第5話 サキュバス
ふむ……。あの、良い取材になっていますか? 面白いでしょうか? 私の話。
え? 問題ない、ですか? それなら安心なのですが……そうですね。
あぁ! ありました。最近あった事例で印象的だったのが。
サキュバスです。記者さんはサキュバス、見たことありますか?
サキュバスはかなり人間に近い魔物ですよね。人語を解するタイプもいますし、最近では、サキュバスを使用した商売もあるとか……え? 記者さんも利用したことありますか? 別に問題ありませんよ。駆除対象でなければ私達もなんでも駆除するわけではありませんし。
ですが、サキュバスも当然、魔物です。時には駆除対象になる程に、人間に害を及ぼすことがあるのです。
大抵問題となるのはサキュバスが巣を作ってしまった場合ですね。サキュバスは巣に男性冒険者を連れ込んで、その精気を絞り尽くします。
で、この巣の駆除というのが少し大変なんですね。なにせ、サキュバスは魅了魔術に特化していますから。駆除隊でも魅了の魔術を完全に無効化できるのは私だけなんですよ。
ただ、サキュバス自体の戦闘力はかなり低いですから、そこは少数精鋭で駆除を行うことにしたのです。
駆除対象となったのは廃墟となった教会にできてしまったサキュバスの巣でした。近くの村から男性が度々行方不明になっているということでした。
駆除に向かったのは私と副隊長でした。私は魅了魔術に完全に耐性がありますし、副隊長は女性ですから、サキュバスの魅了に耐えることができる……と思っていました。
え? 思っていた、とは? あぁ。大丈夫ですよ。最終的には問題なく駆除していますから。
ただ、巣に入った途端、相当な魅了の魔術に満ちていると感じました。サキュバス達は威嚇するようにその魔力を高めていました。
私にとってはなんでもなかったのですが……なんと、副隊長が魅了の影響を受けてしまったようでしてね。いきなり鎧のヘルメットを脱いで「隊長! 好きです!」と言ってきたんですよ。
いやぁ、私も少し驚いてしまいました。いきなり愛の告白ですからね。ですが、副隊長は真面目な人ですから、これは完全に魅了の魔力の影響を受けていると確信しました。
ですので、申し訳なかったのですが……副隊長の腹部に思いっきり一撃を打ち込ませてもらいました。魅了の魔術を一時的にでも解除するのは、気絶させるのが一番ですからね。
その後、ですか? 私一人でサキュバスの巣は壊滅させましたよ。ですが、隊員のことを危険に晒したわけですから、隊長としては情けない限りですね……。
え? 副隊長は大丈夫だったのか、ですか? もちろん。彼女は優秀ですから。すぐに正気に戻ってくれましたよ。
ただ、少し落ち込んでいた様子だったので、私は気にしていないと言ったのですが、その言葉をかけるとさらに落ち込んでしまったようで……フフッ。こういうのもなんですが、女性の心理というのは難しいものですね。
そうですね……では、そろそろ時間のようですし、最近でもっとも大きい駆除事例の話をしましょうか。
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