第11話 幕間・鈴木栞、攻めどきを考える

 鈴木栞は、考える。


(どうしよう)


 見られた。

 見られてしまった。


 いろいろと。

 いろいろと!


(たかくんから昔もらった手紙も、は、はははは、裸も!)


 まさか孝巳が、自分の部屋にやってくるとは思わなかった。


 中学3年生の冬を最後に、そう、織芽と付き合いだしたころから、まったく来なくなっていた孝巳が。


(わたしのこと、少しは気にするようにしてくれた? わたしに会いたいと思ってきてくれたんだよね!? ね?)


 嬉しい。

 頑張って、毎日毎朝、自分の存在をアピールしてきたつもりだが、少しは効果があったのかもしれない。


 ただの幼馴染ではなく。

 フラれたころのふたりでもなく。

 新しい関係に進めるかもしれない。


「にへら」


 そう考えると、笑みがこぼれ出る。


「えへへへへ。たかくん、たかくん、たかくん……」


 ゴロゴロゴロゴロ。

 ベッドの上を転がりまわる。


 そして、窓に目をやる。

 カーテンと窓の向こうには、孝巳の部屋がある。


 きっとあそこには、孝巳がいるはずだ。大好きな孝巳が。


(でもたかくん、おりちゃんに手紙を送っちゃったんだよな~)


 本当は、止めるべきだったと思う。


 なんとかして、織芽と復縁させずに。


 自分だけを見つめてくれるように、努力するべきだった。


 けれども。

 できなかった。

 うまく努力できなかった、ということもあるが。


(わたしだって、おりちゃんともう一度、会いたいから)


 恋敵。

 孝巳の彼女。

 けれども、中学時代を、同じ学び舎で過ごした友達。


(おりちゃん。なんでたかくんを未読スルーするの? どうしてわたしたちを既読スルーするの?


 本当に、本当にもうこっちには興味ないの? かのちゃんが言うように、変わっちゃったの? おりちゃん……)


 はるか遠くの星の下。

 福岡にいるはずの友達のことが、気になった。


(……だけど)


 孝巳のことも。

 気になる。


 ちらり。

 また、窓を見つめる。


(たかくん。……たかくんに、もっと好きって伝えなきゃ。わたしをもっと、伝えなきゃ。そのためには、そのためには、もっと、頑張らないと……!)


 それは鈴木栞にとって、動かぬ決意であった。

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