ゲイル・コヴァルチク

 学校では近くのピアノ教室で火事があったということだけ、子どもたちの間では語られた。

 小学生は新聞もニュースも読まないし見ない。

 ただ、火事を見たり見に行った子は意外と少なかった。

 私にだけ火勢の強い大火事にみえたのだろうか?。

 そんなことはない筈だ。

 あれだけの消防車が集まっていたのだ。

 見たことを口を閉ざしている子が多いということではないだろうか?。

 大人たちは無責任な仮定と想像を二つ絡めていろんな噂をしたが、子供が耳をそばだてようとすると自動的に口を閉じた。

 子供にきちっと話すには適さない噂ばかりだったし、それらが正確な情報でないのは子供にもわかった。

 私が色々見聞きした範囲で推測した事実を書くならば、、。


 柚木ピアノ教室で火事があった。

 全焼である。

 隣近所の周囲に延焼は一切なかった。

 ただ、柚木家だけが轟々と燃えたのである。

 鎮火後の火災現場には、家主の柚木千代ゆずきちよ、いや女性の、いや人の焼死体が一体もなかったそうである。

 お手伝いさんの田尻さんのことを気にする人間はほぼいなかった。

 田尻さんは煙のように消えた。

 私が見た<人骨ピアノ>は、、?。大量の小さな人骨は?。

 

 



 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る