第21話 ハウゼン家3
ドノバンは怒りを押し殺すように何度も深呼吸を繰り返し、デイジーは真っ青になりわなわなと震えている。
「お前も子供のころに、この家のギャラリーにある肖像画を見ただろう。二代から三代おきにフィーネのような色合いの子供が生まれるのだ」
「ふん、ハウゼン家に伝わるエルフ伝説か。確かにフィーネは肖像画にある曾祖母にはそっくりですね。でもフィーネには肝心の魔力がないですよ」
ロルフがつまらなそうに鼻を鳴らす。
「お前たちいい加減にしないか! 自分たちが何をやらかしたのかわかっているのか?」
ロルフとミュゲは顔を見合わせる。フィーネの余命を知れば、両親は反対するとは思っていたが、ここまで怒ると思ってはいなかった。
「お父様も、お母様もフィーネを疎んじていたではないですか?」
ミュゲが不思議そうに尋ねる。フィーネは確かにハウゼン家の厄介者だったのだ。
「私たちはそんなつもりはないわ」
デイジーが顔を青ざめさせ、膝の上で手をぎゅっと握りしめる。
「でも、あの子を家から出さなかったでしょ?」
「それはほかの家にいろいろと言われるからだろう。いわば、フィーネを守るためだ」
ミュゲの問いに、ドノバンが苦々しい顔で答える。
社交界では、いまだにフィーネをデイジーの不貞の子と噂する者もいる。いくらドノバンが先祖返りで曾祖母の生き写しだと説明しても、どうにもならなかった。
フィーネの髪を染めようかとも考えたが、瞳の色も顔立ちも家族の誰とも似ていなかったので早々に無駄だとあきらめた。
せっかく器量よしに生まれたのに、家に閉じ込めておくしかなかったのだ。
◇◇◇
ミュゲは最近のハウゼン家に多大なる不満をいだいていた。
とうとう両親に社交を禁止されてしまったのだ。理由はマギーにかかる医療費のせいである。
抑制剤が高いのだ。
「なんで私が家に閉じこもって、マギーの看病なんかしなくてはならないのよ」
そう言いつつもミュゲは自室に閉じこもり、実際にマギーの看病は母とメイドがやっていた。
しかし、ハウゼン家は資金繰りが上手くいかず、母も金を集めようと走り回っている。すべてマギーのせいだ。
「ミュゲ、薬の管理だけはあなたがしてね」
デイジーは外出する前に必ずミュゲに言いおいていく。
「わかったわ」
「抑制剤を飲まないと魔力暴走を起こしてしまうのよ」
「まったくそんなに魔力が有り余っているなら、本当にフィーネにわけてあげればいいのに」
それを聞いたデイジーはため息をつく。
「魔力過多症はそういうものではないのよ。マギーは魔力をためておく器が小さいの。そこからあふれ出てしまうのよ」
「つまり、マギーの魔力量とマギーの魔力をためておく器が一致ないということ? なんでそんなことが起きるの」
「まあ、多分そんなようなことだと思うわ。ミュゲ、原因がわかっていれば、苦労はないわ」
デイジーが疲れたように言う。
ミュゲはこんな陰気臭い家は嫌だと思った。
最近では一緒に遊んでいた長兄ロルフまで、焦ってドノバンの手伝いをしている。
父に帳簿を見せられたその日から、彼は変わってしまった。
一緒に家を抜け出して遊びに行こうと誘ったら、「お前はハウゼン伯爵家の存亡がかかっているときに、何を言っているんだ」と怒られてしまった。
ロルフは、このままでは家は没落して自分が爵位を継げなくなると、かなり焦っている。残念ながら兄には魔導士として身を立てるほどの力はない。
しかし、ミュゲにしてみれば、いい家に嫁げばいいだけなので、彼らの焦りは他人事のようにしか感じられない。
そして、彼女は一計を案じる。
「そうだわ! フィーネに知らせればいいじゃない。前はマギーをかわいがっていたもの。病気の妹を見捨てるわけがないわ!」
家族はなぜ、こんなことも思いつかないのだろうと思った。
変人公爵に気に入られているらしきフィーネに、金を融通してもらえばいいのだ。
さっそくミュゲはマギーの部屋へ向かい。嫌がる妹に無理やり手紙を書かせた。
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