM:「おかみさんはそういうゴルルコビッチ教授の言葉を聞いて、うさんくさそうな視線を向けてきますね」


「あらまあ、アルカス神父さんに?あんな変人に会いに来るなんて、ずいぶん物好きだこと。あんまり大きな声じゃ言えないけど、あの神父さんは変よ」


PL1:「ほう……教授と神父は手紙のやり取りはしていたのでしたな?神父の印象はどういったものですかな?」


GM:「教授は神父とのやり取りで、とくに妙な所は感じませんでしたね。ただ人狼に対して非常に研究熱心なのは感じていました。ある種、偏執的なまでの熱心さです」


PL1:「ほう、ほうほうほう」


PL2:「なにか妙な感じだな」


PL3:「ええ、いまのうちに神父のいる教会を爆撃して爆殺しましょう!」


GM:「彼は特にまだ何もしていません。爆撃は止めましょう」


 ええい!判断が速すぎるわ!!


GM:「まあ進めましょう。えっと、村の人からすると、アルカス神父は教会にこもりきりで、特に夜に村でみかけることはなかったそうです」


GM:「そして最近は昼にも姿を現さなくなったと、教会にこもりきりのようです」


PL1:「ふむ、これは嫌な予感がしますな。逆パターンかもしれませんぞ?」


PL3:「逆って、何が逆パターンですの?」


PL2:「つまり、アルカス神父が人狼か、村全体が人狼のパターンだな」


PL3:「なるほどですわ!!財閥の機動部隊を出動させて、この村を焼き払いましょう!!」


GM:「それをするなら、まず証拠を集めてください。でなければただの虐殺です」


PL3:「そうでしたわ……焦土にするにはまず証拠を集めないと」


PL1&2「だな!!」


 だなじゃねーよ!!おめーらはここに民俗学の調査に来たの!!!

 軍事作戦でも犯罪捜査の為でもねーよ!!


 ああ、いい加減頭が痛くなってきた。

 少し無理やりにでも、展開を進めるとするか……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る