第0話「空手部ダイキと巫女ヨネ」【神のクトゥルフ編】
行方不明【神のクトゥルフ編】
エピソード0「空手部ダイキと巫女ヨネ」
高校生のダイキは好きな子が居た
しかし入学後すぐに失踪した
捜索届けは出た
しかし、森中探しても見つからなかった
「わるう男に誘拐されたんじゃろ」
「神隠しや」
と学校では噂がたえない
ダイキは空手部だ
しかし最近はその子が暴漢におそわれたと思うと
雑念で練習に打ち込めなかった
だから探しにいくことにした
森のなかへ
「ヨネさーん、おるかー!おーい!おるなら返事してくれー!」
辺りは暗くなり
「よねさっ!あ」
滑りおちた
どしゃあ
ヨネ「ダイキくん、私、近いうちに奉納やるんだ、練習後でいいから、公民館に寄って、巫女の衣装見てくれへん?」
ダイキ「ああ、えっと、見るだけか?ヨネさん、他に手伝うことないんか?」
ヨネ「ううん、見てくれるだけですごく頑張れる気ぃしたんよ、やけどもうええ…」
ダイキ「いや!見る!あとで着物姿ぜったい見るけえ!わしにできることあったら、なんでも言え、祭り楽しみにしとるから」
ヨネ「うん、うん!じゃあまたあとで!」
ダイキ「おう!」
ザーーーーー
ダイキ「え?稽古に来てない?」
ダイキ「あいつ着物見てくれって言うてたのに、どこいったんや?」
ダイキ「母さんなんね?」
「長山さんとこの、ヨネちゃん、失踪したって、ダイキあの子と仲ええやろ、なんかしらんか?」
先週、長山ヨネさんが失踪したとの情報が
長山ヨネさんはしばらくはお休みです
現在、行方不明の長山ヨネさん、ご家族が探しております、もし見かけたら公民館、警察へ連絡を
「…はあ…はあ」
「はは…生きとるわけねえか、やっぱりわるうやつにやられたんじゃ…ころされ…」
辺りを見回すとなにか土砂がえぐれている
「なんじゃあ?ここだけ木ぃ生えちょらんがか?」
ゴウンゴウンゴウンゴウン
「なんやあれ…山火事で木が溶けたんか?」
なにか不気味な、ものだ
「なかになにかおるんか?」
「◼️◼️◼️◼️」
中には機械のようなもの、ケーブルがある
なにか乗り物の残骸だと気がついたときには
もう手遅れだった
「あ、ああ…ヨネさん…そんな…」
なにか、体を切り開かれた痕跡がある
触手のようなものが、なにかの器に蠢いている
ここから立ち去らねば
~♪
現在行方不明の長山ヨネさん
学校の制服姿で下校中にいなくなったとの通報、長い髪、白い靴下、学校指定の革靴が特徴の…
以上。町内放送でした。
~♪
「うあああああ!うあああああ!」
ベリベリベリべりべりべり!
急いで逃げるんだ
それはわかってる
長山ヨネだった皮を手術台のようなものから切り離して、空手用具を入れるエナメルバッグに突っ込んだ
おそらく死んではない、しかし、生きていたとしても、どうにもならない
それはわかっている
ただ、彼女の姿を見て逃げてしまってはならないのだ
暴漢に襲われて弱々しい姿になっていたとしても
あるいは、熊に食い殺されてぐちゃぐちゃの死体だとしても
その肉塊を弄ばれたとしてもだ
ヨネ「ダイキくん、ほら約束の着物姿、見に来てくれてありがとうダイキくん」
学校ではひとときも忘れたことはない
それが、一番最悪の形になっただけだ
ダイキ「ああああ…」
ヨネ「ダイキくん、ほら約束の着物姿、見に来てくれてありがとうダイキくん」
ダイキ「ウッ…オエッ…」
バッグのなかに
はいったそれは見るも無惨なものだ
ダイキ「死刑じゃ…やったやつはどうせ死刑じゃ…悪いやつは殺しちゃるからな、安心せえヨネさん、むっちゃいたかったよな、くるしゅうかったよな」
「◼️◼️◼️◼️」
おそらくは後ろにいるのだろう、その処刑するべきなにかが
わかっている、手術台で叫んでいたとき、それはいた
居たんだ、だが逃げた、見て見ぬふりをした
しかし、それは、愛しいヨネさんを、見捨てること
もしも、隣にいたら
一緒に下校していたなら
ダイキ「暴漢でも熊でも、守っちゃるからな、そこで待っちょれ…」
息を落ち着かせた
自分はもう平気だ
そう言い聞かせるように
深呼吸をして気を集中して振り返った
ダイキ「来いや!化け物ォ!」
ヨネ「わあ!」
ダイキ「…え、ヨネさん」
ヨネ「はは、しんぞうとまるかと思った~、もう大きな声ださんといてよ~」
ダイキ「生きてる…ヨネさんが生きてる…」
ヨネさんと、明日学校に行くんだ
そうだ、そうなる
でも、バッグの中身はなんだったんだ
あれ?
なんか忘れてるような?
ヨネ「どうしたの不安な顔して?」
ダイキ「いや、本当に」
本当にヨネさんなんか?
そう思っただけだ
言葉にしたらいけない
言霊は言ったことをそのままうつすんだ
天の神様仏様に聞かれたらいけない
もしも本当のことが本当になったらどうするんだダイキ
黙っておこう、そして鍵をかけよう
今はそうするべきだ、そうしてその言ってはならない言葉ごと
記憶を奥へ奥へしまいこんだ
ダイキ「本当に心配したんだからな!こんなこともう二度とするなよ?わかったな?」
ヨネ「うん、心配してくれて、ありがとうダイキくん」
このあと、二人はいつも通りに学校生活を送り、神社の神職を継いだ
家に帰ったあとは、ここで起きたことは、二度と思い出すことも、話すこともない、おそらくは神様が生き返らせてくれたんだ
その思いを込めて、ひたすら南無阿弥陀仏を唱えるんだ
「神様、ヨネを生き返らせてくれてありがとう」
「あなたなにかいった?」
「いいや…なにも…」
「ャー!オギャー!」
「あらあら、おなかすいちゃったの~ごめんね~、ほらお弁当、今日もお仕事頑張ってね」
幸せな日々だ
これ以上なにを神様にお願いすることがあろうか
「ああ、いってくる」
たとえあのときのヨネさんは、もう既に死んでいたとしても
ずっと、そのままの君で居てくれたなら
忘れるふりをするくらい何てことはない些細なことだ
キィ…
それはダイキを眺めている
ダイキ「そろそろツキタに話すべきか」
キィ…と神社の観音開きの仏壇を開くダイキ
ダイキ「いや、まだ話さんでええか?」
「…」
ダイキ「おうわかった、兄も妹も元気でやってるよ、ちょっと失礼」
「…」
ダイキ「よし綺麗になった!今日もべっぴんさんやな~」
「…」
暗闇の中に見つめる先には白骨化した巫女装束の女性の遺体が、色褪せた彼岸花の中に綺麗に保存されていた、恐ろしく変形した骸骨が白と赤のコントラストで美しく飾られた着物と仏花で彩られている、神秘的で異様な光景だ
ダイキ「話は以上、じゃあまたなヨネさん」
ダイキは神社の奥にある開かずの扉をゆっくりと閉じて、ガチャンっと重く錆びた南京錠の鍵をかけた
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