第18話 試練の遺跡(改訂版)

 それにしても流さんの能力はすごいな。分身体を作成する能力と、転移能力か...。


 この能力を活用すれば好きな時に、好きな場所へ行ける...はずだ。


 例えば...このドランからセレンまで、一瞬に行ける可能性もあるという事だ。


 ドランで水が足りなくなった時、俺に知らせてくれれば...すぐに駆け付けることもできる可能性がある!


 すごいことだ!だけど...色々と確認をしないとな。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 まず分身体が何体まで作れるのか、分身体の増やし方、転移の可能距離や転移する時に、荷物などを一緒に運べるのか?運べる場合は可能な重量などなど...。


 申し訳ないけど流さんには、説明書をしっかりと読んでもらわないといけないな。


 それにしても... パラクード様と流さんは仲がいいな。先ほども流さんが急に光を放った時も、急いで駆け付けに来たほどだ。


 本当に大切な、唯一無二の親友に対する行動だった。そんな疑問はエルスも感じたようで...。


「2人はどこで知り合い、仲良くなられたのですか?我々獣人はパラクード様の姿はもちろん、存在すら感じることが出来なかったのに...」


 エルスが流さんを、うらやむ顔で呟いた。


「人間や獣人の目には見えなくても、私たち魔物には精霊様の姿は見えます。寂しがり屋のパラクード様につかまってしまって...ずーと付き合っていた次第です」


 何となく、やれやれ姫様には困ったものですという、爺やのようなオーラを醸し出した。


「こら流さん!そんなことを言ったらいけないぞ。確かに私は、誰からも気が付いてもらえずに、話しかけても無視をされるし...。でも獣人達は一生懸命に私を拝んでくれる。何とかしてあげたかったのだが,,,できなかったんだぞ。辛かったんだぞ...」


 パラクード様は、涙もろい精霊様の様で...ぽろぽろと泣き出してしまった。


 その姿を見たエルスは「大変に申し訳ないことを述べてしまいました...そんなに我々獣人のことを思って下さっていたとはつゆ知らずに..」そう何度もパラクード様に対して謝った。


「パラクード様...泣かないで下さい。そしてエルス様も、一度...気持ちを伝えれば大丈夫ですよ...事情が事情だったのですから...。誰も悪くはありません」


 すごい...。何なの慈愛のこもった慰め方と、場の収め方は...。本当にスライム?


 流石...ダブルネーム持ち。


「パラグラード様。レン様のおかげで実体化をすることができました。泣いている場合ではございませんよ...レン様が現れた今、次にこの国に必要なお方は、間違いなくパラクード様です。


「本当か?」


「そうですよ。パラクード様は、獣人を含めた他の種族全部、いやこのアリスト共和国に住む、すべての者を救う存在です。レン様とパラクード様はこの共和国の希望の双璧として、瞬く間に知れ渡ることでしょう」


 流さんは、パラクード様をみつめ断言した。あっ間違えた。見つめているかのように...だった。


 流さんの目が分からない...。ただそれぐらい流さんは断言をしている。


「私とレンが、この共和国の希望の双璧か!かっこいいな!」


 そう言って流さんを抱きしめぐるぐる回っている。さっきの泣き顔がどこにいったのかと思うぐらい、元気になった。


 先ほどから流さんは食糧問題に対し一人、自信をのぞかせている。


 先刻も「パラクード様の復活は、非常に大きな意味を持ちますよ。一気に食糧問題の解決に向かうでしょう」そう流さんは力強く断言をした。


 それだけの確信があるのだろう。そう断言する理由を、期待した目で俺がみていると...。


「なんせパラクード様の復活でが復活したんですから」


 そう...流さんは、パラクード様を含めた俺たち全員に念話を送った。試練の遺跡...。


 そう言えばゴージャスな機械音で、パラクード様の復活と共に、パラクード様の試練の遺跡も復活したと聞こえた。


 試練の遺跡って...このパル〇ノン神殿の様な建物のことだよな...。そう言えば復活って言っていたな。


 何が復活したんだ?


 建物自体か?


 それとも...わからん。


 俺は...ただただ巨大で、神話に出て来そうな建物を見つめ、色々な事を考えていると...。


「そうか!そうだな。レン喜べ!試練の遺跡の内部には、己を鍛えるための様々な試練の場がある。石や鉱石を外に運び出す試練、これらは力をつけるための試練の場だ!」


 へ―そんな場が、このパル〇ノン神殿の内部にあるんだな。確かに柱だけのように見えたが、階段を上ってみると、小学校にある体育館ほどの建物が目についた。


「あの建物の中にあるのですか?その力をつけるための試練の場が...」


 様々な鉱石で作られている建物を見つめながら呟いた。


「いや、あの建物内部には礼拝堂や、小部屋が沢山ある、2階建ての造りとなっております。そこで先ほどの住む所に困っていた者達が、分かれて住んでいました」


 そうエルスが教えてくれた。じゃあどこに試練の場があるんだ?


「試練の場はすべて地下にある。先ほどの力を付ける試練の場、通称「鉱石の場」以外にも、襲いかかる魔物から逃げる「俊足の間」、トラップ解除の場、通称「罠の間」。更にに襲ってくる魔物と戦う、「イクサの間」などがある」


 凄いな。このド派手な建物は、地下も規格外な造りとなっていたのか。


 ここで魔物と戦えば、俺の能力は間違いなく上がる...。そして...。


 そうか!そういう事か!


「気が付かれたようですね。レン様、そうです。「戦の間」は、いわゆる地下迷宮、ダンジョンの様な造りとなっております。ここには無限の数の魔物が生息しております。この魔物の中には、食材となる物も多く含まれております」


 流さんが俺に説明をしてくれる。


 魔物は俺が倒したゴブリン以外にもいるはず。その中には食材となる魔物も。それらを倒して、遺跡の外に運び出せば...。


 一気に食糧が潤う!


 このアリスト共和国の周辺は砂漠であり、生息する魔物も少ない。


 このため、魔物肉を得ることも容易ではなかった。だが...これからは違う。それぞれの部族の強者たちが、この試練の場に挑み肉を得れば、食料に困ることが減るだろう。


「レン喜べ!オーク1匹、200kgは優に超えるぞ。しかもほとんどの部位が食べられる。他にもキラーラビットやベアー、コカトリスなど、様々な食材となる魔獣がうようよしているぞ。これらを持ち出せば立派な食料になるぞ!」


 パラクード様も興奮をしている。また流さんを抱えてぐるぐると回っている。


 流さんも大変だ...。


「下層に行けば行くほど魔物は強くなっていきます。そして得られる宝もあり、下層に行くほど貴重な品となっていきます。これも遺跡の説明書に書いてありました。また最下層は自身の目で確かめよとも...」


 また説明書があったのね...。


 よし。これで食糧問題も大方の目星が立ってきた。


 さらにさらに、流さんの能力を確認しないといけないが、各都市に流さんの分身体がいてくれれば、流さんの転移能力で、魔物肉をいっぺんに運ぶことも可能になるかもしれない。


 夢が広がる...。


 さあ賢いスライムを増やす方法を確認して、流さんに分身体を作成してもらうか。やれることを確実に行っていこう。その日を信じて...。

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