第15話「長山コハルと藤本タツキ」【神のクトゥルフ編】
小春日和【神のクトゥルフ編】
エピソード15「長山コハルと藤本タツキの千年結界」
小春日和のおわり
金之助「元の世界でそういやデート中だって思い出したからよ、とりあえず、じゃあな」
ハルコ「うん、バイバイお兄ちゃん、頑張ってね」✌️
金之助「おう」👍
ツキタ「あのハルコ?さっきからお兄ちゃんってなんだ?」
ハルコ「あ、そうそう、言ってなかったっけ?私ねー、実は4匹の猫のうち、一番末っ子なのー」
ツキタ「4匹の猫?さっきの虎柄男だけじゃないのか?」
ハルコ「うん、長男がさっきの虎猫ニカホでしょ、次女が貝猫アコヤで、三女が兎猫ナユタ…そして最後がわたし」
ツキタ「え?ハルコは、鬼のクトゥルフじゃなかったのか?」
ハルコ「そんなこと言ってたっけ?もうわかんないや」
ツキタ「ちょっといいか?」
ベレー帽を取る
ハルコ「みゃぁオ…」
ツキタ「やっぱ鬼じゃんか」
ハルコ「なんちゃってー、ナユタ姉ちゃんの真似でしたー」
ツキタ「あのなぁ…からかうのもいい加減に…お父さんもお母さんもどっきりだろ?なあハルコ?」
ハルコ「そうだったらよかったんだけどね」
チリンチリン
ツキタ「お前それ…」
ハルコ「あのね、私は本当は、化け猫なの、人を化かす猫、こうすると猫騙しできる」✋
ツキタ「鬼の角…は、猫の耳…だった?」
ハルコ「はい種明かし終了ー!」✊
ツキタ「そうか…妹はあのとき…」
ハルコ「じゃあ最後になに食べよっか?」
ツキタ「好きな食べ物…メグミルク…」
ハルコ「うん、歌ってたね、あの日」
ツキタ「それで妹が、お兄ちゃんうるさいからって、散歩に出掛けて」
ハルコ「そしたら4匹の猫のリールが絡まって」
ツキタ「猫が死んだ?」
ハルコ「うん、だから運転手を消したの、神隠しして、地球は半分消えて世界中が大騒ぎ、うふふ!」
ツキタ「お父さんはハルコの能力を危ないと思ってて、お母さんはそれでも信じてた、でも怒ったんだ、あの日、そしたらハルコが消えて…」
ハルコ「お兄ちゃんは漫画家になって、世界中にマンガを呪符にしてばらまいた、そして半分になった地球の裏側で千年間ずっと妹の4匹の猫をパラレルワールドで探したの、妹に謝りたかったからねー」
ツキタ「やめてくれよ、笑うなよ、笑い事じゃない」
ハルコ「向き合わないと、帰れないよ?」
ツキタ「本当は地球は4つにわかれてたんだ、4匹の猫のうち、ハルコと虎猫ニカホは四分の二、貝猫アコヤと兎猫ナユタはもう半分の地球の四分の二…だとしても、お前は妹だから、本当は猫は3匹だろ?」
ハルコ「うーんだいたい合ってるけどね、不正解かなー、お兄ちゃん、じゃあハルコは鬼猫ハルコだから?本当の妹はどうなったのってこと」
ツキタ「思い出したくない」
ハルコ「千年で結界は終わる、もう繰り返せないよ」
ツキタ「妹は散歩に出掛けて、虎猫ニカホと貝猫アコヤと兎猫ナユタも連れていった、鬼猫ハルコはそのうちの一匹で、ハルコは妹じゃない、妹に化けた化け猫だ」
ハルコ「正解、じゃあ、私もこれでさよならだね、最後にお兄ちゃん、これだけは忘れないで」
ツキタ「ハルコ!待ってくれ!あともう一回だけ!」
ハルコ「ううん聞いて、あなたの名前は――」
虎猫ニカホ「楽しい千年結界はもう終わったみたいだにゃ~」
貝猫アコヤ「お姉ちゃんたちとまた会えたらいいな」
兎猫ナユタ「阿鼻叫喚!無間地獄!輪廻転生!爆殺!」
鬼猫ハルコ「ハッピーエンドになるように祈ってるよ、お兄ちゃん」
家族会議のおわり
「歌います、好きな食べ物」
じゃんじゃんと鳴るギターに癖になる歌
そうだ、実家のような安心感
書きかけのネームに嫌気がさして
ノートに書き殴ったバカみたいな歌詞の羅列
歌い終えたらふと現実に返るんだ
早く新都社の林さんに次のネームを出さないと
スマホをポケットにしまいこんでトイレに行こう
「「トイレに行くか…」」
あれ?この台詞聞いたことがあるよな?
書きかけのネーム「長山君が銃弾止めた!」はかなりいいやつだ、早くだそう
あれ?俺の名前って「藤本タツキ」?
そうだよな、ボケてんのか、そうだった
タツキ「じゃあトイレ行くか」
そして部屋の扉を開けたんだ、何年間も何十年間も何百年間もそして千年間
ずっとこうして繰り返してきた、まったく同じ日常を、またきっと繰り返すんだ
このバカみたいなマンガ家ニート生活を
タツキ「あれ?お父さん?お母さん?」
藤本父「タツキは将来ニートになるから、ずっと養わなければならない、でも親が死んだら誰が面倒を見る?そろそろハローワークに行かせないと手遅れになる」
藤本母「うーん、だけどマンガを頑張ってるし、もう少し様子をみましょう、妹がちゃんと働いてくれたらそれだけでも幸せと思うし、二人で助け合って…」
藤本父「お母さんはタツキをあまやかしすぎだ!誰が妹に養われる兄がいるんだ!」
藤本母「ちょっと声を小さくお父さん、タツキに聞こえたらきっと漫画家になる目標のプレッシャーになるから…それにちゃんと毎月はちゃんと提出してるそうだし、編集者の人だって…」
藤本父「コハルが嫁にいくときに、無職の兄が結婚式に出るなんて、耐えられん…それこそ藤本家の恥だ…」
タツキ「そっとじだな…」
藤本母「まだ漫画家になれないときまったわけじゃない、…もう一年だけ見守りましょう?お願いよ、お父さん…家族が応援しなきゃ誰があの子を助けるの?」
藤本父「お、おい泣くなよ、わかった、わかった!あと一年だ、甘やかすのもこれっきりだからな…」
タツキ「母さん父さんも心配してくれてる…絶対漫画家にならないと…そうだ妹…、あいつまたハルコに鈴をつけ忘れてる、仕方ないな…」
ザーーーーー…
鬼猫ハルコ「みゃぁ…」
タツキ「コハル?」
チリンチリン
血だらけの道路で
タツキは猫をかきわけて
妹にそっと近づいた
タツキ「血が…」
コハル「兄ちゃん、猫、みんな生きてる…?」
タツキ「ああ生きてる、今救急車を呼ぶから待ってろ!」
コハル「わたしね、ちゃんと4匹の猫、助けたよ…?」
タツキ「そうかえらいな、今電話するから、待ってろ!絶対死ぬなよ!いいな!コハル!コハル!―――」
そのあと妹は亡くなった
漫画家になろうと必死に努力した
そして僕は漫画家になった
世界中にどれだけマンガをばらまいても
妹には届かない
スマホに作ったペンネーム
ながやまこはるの架空の妹がバレた
2022年11月11日
世界中に大ヒット漫画のチェンソーマンが公演される
僕は漫画家になったら
やりたかったことがある
映画のような作品をつくること
そして
この世に妹がいたことを証明するために
そうだ、もう一度だけ会うために、架空の妹に会うために
タツキ「待ってろ、今いくからなコハル」
千年結界のおわり
虎猫ニカホ「また俺らを捨てに来たのかにゃ?」
貝猫アコヤ「仕方ないよ、私たちはどのみち寿命だった」
兎猫ナユタ「衰弱死!安楽死!灼熱地獄!爆殺!」
鬼猫ハルコ「また来たの、こりないね~?」
タツキ「みんなとまた暮らしたい」
虎猫ニカホ「できない、千年の約束は終わったにゃ」
鬼猫ハルコ「私たち兄妹は、散歩したときにじゃれてたから、コハルちゃんが亡くなったことは悪かったって思うし、謝る、ごめん!けど千年以上のパラレルワールドは、さすがに私たちの身が持たないの」
タツキ「違う、お前らでいいんだ、一応化け猫だろ?人にだってなれるし…」
ザーーーー…
■■■「私が死んでも、猫のこと嫌いにならないでね」
虎猫ニカホ「もう二度と妹に会うことはできない、それでもいいのかにゃ?」
タツキ「それでもいい」
貝猫アコヤ「約束してほしい、私たちを捨てないって」
タツキ「わかった、する」
兎猫ナユタ「銃殺!絞首!心臓麻痺!死刑!」
タツキ「こんなダメなお兄ちゃんで、ごめんな」
鬼猫ハルコ「私たちなんかで後悔しない?」
タツキ「しない、あいつの助けた猫だから」
■■■「後は頼んだよ、お兄ちゃん――」
タツキ「妹が助けたお前らをもう一度拾いなおしたいんだ」
□□□「私たちのお兄ちゃんになってくれる?」
タツキ「うん、なる」
□□□「みゃぁ…」
タツキ「千年結界」
チリンチリン
また一緒に暮らそう、玄関の扉が開く、東京に引っ越しに従兄妹たち4人がくる
長山コハル「みゃぁオ!」
藤本タツキ「おかえり」
…………
おわり
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