日本民共内戦

三十六計逃げるに如かず

プロローグ

 2063年世界各地では、2大国間の大戦がようやく終わった。世界では大戦が終わったというのに、不景気や物資不足により、混乱が続いていた。その波は日本にも届いており、日本国内に於いての大戦後1年での死者は500万人を超えた。人口は5000万人を切った。そんな中、国内では「アメリカにまだ付き続けるのか、アメリカから独立するのか」という論争が起こった。この話題は国会でも取り上げられたが、意見をまとめられずに終わった。当時の国内はアメリカ側の革新民主党と中国側の日本共産党に分かれていた。


 2064年9月、前高知県知事・小松高雄が左翼の青年・寺田慎二に高知駅にて演説中に暗殺された事件を受けて、同年11月に知事選が開かれた。土佐県民党代表・松崎孝、日本共産党・山本輝喜の2人が立候補した。両者ともに壮絶な争いを繰り広げた結果、山本が当選。その差は僅か35票であった。


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「万歳!万歳!万歳!」


屋敷の中に50人以上の拍手が響き渡った。


「では、これより第128回共産党祝宴会を持ちます。まずは、篠田治信代表からお言葉をいただきましょう。」


50歳後半の中年男性が司会のいた壇上に登り、マイクを手にした。


「あ、あ、聞こえますね。皆さん今回の選挙は我々にとってとても喜ばしい結果でした。我ら共産党から、初めて知事になられた山本くんです。」


紹介された男は嬉しそうな顔をしながら壇上に上がり、篠田からマイクを手渡された。


「えっー、どうも山本です。戦争で崩れたこの世界を変えたいと思っています。また、今回私が当選できたのは党員の皆さんの支えがあったからだと思っていますので。えっー、これからもよろしくお願いします。共産党万歳!」

『万歳!』


山本の演説で酒の入っている党員たちの気持ちは更に上がった。そして、篠田と山本が壇上から降りると、司会が戻ってきた。


「皆さん!今日はとてもビックなゲストをお呼びしております!では、来てもらいましょう!中国共産党中央宣伝部部長・段麗孝氏です!」


皆周りをキョロキョロしながら、拍手をしていた。


「コンニチハ。」


段は片言の日本語で挨拶をした。


「很高兴今天能够参加这个会议。恭喜山本。我希望你继续在日本促进共产主义。」


すると、通訳が遅れて翻訳した。


「今日はこの会に参加できてとても嬉しい。山本にはおめでとうと言いたい。そして、これからも日本に於いての共産主義化を進めていただきたい。」


そのスピーチに感動した党員たちが拍手をし、しばらく止むことはなかった。その日はそれで終わり少しずつ皆、屋敷を後にした。


−2064年11月23日−


 この日、内閣府に衝撃的な内容の文書が送られてきた。それも「高知県独立」という名のものだった。送り主には日本共産党とあった。最初は冗談だと思った第113代内閣総理大臣・木下徹は警察に犯人の捜査依頼を入れるとともに、共産党への確認を行った。警察の捜査もその日中に終わり、捜査によると、それはどうやら本当に共産党から送られてきており、東京にあるはずの本部も消えていた。


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 高知県に於いて独立を宣言した日本共産党は県民の前で「どのような意図があって、こうしたのか」、「これからの方針」を伝えた。


「皆さん、この前の大戦が起こった理由は日本がアメリカに付き続けたことにあります!そこで、私達は日本をアメリカの支配から救いたいという思いで立ち上がりました。皆さんの協力が必要です!私達に力を貸してください!」


この様子を見た革新民主党派の女性が通報したことにより、さらに高知県内の様子が全国に発覚した。これに対して、政府は各県から警察を送り、鎮圧をしようとする動きを見せた。


 12月3日、過激な共産党員が厳戒態勢を取っていた徳島県の警察と激突した。徳島警察は市民等に催涙弾を撃ち込んだことにより、市民17人が負傷。警察側は3人が怪我をした。この事件により、国内では共産党を取り締まるべきだという世論が出てきたと同時に、今回の暴動の首謀者を逮捕するべきという考えが多く出た。ここから、政府と日本共産党の内戦が始まることとなる。

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日本民共内戦 三十六計逃げるに如かず @sannjiyuurotukei

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