ユニークスキル『ハクスラ』持ちの俺、デビュー七日目でドラゴンを討伐して勇者パーティにスカウトされるも、八日目に能力がリセットされ追放される。また一から始めるぜ――いいや、ゼロから!
第7話 ダンジョン五階層ボス:チャンピオン・スライム
第7話 ダンジョン五階層ボス:チャンピオン・スライム
「なんだ。階層ボスって言っても、大したことないんだな」
俺は五階層のボスであるチャンピオン・スライムをあっさり倒し終えて呟いた。
今倒したので、五階層の攻略は完了した。
ここへ来るまでに、何度か魔物と遭遇したが難なく撃破している。
「ふぅー……。やっぱり、ハル君の言う通りだったね」
「ああ。俺達ならば攻略できると思っていた」
五階層で新たに出現するようになった魔物はスライムの上位種だ。
そして、これまでにも見掛けてきたゴブリン、ダークウルフ、ファングボアなども出る。
臨機応変に対処できる戦闘能力が必要だ。
その上、階層ボスもいる。
普通ならばスキルを授かってから五日目の冒険者が挑むような階層ではないが、俺とユリアならば攻略できると考えたのだ。
「ううん、私は何もしていないよ。ハル君が全部一人でやっちゃった」
「そんなことはないぞ。ユリアの火魔法による援護があったおかげで、ここまで来れた。ありがとう」
「どう致しまして」
ユリアは笑みを浮かべた。
俺達が会話をしていると、目の前に宝箱が出現する。
そして、その中身を見た俺は目を見開いた。
「これは……! ユリア、見てみろよ」
「ん? ――わぁ! 凄い! マジックアイテムだよ!」
「これは、【紅蓮の指輪】か! やったぜ! レアアイテムゲット!」
【紅蓮の指輪】は、装備することで火魔法の威力を増強させる効果がある。
また、装備者の火魔法耐性を上昇させてくれるというオマケ付きだ。
まさに、今の俺達に必要な効果と言える。
「良かったね、ハル君! 早速付けてみて!」
「いやいや、これはユリアが付けてくれ。俺には似合わない」
「そ、そう? でも……」
「安心しろ。俺のことは気にするな。自分の身は自分で守るさ」
俺はユリアに微笑む。
すると、彼女は頬を赤く染めながら、俺を見つめてきた。
「分かった。じゃあ、お願いします」
「了解。ほら、手を出してくれ」
「はい」
ユリアの手を取り、彼女の細い指に【紅蓮の指輪】を付ける。
すると、赤い光に包まれた。
これで、ユリアの魔力が上昇したはずだ。
「よし。どうだ?」
「うーん……。特に変わった感じはないけど……」
「実際に使ってみると分かるかもしれないな」
「そうだね! じゃあ、やってみる!」
ユリアは意識を集中させた。
次の瞬間、彼女はこれまでよりも遥かに大きいサイズの火の玉を生成した。
「す、凄い! これなら、今までの倍以上の火力が出せる!」
「おおっ! それは良かった!」
俺はユリアとコンビを解消する気はない。
しかしそれはそれとして、実力差が開き始めていることは気がかりだった。
この魔道具でユリアの火魔法が強化された今、俺達の差は縮まったと言っていいだろう。
まだ大丈夫だ。
俺達の道はまだまだ長い。
焦らず一歩ずつ進んでいこうと思う。
「ハル君のおかげだよ。本当にありがとう」
「それはお互い様だ。さて、少し早いが今日のところは帰るとするか」
「うん」
今はまだ昼過ぎぐらいだ。
本来であれば、まだダンジョン攻略を続ける時間帯である。
しかし、たまには早めに切り上げてゆっくりするのもいい。
スキルを授かってからというもの、俺もユリアも夢中でダンジョンの探索を進めてきたからな。
今日で五日連続だ。
ユニークスキルのおかげか俺は大して疲れていないのだが、ユリアには薄っすらと色が見える。
無茶をさせるわけにはいかない。
俺はユリアと共に地上に戻ることにする。
ダンジョンを出た俺達は冒険者ギルドへと向かった。
そして、受付嬢に報告を行う。
「お疲れさまです。今日はお早いですね」
「ああ、ちょっと予想外の出来事があってな。それで、早く戻ってきた」
「ええ!? 大丈夫だったのですか!?」
受付嬢は驚いたように目を丸くした。
「騒ぐほどのことじゃない。ただ、連日ダンジョンに潜っていたから休憩するタイミングとしても丁度いいと思ってな」
「な、なるほど。そういうことでしたら、分かりました」
受付嬢はほっとした様子を見せた。
それから、彼女は真剣な表情をして口を開く。
「でも、これで分かったでしょう?」
「ん? 何がだ?」
「ハルさんとユリアさんの攻略ペースが早すぎるということです。いくらユニークスキル持ちだからと言って、使いこなせるまで無茶は禁物ですよ? じっくりスキルを慣らしていけばハルさんの成功は約束されたようなものなのですから、ここは慎重に――」
「何か勘違いしていないか?」
「へ?」
受付嬢はポカンとしている。
俺は苦笑して言葉を続けた。
「別に、俺達は痛手を負って攻略を切り上げたわけじゃないぞ?」
「で、でも、予想外の出来事があって早めに戻ってきたって――」
「五階層のボスが予想外に弱すぎたってだけの話だ。それで時間が余ったから、早めに帰ってきたんだ」
「…………」
受付嬢は絶句している。
まぁ、仕方がない。
普通はボスの討伐なんて、そう簡単に達成できるものではないのだ。
しかも、俺とユリアの二人だけでとなると尚更だろう。
「と、到底信じられません! いくらユニークスキル持ちだからと言って――」
「この魔石を見てくれ。こいつをどう思う?」
百聞は一見に如かず。
俺は動かぬ証拠を見せることにした。
「とっても……大きいです……」
「ああ。そして、ユリアがはめている指輪も見てくれ」
「指輪? ――わぁっ! とっても綺麗!」
「これは【紅蓮の指輪】といって火魔法の威力を増強させる効果がある。こいつはレアアイテムだ。こんなレアアイテムを手に入れる手段は限られている。ボスのチャンピオン・スライムがドロップしたと考えるのが妥当じゃないか?」
俺がそう言うと、受付嬢は目を大きく開いたまま固まってしまった。
数秒後、ようやく動き出した彼女は震えた声で呟く。
「し、失礼しました……。まさか、これほどの実力をお持ちとは……」
「いやいや、そこまで大したことないさ。俺とユリアが二人で力を合わせた結果なんだ」
「そ、そうでしたか……。本当に凄い方々なんですねぇ……」
受付嬢は感心しきっているようだ。
と、そのときだった。
「ハッハ! 聞こえたぜ、お前達。五階層ボスを倒したって? たった五日でずいぶんと実力を上げたみたいじゃねぇか!」
背後から一人の男が話しかけてきた。
それは、隣街最強の剣士を自称をする冒険者、ガルダであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます