第10話 関係性(改訂版)

 シャロウィーンさんとロンダさんが俺の前で土下座をしている。そして目の前でまだ「私が私が、自害をする、私の方が先です。いやいや私が...」もううんざり...。


 他にやることがあるでしょ?イライラしてきた...もうだめ...こういう人たち苦手...。


「いい加減にしましょうか。お二人さんとも...」


 騒がしかった場が、俺の静かな語りかけで静寂の場に変わった。


「貴重な時間をあなた達の戯言たわごとに付き合っている暇はありません。死にたいなら死ぬほどの労力をこの国の為に使って下さい」


 そう言い捨てて2人から離れた。こんな茶番に付き合っている暇はない。


 一刻も早くラスリーの能力を使って、この大地を豊かにしなくては。


 まだ今日中に他の酪農地や農地も巡回したい。俺にはやることが山のようにある。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 この畑に何を植えるか考えた。


 国民の空腹を満たすのも大事だ。


 更に欲を言えば、色々な料理に活用ができ、そのまま食べても美味しいものが良いだろう。できれば食べ応えがあるものが、なおいい。


 サツマイモは、そのままでも食べれるし栄養価も高い。食べ応えもある。


 しかし色々な料理には使えない。それが一番の欠点かもしれない。


 サツマイモに変わる万能野菜...それはジャガイモだろう。ジャガイモならサツマイモ同様に、ふかすだけでも食べられるし、肉との愛称もよい。


 料理の幅もサツマイモよりもある。


 将来的には肉じゃがや、コロッケなども作れると嬉しい。


 よしジャガイモにしよう。至急ラスリーに種の創造を頼もう。


 俺がラスリーの元に向かおうとした時、ロンダさんが俺の足元に片膝をついて呼びとめた。


「先ほどはすみませんでした。私もここの国民。先ほどのレン様のお声で目が覚めました」


 殿が様に変わっている...。


「ロンダさん...。様は勘弁して下さい」


 そうロンダさんにお願いをしたが、ロンダさんはそのお願いを丁寧に断ってきた。


「いやレン様それはなりません。大地の精霊ラスリースリー様も認めるお方、例えこのアリスト共和国の国王、そして姫様ですら、あなた様には無礼な真似はできません。これは絶対です」


 まじかよ...国王より位が高いって、企業でいう社長より高い会長って感じ?欧米だとCOOの上のCEOという立場かな?


「ロンダ分かった。ただし王女様にも伝えて欲しい。俺はこれまでと同様に、王女様と呼びます。そして俺の事はレンと呼ぶようにと。国王が復活しても同様にと」


 俺ははっきりと自分の意志を伝えた。


「しかし...あなた様は精霊ラスリー...」


 しかしロンダも譲れないのだろう。


 いくら国王や王女とはいえ、精霊が様をつけて呼んでいる相手を呼び捨てにする事は、精霊を下にみていることになるからだ。


 ただ...実につまらん。こんな国なのか。何が精霊様だ。もっと国民を大事にして欲しい。あーもうイヤになってきた。奴隷の皆を引き連れてエルフの国にでも行こうかな?


「ロンダ...もっと、国民の事を考えて欲しい。何のために国王様、王女様なんだ?国をまとめるための存在だ。そんなまとめる存在が、俺を国王や王女が様つけで呼んでみろ?おかしな関係になってしまうぞ。それに俺は誰が上とか下とか興味がない。守ってもらえないのなら、国から出ていく...」


 するとロンダは、一瞬にして血の気が引いたような表情となり、俺の前で土下座をした。


「それだけはご勘弁を...なにとぞ、なにとぞ」


 何度も同じことを繰り返した。


 さらに俺の元に足早にかけて来る者がいた。


「わかりましたレン。そなたの言うとおりにしましょう。ただし誰もいない時はどうか、どうかレン様と呼ぶ事をお許しください。この通りです」


 そう俺の前で土下座をしそうな勢いで、懇願するソマリア王女がいた。


 俺を呼び捨てにすることは相当苦痛な事なのだろう。そして恐れ多い事なのであろう。


王女は俺を呼び捨てにする時に、声や脚が震えていた。土下座も許されない環境で、どうしたらいいのかわからずに、目で必死に訴えてきた。


「わざわざそんなことを言いに来なくて結構ですよ。お互い業務に励みましょう。ただし足を運んでくれたのだから...これを飲んで行って下さい」


「じゃ、じゃあこの国から出ていくという話は...」


 俺の目を見て、怯えながら聞いてきた...。


「あなた達の出方を見て決めさせて頂きます。もちろんロンダや王女様が俺に対して、様を付けた瞬間に出ていくことに変わりはありませんから」


「分かり、分かったわレン...」


 ロンダは俺とソマリア王女を見ながら...。


「そうしようレン...殿...」


 そう言った2人の表情を見ると、どっと疲れているように見える。何で名前を呼ぶぐらいで疲れるのか、俺には理解ができないが...。


 その後、わざわざここまで駆け付けた王女をねぎらう為に、冷水を分け与えた。


 エレン、ドレンなどの奴隷達は大喜びで飲んでいる。


「美味し~。そして冷たい!」「お姉ちゃん。美味しいね」


 無邪気に、ただ冷水そのものの味、冷たさを楽しんでいる。


 ロンダやソマリア王女は恐れ多いものを扱うような手つきで持ち、口づけた。


「凄い。冷水だ。冷たさまで選択できるとは...恐れおおい...」


「ロンダも気を付けて下さいよ。レンさ、ひい。お互いにレンの呼び方には十分気をつけましょう...それに私は、呼び捨てにしなくてはならないのですよ...どれだけ大変か...」


 冷たい水を飲みながら、ぶつぶつ2人で話し合っている。



「もう夜にでも、レンの靴でも舐めに行こうかしら...懺悔のしるしとして。そして...そうだわ、体もささげてしまおうかしら。そうすれば王になって下さいますかね...でも周りにはあんなに素敵なエルフも沢山おりますし...私の裸など...」


 こちらをチラチラ見ながら、更にぶつぶつと何かをつぶやいている。


「でもこれで国は必ず発展していきます。精霊様が復活なされたのですから...」


 ロンダとソマリア王女は確信した。どんどん国は発展していくだろうと。


 後はどうやってレンをこの国にとどめておくか、その方法を考えなくてはと、2人で秘密裏に話し合い始めた。


 そしてもう一人...俺が分け与えた水を一口飲み、覚悟を決めたかのようにシャロウィーンが俺の前に歩み寄ってきた。驚いた事にその首には、奴隷の首輪がはめられていた。


「どうしたのシャロウィーン!首に奴隷の首輪がはめられているじゃない!」


 ソマリア王女は大きな声を出して俺に伝えてきた。


「何があったんだシャロウィーン!賊でもいるのか。砂漠の宝に対して...俺の水魔法をくらわしてやる!」


「違います皆さん。この奴隷の首輪は自分から嵌めた物です。私はどうしても自分が許せません。自分の管轄する精霊様が敬う方に無礼をしてしまったことに対して...ですから私はレン様の奴隷となり...今後、レン様を支えさせて頂きます!」


 もーしらんがね~。


あのね...そういう事を望んでいるわけではなくて...はぁ...やだ...

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