第11話

「さぁ船をあの浅瀬まで持っていくぞ。頼むぞメモン」

いつものように二人で空を飛びながら言う。

目的地は船の墓場だ。二人が金品を拝借したあの場所だ。

「さ、ついたわよ」

バサバサと音を立てて二人が降り立つ。

そこでドレッドは頭の中で目ぼしい座礁している沈没船に向かい念じる。

沈没船はゴゴゴゴと音を出しながら動き出す。

そのまま海の上を走らせ波を掻き分けながら進む。念じてスキルを止めるとそのまま沈んでしまうのでドレッドは休む暇がない。

ドレッドには結構な負担となっていた。

ヤードの街の浅瀬に着く頃には夕方になっており同時にドレッドはへとへとになっていた。

途中でメモンが行き先を示したりして助けなければもっと遅くなっていただろう。

船を浅瀬に置いて、ベッセラーに伝えにいく。

「おお!もう船をセットしたのか!」

ベッセラーは驚きながら船を見る。

「船の解体業は、船を浅瀬に置く業者と、それを解体する業者に別れるんだ。今回お前らは船を浅瀬に置く作業をしてもらったわけだ。その分の報酬もこの段階で解体業ギルドが支払うのが通常なんだ。良かったな」

ベッセラーは報酬を解体業ギルドに支払わせるために話をつけにいくと言い去っていった。

「いやお前らもついてくるんだよ。俺が悪さしてお金を抜くかもしれないぞおい」

ドレッドとメモンも付いて行った。



「フゥン……このサイズと残ってる割合からすると……80万ディルヘイムくらいかな」

解体業ギルドの偉そうな職員は船ではなくドレッドとメモンを見ていった。

コンコン、とベッセラーが職員のわきを突く。

「……100万ディルヘイムだ。チッ。ベッセラーに感謝しとけよお前ら」

職員は丈夫そうな箱から金銭を取り出して近くにいたドレッドに渡した。

メモンがいち、に、さん、と数える。

「……あれー90万しかないように見えるんだけど」

メモンがふんわりとあやまちを指摘する。

「おっとおっと、しまった。渡し損ねたようだなハハハ」

その職員は残りの金を再び渡す。

今度は合わせてしっかり100万ディルヘイムだ。

実はドレッドは疲れと金額の多さから少し戸惑っているゆえに無言だった。

メモンがいなければ90万だっただろう。

「ありがとう……メモン」

「?いーよー。それよりベッセラーさんにもお礼言っとかないとね。ありがとうね」

「そ、そうだなベッセラーさん、ありがとう。助かったよ」

ベッセラーに礼をしてその後別れた。



「メモン、金稼ぎがあっさり終わってしまったな。このままもっと続けてやるべきか?」

「うーん今はやめといた方がいいんじゃないかな」

「どうしてだ?」

ドレッドは疲労のため思考をメモンに任せた。

「いきなり大量に船を置いて行っても作業場が狭くなって迷惑でしょう。それに他の同業者の仕事をあまりにも奪いすぎるわ」

「なるほどな」


「メモン、そういや金品の拝借はだめで船の解体はいいのか?」

「なんというか……自分だけが得するのと、後々みんなが得する違いなのかな。船は解体されて木材になるからみんなのためになるの。その過程でお金が得られれば問題ないのよ」

「なるほどなぁ。そうだ、金手に入ったしその分返しに行こうか」

「うん!そうだね。じゃ、背中乗ってほら」

二人は移動して船の墓場へ。

「あった、なつかしいな。この船」

少し船たちから離れた場所に座礁している船に乗り込み、船長室の小さな箱を再び開ける。

「さ、メモン」

二人はそれぞれその価値の半分ずつの紙幣や硬貨を入れる。

「ありがとうドレッド。覚えていてくれて」

「礼を言われるほどじゃないさ。さてと、一仕事終わったら腹が減ったな。昨日食べたあの料理、また食べたくなってきたよ。街に食べに行かないか?」

「ええ、もちろんいいわよ。私も食べたくなったわ」



「……ああ、やはり美味い。食べれて良かった」

「……ええそうね。しみじみと感じる美味しさがあるわ」

「さてと……満腹になったしこれからのことも決めないとな」

「何か決めてるの?」

「おおまかにまけどな。この世界を旅したい。この世界のことをもっと知りたい。俺はこの世界のこと全然知らないからな」

「私は迫害が収まるまで故郷に帰らないつもりだし、その旅にこのまま着いて行こうかな〜」

「じゃあ次どこに向かおうかな」

ドレッドは地図を広げる

「クレーブの街よりもっと南に行ってみようか」

「ま、私たちは世界の北にいるから南に行けばだいたい知らない世界だよね」

「クレーブの街付近の少し南には赤道の大きな樹海があって人が住んでないそうだ。そこよりもっと南。赤道より南に行くからここくらい寒くなるかもな」

「クレーブの街は過ごしやすい暖かさだったよね。気候は良かったね気候だけは」

「ん?お前ら南に行くのか?」

声をかけてきたのはベッセラーだ。

「もし行き先が同じなら一緒に行ってもいいかい?」

「ああ、もちろんだ。断る理由なんかないさ」

「私もいいよー」

「良かった。俺は南の造船大国2つを見に行きたいんだ。船舶設計士のはしくれとしてね」

「じゃ、それを俺たちの目的地にしよう。メモン、いいよな?」

「ええ、大丈夫よ」

「いいのか?なんだか悪いね」

ベッセラーは頭をかきながら言う。

ドレッドは席を立ちながら話す。

「よし、じゃあ早速出発しようか」

メモンも席を立つ。

「はーい」

ベッセラーは少し得意げに。

「移動手段はもちろん」

そこで一旦区切るベッセラー。

「船だな!」

笑顔のベッセラーが二人の方を振り返る。

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