第26話 モフ様とお弁当
モフ様に、『ほっ〇もっと』のお弁当を手に持って、大きくなってもらった。ちなみに今回のお弁当のメニューは天丼だ。
「これをもって大きくなればよろしいのですね」
そう言ってモフ様は、両手に『ほっ〇もっと』のお弁当を持って、みるみると大きくなっていった。
「す、すごい」俺とドレンは、お弁当が大きくなったことに感動していると、他のバルクスやその部下たちは「素晴らしいお姿です!さすがはこの酪農地地コロを納める聖霊様だ!」と、モフ様の姿に心を震わせた。
「モフ様、流石です!その手にお持ちの物を、ゆっくりと地上に下ろして下さい!」
皆は俺とドレンが、はしゃいでいる姿をみて不思議そうに見ている。俺とドレンが明らかにモフ様ではなく、モフ様の手に持っている物をみて喜んでいるからだ。
しかし、モフ様が地上におろした物の蓋を開けると、大量の湯気と共に非常に美味しそうな匂いが辺り一面に広がった。
「これってもしかしたらレン様!あの、お弁当ですか!」そう言ってカリンは興奮のあまり、俺にそのまま抱きついて来た。
「そ、そうだ...。カリンはあの弁当がそんなに好きだったのか?」
スレンダーな体付きだが、出るところはしっかりと主張している身体と、髪の毛のいい匂いで食べたくなる対象が、変わってしまいそうになる。
「はい!大変美味しかったです!あの匂いは天丼ですね!また天丼が食べられると思ったら、いてもたってもいられませんでした。レン様。すみませんでした。抱きついてしまって。ご迷惑でしたよね...」
俺の顔を下からまっすぐと見つめて、聞いてきた。
ドキッとする美しさだ。お弁当の感動が薄れる。やばい。カレンの美しさの方に目が行ってしまう。
そんな俺のピンチは身近な相手が救ってくれた。
「ずるいわよカレン!今日の夜2人で、押しかけよう、押し倒そうと約束したじゃない!」
「お姉ちゃん、しー!」
ふー。ナイスお姉ちゃん!ころっとカレンの魅力に引き込まれそうになってしまった。いかんいかん。それと夜はゆっくりと寝かせて下さい。
まだとても忙しくて、手を出そうという気にはなるけど、環境が落ち着かない。皆が腹をすかして待っているもんな。もう少し落ち着いたら、こっちから手を出しに行っちゃうかも。
それよりも弁当だ。うわー!弁当が大きい。今回はワゴン車より一回りぐらいの大きさで止めてもらった。これ以上大きくすると取り分けたり、切り分けたりするのが大変だからだ。
でもこの大きさでも、ごはん一粒ずつの大きさが、ラクビーボールを少し小さくしたぐらいある。
俺の奴隷達は、普通サイズの天丼を一回食べたことがある。大きくなっても味が変わらないか、確認をしてもらうことにした。
また初めて食べるルーメイやエルム、それにバルクス、それにいっさんやモフ様にも味わってもらおう。皆も気に入ってくれるといいのだが。
「なるほどこういう活用法があるとは。これはすごい事ですな。食料問題が、一気にいい方向に向かうかもしれませんな」
エルムがいつになく真剣な表情で、大きな米粒を見て言った。
皆で大きな天丼を味わった。味は...驚いた事に変わらない!大きくなったが、味が薄くなったり、中身がスカスカという事はなかった。
しっかりと天丼の味がご飯にしみこんでいて、噛み応えもある。お米一粒でも結構お腹が膨れる。
「モフ様。すごい能力じゃないですか!モフ様が持てる物なら何でも可能なのですか?」
「はいそうです!」と言ってにこにこしながら天丼を味わっている。両手でお米を持ってカリカリと食べる姿を想像していたが、お箸を右手で持って、綺麗な箸使いを披露している。何だか新鮮だ。
その点、いっさんはお米一粒を身体に巻き込み、消化をしていく。身体全体で美味しさを味わっている様だ。
「食べたことのない味ですね。いやーこっちらの世界の調味料ではないですね。さすがご主人様!非常に味わい深く、素材のうまみを殺さない味付けですね」
皆から好評だ。ただモフ様曰く,,,。元の物を大きくすることが出来るのは一度きりで、大きくした物をまた繰り返し大きくしたり、小さくすることは出来ないらしい。
まあしょうがないな。いや十分だ。一人前が100人前以上に代わるんだから。本当にすごいと思う。
一番喜んでいるのは体格が大きいサイ族の者達だ。どうしても食糧難や水不足だと、食べ物や飲み物が足りなくなる。身体が大きいから仕方がない。だからこそこのモフ様の復活は喜ばしい事だろう。
「バルクス達も遠慮することは無い。今まで食糧が足りなかっただろう。今日はまず腹いっぱい食べるがいい。サイ族の皆が腹を減っても、諦めることなく動物たちを守ってくれたから、モフ様が復活できたんだ」
動物たちが全滅していたら、善行ポイントが足りなくて、モフ様を復活させることなど到底無理であっただろう。「モフ様が復活できたのも、バルクス達、皆の働きがあってこそだ」
俺はバルクス達に、素直な気持ちを伝えた。
「そ、そんな。ありがたい言葉を頂けて、本当に光栄でございます。で、でも、本当にいい匂いが致します。もう我々は我慢できそうにありません!」そう言って皆がすごい勢いで食べ始めた。
おおっ!いい食べっぷり、飲みっぷりだ。
ラクビーボール位の米粒がどんどん無くなっていく。何だかサイ族の皆が食べると、大きなおにぎりを食べているかの様だ。
天丼のエビを切り分けしながら、「こんな美味しい食べ物は初めて食べました!」と喜んでいる。ビールもがぶがぶ飲んでいる。これが本来のサイ族の食欲なのか。よくもまー、今まで我慢したな。本当に人間?が出来た者達だな。
驚いた事に一人で米粒を6~8個食べ、ビールも20杯ぐらい飲んだ。みんな上機嫌で余韻を楽しんでいる。
苦労して食料を我慢した分、より美味しく感じた様だ。よかったよかった。さあ寝るかと、作業小屋へ皆で押しかけたが、定員オーバーで寝る場所が無くなってしまった。
「では、私とカリンとレン様は裏でテントを張って、楽しみますので、邪魔をしないで下さいね♡」
そう言ってエレンとカリンは、すさまじい勢いでテントを設営していく。
ただモフ様が、俺のげんなりとした空気を読んでか、身体を大きくしてくれた。
モフ様の体毛の中に入らせてもらい、暖かいふかふかのベッドが一瞬で完成してしまった。エレンはぶつぶつ何やら愚痴っていたが、モフ様の体毛の中に入った瞬間、すぐに寝入ってしまった。
他の者達も、たらふくご飯を食べ、ビールをガンガン飲んだため、すぐに深い眠りについた。
翌日の早朝から俺たちは、牧草地にいた。今日中に産業都市のサンマルッセに向かいたいからだ。多分サンマルッセでも、水不足や食料不足が起こっているだろう。少しでも早く助けてあげたいと思う。
とりあえず俺とドレンを中心に、液体肥料をまき、牧草を蘇らせた。農地ソロで、作物に液体肥料を一度ドレンとまいていた為、
液体肥料を浴びた牧草たちは青々と蘇り、荒廃した土地からは牧草の新芽が生えだしている。発芽は1週間ぐらいかかるもんじゃないの?そんなことを思いながら牧草地を眺めた。
更に牧草地の横にネズミーランド1個分、4.6haほどの畑を作ることにした。酪農地はまだ余裕があるため、畑を開拓することにした。
畑に生えた雑草を食べてくれる、山羊や羊などの動物たちが沢山いる。どんどん畑を広げていきたいと思う。
植える作物は念話でラスリーと相談して、主食となるソルガムや麦、ジャガイモを作ることにした。まずは飢えを無くすことを念頭においた。
せっかく俺が来たんだ。水を大量にまいて食料を沢山植えてみせる。
これからは100Lだけの男とは言わせない。水の能力を極めて見せる!そしてゆくゆくは水の魔術師...うん?水の大魔導士...何かだかしっくりとこないな...水の、水の...何か後で考えよう。
牧草地の復活と、畑の開拓にひと段落がついたころ、脳の中でいつもの機械音が鳴り響いた。
「おめでとうございます。あなたの善行により3000ポイント入手しました。これにより原油100%∞の能力を得ることができました」
頭の中であの機械音が、また聞こえた。
原油100%って使い道があるのだろうか?醤油やマヨネーズの方がよかったなあ...。マヨネーズは液体だよね?
でも地球上で、原油100%∞の能力を持っていたら、大変な目に合っていただろうな。ガソリンスタンドみたい。
そんなことを考えながら、俺達は次のサンマルッセに行く準備を始めた。
そんな俺たちを少し離れた場所から望遠鏡を使って眺めている少女がいた。
「あれが水を一日に100ℓ出す男、レン様ですか...。随分と情報とは、違うような気がしますが...」と、一人呟きながら茫然とレンを見つめてた。
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