第12話「長山一家と吉井一家②」【蛇のクトゥルフ編】
小春日和【蛇のクトゥルフ編】
エピソード12「長山一家と吉井一家の小蛇日和②」
ヨウタ「もうすぐで開きますから…待っててください!」
マキコ「ヨウタくん、私はね、カズヒロ先生のお嫁さんだったの」
ヨウタ「え?」
マキコ「急に変な話してごめんね、でもなんだかこれが最後な気がするの」
ヨウタ「いえ、ぜんぜんかまいません、天使のこと聞かせてください」
マキコ「うん、天使ちゃんはね、わたしをパパに引き合わせたくて、ハルコちゃんのお父さんやツキタくんたちを私のもとにつれてきてくれたと思うのね、ママさみしがりやだから」
ヨウタ「でも天使は…カズヒロ先生のお子さんなんですよね?この写真拾ったんですが…えと明かりが…」
手持ちのゲーム機で写真を照らすヨウタ
パチッ
マキコ「あら懐かしい、そうそう妊娠してた時のわたしね、夫もまだ若いわね、ふふっ、照れてる」
ヨウタ「僕には…その言いづらいのですが、マキコさんが化け物に見えるんです」
マキコ「…あなたもそう見えるのね」
ヨウタ「ごめんなさい、なぜかハルコに傷を負わされてから変なのが見えるんです」
マキコ「ヨウタくんは正直なのね、謝らなくていいわ、変なの…そう、変なものにちがいないわ、わたしのせいでみんなバラバラになったの」
ヨウタ「バラバラに?」
マキコ「私たちは結婚したのは10年前、幸せだったし、すぐ子宝に恵まれた、けれど長くは続かなかった、父は蛇に噛まれたあと、私をみて化け物だと言ったの、クトゥルフにケガを負わされると、異形の姿が見えるようになる…ヨウタくんとハルコちゃんと同じね」
ヨウタ「つまり、その蛇がクトゥルフだったと?それでどうなったんですか?」
マキコ「お父さんはね、私と生まれたばかりの天使ちゃんが化け物に食べられたと勘違いして、ゴルフクラブで叩かれたの、私は必死で泣き叫んでも、彼に声は届かなかった」
ヨウタ「そんな!どうして…」
マキコ「気に病むことはないわ、姿をかくして先生と結婚したわたしの罰よ、彼は警察を呼ぼうとした、その隙に私は天使ちゃんを連れて、森にある宇宙船に隠したの」
ヨウタ「宇宙船…」
場面転換
天使「なんで?なんで私の親にならないの?」
ズズ…と脳から電波を飛ばして認識改変能力を使う天使
バチッ
天使「いだっ!」
バチッ!と天使の周りでなにか弾けた
カーチャ「なりませんよ、電気はあなたの電波を通しませんからね」
ビリビリと髪が浮き立つカーチャ
天使「お父さん助けて!」
岸田「天使、今いく…ぞ?」
ぐにゃあ…と体が曲がる岸田、歩行すらできてない
岸田「傷が再生してない?いや足はどこにある?腕もやられたのか?」
大神(ツキ)「さっきからずっと噛み続けてるけど、おじさんは知らないみたいだね」
ガクッと倒れる
岸田「噛む?毒か?なんだ…からだがない?」
大神(ツキ)「痛覚をぜんぶ噛みちぎった、ほら、全身の感覚がないでしょ?」
むぎゅ
岸田「カズ、天使を助けろ…あぅ…」
大神(ツキ)「仕返しタイム開始」
むぎゅむぎゅ
大神(ツキ)「わんつーわんつー」
岸田「あぅ…あぅ…」
岸田の顔を小さな裸足でゲシゲシと踏みつける、まるでぶどう酒を作る田舎娘のようだ、可愛い尻尾のはえた狼少女にむぎゅむぎゅと足蹴にされる、別の意味ではご褒美かもしれない
カズヒロ「校長はなにをやってるんだ?長門さん、君は場違いだから家に帰りなさい」
ジュウ…
長門「私は人間だから手を出せないですよね、さっさと二人から離れてください」
長門は制服を手にぐるぐると巻きつけているが、だんだん溶けている
カズヒロ「やめなさい、指先ひとつでも触れたら、腕を切り落とすことになる」
長門「その二人を放すのが先です」
カズヒロ「宇宙人に人権はないですよ」
長門「先生も宇宙人です」
カズヒロ「屁理屈はやめなさい」
長門「パー子ちゃんとアヅマさんが痛がってるのがわからないんですか?もしそれがわからない人なら、先生こそ宇宙人さんですよ!」
カズヒロ「…」
スッと両手をあげたカズヒロ
パー子「おえええっ!かはげほ!アヅ…マ!」
アヅマ「…」
抱きかかえるが返事がない
カズヒロ「もう死んでるかもですね」
長門「!」
パチンとカズヒロの頬を叩いた、長門は泣いている
ボロッとカズヒロの頬から蛇の鱗が落ちている、彼はもうニンゲンではないのだ
カズヒロ「こらこら、手を出すと溶けますよ?」
長門「とってもかわいそうな人、あなたは心も脱け殻なんですね」
ツキタ「長門さん!手を見せて!」
長門「いたっ!」
指先からジュウウウ…と肉が腐り始めていた、こうなると取り返しがつかない
パー子「馬鹿もの!こっちの問題に首を突っ込むでない!」
ツキタ「早く腕を切り落とさないと…」
長門「えへへ、私も猿のクトゥルフになれば問題ないよ」
アヅマ「長門ちゃん…私の腕を早く!」
金之助「これはちょっと予想外の展開にゃ~!もうそろそろ引き寄せを…」
場面転換
ハルコ「もう怒った許せない!」
ツキタ「待てハルコ!」
ダイキ「ぜぇ…ぜぇ…こんなことになるなら、くそ!反重力拳!」
カーチャ「ツキタのお父さん!?待ってください!まだこの子は!」
天使「…!」
ドバッ…と血を吐き出すカズヒロ
カズヒロ「がはっ…げほっ…」
ダイキ「この大バカ野郎が」
カズヒロ先生は突きによって腹をえぐられている、こうなると同士討ちだ、ダイキの腕は毒で骨が露出している
ジュウウウ…!
ダイキ「これでおあいこだ、ふんっ!」
ズンッ!とダイキは太い腕を切り落とした
天使「お父さん…がっ!」
ハルコ「ヨウタくんを元に戻せ!お母さんを返せ!」
天使「いだい!いだいよ!パパ!ママ!」
ハルコは天使の羽に掴みかかり、ボコボコと殴りあいが始まっていた、いや殴りあいとはいえない、倒れた天使を殴り続ける、これはただの暴力だ
ツキタ「やめろ!ハルコ!」
ぐいっと引き寄せる
ハルコ「まだ終わってない!」
岸田「カズもやられたか…もう終わりだな」
パー子「おお!傷が治ったか!しかし傷を食べるとは一体どういう原理なのじゃ…?」
大神(ライト)「ワォン!」
長門「ありがとうツキちゃんとアヅマちゃん!パー子さん、ハルコちゃんを止めないと!」
パー子「おうわかった!アヅマ腕はいらん、そこらへんに捨てい」
アヅマ「えっ、えっ、うえええ!?腕は!わたしの腕はぁ!?」
パー子「いや、ちょうどあそこに腕のないおっさんがおるのー」
アヅマ「あっ!?ツキタさんのお父さんも重傷ですよ!これあげます!」
ダイキ「いや俺はいい、これは当然の報いだ、ハルコを止めないと…ごめんな、腕はいらない…かな…」
アヅマ「あの!大丈夫でっ…ぐえっ!」
ダイキはバタリとアヅマのほうに倒れた、体力の限界だろう、ダイキに押し倒されたアヅマは巨躯の下敷きにされて、腕はころんと転がった…
アヅマ「わたしのうでぇ…」
一方神社の中で
金之助「もう長門さんを助けて口説く流れを完全に見失ったにゃ…まあ、あとは雨降って地固まるかにゃ…んにゃ!?いつのまに箱が!」
ハルコ「なんでとめるの!」
ツキタ「ハルコ!あの天使の子も悪気はなかったんだ、あとで話を聞いてあげよう、長門さんも傷が治った、父さんも救急車を呼ばないと…」
マキコ「ハルコちゃんやめなさい」
天使「お母さん!」
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます