第9話 自害します!

 よく分からないので、とりあえず俺の能力を確認してみよう。


 Lv.2 レン 26歳 人族

 HP :60/60

 MP   : ∞

 STR(筋力)  :18

 DFT(防御力):24

 INT(賢さ)  :34

 AGI(素早さ) :13

 LUK(運) :33


 現在、使える能力

 水の排出∞

 水の濾過∞

 冷水∞  

 温水∞  

 水魔法攻撃レベル10(Max)

 ポーション効果小∞

 液体肥料∞

 湧き水∞(小)5か所分 

 動物用栄養剤∞ NEW!

 大地の精霊ラスリースリーの実体化 NEW!


 自分の能力を確認しながら、動物用栄養剤は何となく理解できる。動物の体力を回復させるものだろう。


 大地の精霊ラスリースリーの実体化ってなんだ?実体化ってことは目に見えるという事だよな...うーんよく分からん...。


 一人で頭を抱えていると、エレンとシャロウィーンさんが、慌てた様子で俺の傍にやって来た。


「大変です!レン様。すごい、魔力を感じます。そして誰もいないはずの畑に、ご老人が佇んでいます!」


 エレンが、慌てたように俺の元に駆け寄ってきた。

 確かに畑一帯から、並々ならぬ魔力を感じる。


 先ほどまでの荒廃とした、いつ朽ちてもおかしくない状態だったのが、ウソかと思わせるほどの、強い生命力を感じる。


 風に揺れる作物たちが、そのまま折れてしまうぐらい、カラカラに乾いていた状態がウソの様だ。


 そんな中、チャンパオ姿の70歳位の白髪男性が、ゾルガム畑の真ん中に佇んでいた。


 表情がにこやかで優しそうな印象を受けた。


 俺たちの視線を感じたのか、こちらに向かってきた。


「この度は危ない所を助けて頂き、誠にありがとうございました。この農地ソロを守っております、大地の精霊ラスリースリーと申します」


 そう俺たちの近くまで来て、ご老体の方から俺たちに挨拶をしてきた。


 ちょっと待って。今、大地の精霊と言わなかった?それにラスリースリーと言わなかった?


「すみません。まさか大地の精霊ラスリースリー様とは思わず、挨拶が遅れてしまいました。私はここの畑の管理をしておりますシャロウィーンと申します。そして今回、沢山の水分を撒いた功労者はこちらにいる...」


 シャロウィーンが急いで片膝をつき、俺を紹介しようとしたところで、ラスリースリー様が「あなたがレン様ですか?」と言ってきた。


「確かにレンですが、精霊様に様をつけで呼ばれる存在ではありません。以降は様を付けずにレンとお呼び下さい」


 勘弁してくれ。精霊様と言えば、神と同じくらい気高い存在だ。


 女神ローラ様と同位か、それよりも少し下か分からないが、はっきりとしているのは俺よりも遥かに上位の存在だろう。


 そんな方から様つけは、勘弁してほしい。


「いやいやレン様。この大地に今回の液体を撒いて下さらなかったら、私はあと数日で消失していたでしょう。私の力では、この農地を保つことはできませんでした」


 俺の目を見つめるようにして、時に青々とした畑を見るようにして...


「今、この子達は非常に元気です。作物だけじゃない、大地も生命力の塊の様です。しかも砂漠化されていた土を、生命を与える大地にまで変えてしまいました。私の力を遥かに超えております」


 そう言って、もう一度俺に頭を下げてきた。


「それとレン様。私の事はラスリースリーいえ、ラスリーとお呼び下さい。私が実体化できるのも、レン様の能力と作物の回復によるものです」


 様つけをかたくなに拒否された。「じゃあ俺も様なしで」と言ったが、そうはいかないみたい...。


「このソロの大地の復活は、私の体力や能力の復活を表わします。現在私の能力のうちの2つが、再び使えるようになりました。1つ目は「種の創造」です。あなた様が知っている作物をイメージして下されば、私がその種を作ることが可能です」


 凄い能力だな。俺が知っている作物か...。でも俺はこちらの作物には疎いしな...シャロウィーンさんに教えてもらうか。


「レン様が、呼び寄せられた者と知っております。地球という土地の作物でもイメージをして下されば、種の作成は可能ですよ」


 ラスリーは、俺の想いを悟ったかのように、脳に直接語りかけてきた。


 凄いな、日本の野菜や、もしかしたら米も作れる様になるのか!


 でもな...それはかなわないだろうな...


「でもラスリー、俺が以前暮らしていた場所には四季があり、かつ、水も豊富にあった。ゆえに多種多様な植物を栽培することが出来た」


 そう日本は寒暖の差があり、しかも雨量も多かった。ダムの発展から、水に困ることなど殆どなかった。


 四季もあるから、その時期に育ち収穫できる野菜、つまりもあった。


 しかし日本と違ってこっちはなぁ...


「アリスト共和国は、年中気温が日中は30度を超えると聞いた。そして水が乏しい。種を作れても、育てられないと意味が...」


 俺は念話を通して思っていることを、ラスリーに投げかけてみた。


 高温で乾燥を好む植物がある一方で、寒冷地を好み、大量の水が必要な作物もある。そのような物はこの環境では作れない。


 それなら、今ここに植えられている植物だけでいい。


 わざわざ俺が知っている植物や野菜を、教える必要はないのではないか...そう思ってしまう。


「レン様...そこでカギになるのが、もう1つ復活した能力「環境順応」です」


 念話ではなく、皆にも聞こえるように言葉で発した。


「この「環境順応」は、植えた種の適性にとらわれずに、成長を可能にさせるものです。つまり暑い土地でも、涼しい場所でしか育たないような植物の成長も可能になります」


「凄い、凄い事ですよ。凄すぎですラスリースリー様。ここにはない様な、今までは育てることが出来なかった植物たちが、育つという事じゃないですか!」


 エレンは興奮して、その場でぴょんぴょんとジャンプをした。こっちのメロンもすごいお祭り騒ぎをしている。


 まあおいといて...。


 そんな感じで、ラスリーとエレン、他の俺の奴隷達と盛り上がっていると、シャロウィーンさんがこっちに寄ってきて、俺の前で土下座をした...何事ですか?


「レン様、先ほどは失礼な態度をとってしまい、大変に申し訳ございませんでした。私たちが崇めるラスリースリー様が認められるお方。そのお方に対して様も、敬語もつかわずに話をする様な失態を...即刻...自害いたします!」


 おいおい本気か...。やめて、本当にやめて...!砂漠の宝の巨乳ちゃんが...


 そう言ってシャロウィーンさんは、持っていたナイフを振りかぶり、自分のお腹に突き刺そうとした。


 本気の行動であり、止める暇などない。どうしてこうなるのと思っていると、そのナイフをロンダさんが間一髪のところで止めた。


 ふ~助かった。ナイス、ロンダさんと思っているとロンダさんは「さっき言っていた話は本当なのか?」とシャロウィーンさんに聞いた。


「そう、だから死んでお詫びを」とロンダさんからナイフを奪い返そうとする。


「早く物騒なものをロンダさんしまって」と俺は叫んだ...が、今度はロンダさんが俺の前で土下座をした。


「知らなかったとはいえ、とんだご無礼を...。私がまず死んでお詫びを致します」と、シャロウィーンさんから奪ったナイフを自分の首にあてた。


 もうその後はナイフの取り合い...。


「私が」私が」って...。


 早く酪農地帯の「コロ」に行きたいんだけどな...。

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