そうここは加藤に語ってもらおう。

「それじゃさ、どんなストーリーなんだ? 加藤が教えてくれよ」

「えぇ〜わたしが?」

「俺が布教しているときみたいに熱く、濃く、壮大に」

 こうやって加藤に語ってもらうことで、少しでも俺の作品に対する意気込みを感じてもらってフラットな加藤に、いいエンゲージメントを与えたい。エンゲージメントには認知的、感情的、身体的の3要素があるのだ。我ながら完璧な作戦だ。

「だから聞こえてるよぉ」

「…………うむ……」

「もう少しで読み終わるから貸してあげてもいいけど、それじゃダメかな」

「そう言わずたのむ。俺、話す方はよくやるけど聞く方ってあまりないんだ」

「安芸くんならそうなるよね。話しても聞いてくれないまでありそうだよ」

 口を尖らせてまるで見てきたようにいう加藤。全くもってその通り。人の嗜好は十人十色。俺が切ったタイトルでも誰かが絶賛していたりする。捨てる神あれば拾う神ありだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る