洗脳と感化2
そうかよ、とイーブルを捨てるライブの言葉にリキが肩を押さえながら二人の間に割り込む。
「交渉決裂。此方側でいいよなぁ?」
それが狙いだったか。蹴り飛ばされ、転がってきたセクトが受け身しながら更に割り込む。
「貰うよ。マジで貰うからね?」
中間距離で愛銃を撃つや続けて引き金を引くも出ない。それに気付いたのかマスターが一気に距離を詰め、セクトは慌てず冷静に打撃を受け止める。その時、メキッと嫌な音。衝撃と使い込んだ年数が長いことから最悪なタイミングで寿命か。
「ごめん、ジャムったかも」
セクトは声を張り上げ、早々終わらせようとマスターを押し離してはライブに殴り掛かる。しかし、それをマスターが受け止め、リキが助太刀しようと駆け出しマスターの顔面にドロップキック。
「ナイス、リキ」
大きく後ろに倒れるもバク転。唇が切れ、袖で拭う。
「欠陥品がナメるな!!」
「舐めてないよ。そっちこそ、欠陥品だからって舐めないで欲しいね」
セクトのおちょくる言葉にマスターは無言で銃口を向ける。
「ヤバッ」
セクトは壁に向かって駆け出し、運良く弾丸を避けては壁を蹴り上げ、勢いそのまま大きくバク宙。腹が見えても関係なし、体を捻り弾を避けるも何発か服をかする。着地するとリロードか弾の雨が止む。
「大した身体能力だ。親もさぞかし悲しいだろう」
殺し屋だからと余裕からかのんびりしたリロード。だが――「いやいや、兄貴の方が強いから放ったらかしだったよ」の言葉に改めて銃口を向け、弾丸が矢の如くセクトを襲う。セクトは真っ正面から駆け出し、側転、前転とび、バク宙と軽やかにアクロバットを決めると拳を握り、マスターの顔面にぶち込む。よく見ると腕や足に避けきれなかった弾が当たり、痛々しいが無視。倒れた彼に馬乗り何度も殴る。
「アンタに欠陥品扱いされたくない!! それを何度も言われてクズか使いされた身にもなって欲しいね。ほら、言ってみたよ。このックズ!!」
セクトらしくない本気の殴り合い。それに見とれているとライブの足音が耳に入り、イーブルはハッと我に返り顔を向ける。
「よそ見すんな!!」
カランビットナイフがなぎ払われ、イーブルの首に食い込むと思いきや切り裂いたのは――リキの背だった。守るようにイーブルを抱き締め、痛みに声上げながらも必死に耐える。
「前、だけみろ。俺がどうなろうと気にするな。分かったな!!」
イーブルの背を一発強く叩くやリキは振り向き、ライブのナイフが深々と右腹部に突き刺さる。血を吐き、その場に倒れ込むとライブは弱い者虐めをする様何度も蹴りつけ、ナイフで刺し殺す。
残酷な光景にイーブルは声を失うも、リキの言葉を思い出し「やめろ!!」と強気な口調で飛び付く。馬乗り顔面を思いっきり殴る。鼻が折れ、血が出ると驚き一瞬隙を作ると逆に馬乗られ、腕で顔を守る。ナイフで腕を切付けられ痛みが増そうも途中で痛感覚がイカれたか痛みを感じない。
「腕を退けろ、邪魔だ!!」
怒り狂った声で両手首を掴まれ、上に無理やり押し付けられナイフの切っ先がキラリと光る。同時にライブの狂気染みた笑みに一瞬隙を勝ち誇った笑み。
「サヨナラ、イーブル」
許さない、そう言いたげな顔でナイフが振り下ろされるも「ゲームオーバーは君だよ」とセクトの声と銃声が室内に響き渡る。
弾が頭を砕き、飛び散る骨の脳みそ。ライブはその場に倒れ込むと息を切らし今にも倒れそうなセクトが上八木の銃を左手に握っていた。
「火力多くて助かった。うっちゃんと同じ銃だとは聞いたけどこんなに違うとはマグナムだよ、これ」
生死さ迷う状況で半笑いのセクト。銃を投げ捨て「よくがんばったね」とイーブルに血だらけの手を差し出す。その手をイーブルは掴むと不思議と涙が溢れ、涙が枯れるまでセクトに抱き付く。
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