第12話
「君たちは船について知識は?」
ベッセラーが少し早口で問いかける。
「「ないよ」」
「よし、じゃあ俺が乗る船を選ぼう。選ぶと言っても人を運ぶ客船を選ぶだけだがな。俺もあんまり知識はないができるだけやってみよう。まずは街を移動しないとな」
3人は港町ガタヤへと移動することに決めた。
「ここからガタヤの港へは……鉄道と少しの歩きでいけるか」
「あ、俺鉄道乗ったとこないぜ。たのしみだ」
「あら、よかったねぇドレッド、乗れる時が来て」
「なんだドレッド、鉄道乗ったことないのか。一度乗ってみろ、いい経験になるさ」
「ここが鉄道の駅だ。ここから鉄道に乗れる」
「へぇ〜、横に長いんだな」
「さ、まずは切符を買わないと行けないのと、メモン君、だったな?」
「そうよ、どうしたの?」
「メモン君は鉄道にのるのはやめた方がいいかも知れない。鉄道を利用するのは都市部の人間が比較的多いからな、その分獣人への差別も少しあるかも知れないんだ」
「そうなんだー……なら、私は飛んでいくことにするよ。鉄道を空から追うね」
「メモン、見失うなよ、じゃあな」
ドレッドは新しいことにワクワクしながらもメモンへの配慮をする。
メモンはドレッドに手を振りながら飛び立った。
ドレッドは手を振り返した。ベッセラーは手を振らなかった。
「駅は鉄道に沿うように作られてるんだな」
「そうしないと鉄道に乗れないからね」
「なるほどな。言われてみればそうだ」
駅は木造で新しい感じがし、きちんと清掃が行き届いていた。
「ここで最初に切符を買って……」
「ふむふむ」
ドレッドとベッセラーは切符を買う。
「あっちの改札で切符を一旦渡すんだ。鉄道の列車に乗るために切符は必要だからね」
「なるほど」
駅員に切符を渡すとカチンと切符に穴が開けられる。
ドレッドはこれでいいのかとベッセラーを見る。
「ああ、それで良いんだ。問題ないよ」
改札を二人が通り、その後すぐ列車がやってきた。
蒸気をもくもくと上げながら列車が駅へと近づき、列車の姿が大きくなるにつれてドレッドの期待も大きくなる。
ドレッドには初めての光景だった。
「すげぇ……」
「ははは、誰だって最初はそうなるさ」
列車は駅に止まり人はぞろぞろと乗り込んでいく。
遅れないようにドレッドも乗り込もうとするが……
「お、おいドレッド、靴は脱がなくていいんだぞ」
「あ……そうか」
ドレッドは靴を脱いで乗ろうとしてしまった。
あわてて靴を履き直し列車に乗り込む。
空いている列車内の座席に座る二人。
「どうだい、初めての鉄道の気分は?」
「感動した……こんな鉄の塊が速く動くなんて……」
言っている途中で列車は動き出し、蒸気はその位置を変える。
ドレッドは高速で移動することならメモンの背中で体験したが、大地を人間の科学技術で高速で移動することは初めてであり、感動するには十分だった。
ドレッドは目まぐるしく動く列車の窓の景色をずっと見ていた。
ベッセラーはそんなドレッドを見ていた。
初心者が感情を動かされるのをしたり顔で見るのは経験者の特権だった。
鉄道に揺られて数十分。島の中央部にある都市部の端を経由して西の港町ガタヤに到着した。
鉄道を降りて改札を抜けるとすぐメモンが降りてきた。
「初めての鉄道はどうだった?ドレッド」
「結構揺れた。ちょっとふらふらするよ」
「ふふふ」
「おいおい、大丈夫か?」
「大丈夫だ、心配しないでくれ」
そこから少し歩き海の方へ。そうすると港へと着く。
港にはたくさんの大小様々な船が繋がれている。
だが、旅客船は少なく、ぱっと見で数隻しかないように見える。ほとんどが漁船であった。
「ベッセラーさん、あの船の側面に丸い水車がついてるのはなんでなんだ?」
「ああ、あれは外輪船って言ってね、あの外輪が回って推力を得るんだ。船の後ろ側を見てごらん、他の船と比べて広いだろう。外輪船は船尾に広いスペースを確保できるんだ。それも特徴だね」
「へぇ。そうなのか。ありがとう」
「あの外輪船も旅客船らしく乗客を集めてるが……外輪船は効率が悪いから値段もその分高いだろうからやめとこう」
「え?じゃあ外輪船の利点って船尾のスペース大きくできるだけ?なんか非効率的だな」
「いや、まだあるぞ。喫水が浅くできるから川とかにも入っていけるんだ。川に入れる大型旅客船も需要があるさ」
「またまた勉強になったよ」
「……人間はよく考えるもんだねぇ」
ドレッドとメモンは知らないことばかりで新しい知識を得ることになった。
ベッセラーは数人の船乗りと話をした後二人に話しかけた。
「南に行くのは2隻あるが俺の目的地の造船大国2つ、セクザン帝国と大テリブン王国って言うんだが、そこに行くのは一隻のみらしい。決定だな」
「「はーい」」
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