第42話 スケルトンドラゴン
ダイゴさんはとてもいい人だった。初対面の俺に優しくしてくれたし、人間なのに差別しないで扱ってくれたり嬉しかったな。これも魔属性の魔力のおかげかな?人間界では良くないことばかり起こる属性でも魔王領などでは逆に仲間の印なんだって言われた時は嬉しかった。
「竜馬はチェスっていう遊びやったことある?」
「チェスですか?」
「そうチェス」
「知識だけなら、本で読みました」
「すごいじゃん。竜馬くんって博識だね。これからもどんどん知識を吸収していってね」
「はい」
「じゃあ、チェスやるよ。コウキ持ってきてくれる?」
コウキとはダイゴの唯一の側近で、タケルのそばにいるのがナナミらしい。二人は従兄弟同士なんだとか。本家に生まれたのはタケルだから魔王の座に着くのは誰?という騒動は起きなかったらしい。元々二人は仲が良かったから騒動はおきなかったと思うと言っていた。
「勿論でございます。ダイゴ様の望みとあらば」
と言うことでチェスをすることになった。チェスって、コマ一つ一つに進み方が決まってて、キングを動けなくした方の勝ちだったよね。
「お待たせしました」
「待ってないからね。大丈夫だよ。それに敬語いらないって言ってるじゃん。なんか距離があるようでやなんだけど」
「わかった」
「ありがとう。始めるよ」
いつの間にか準備をしていたらしいダイゴは対戦相手に俺を選んだ。
対戦相手は俺と大悟、タケルとナナミ、コウキとケンゴ、紗理奈とリオン、カナとサナ、でやることになった。
「竜馬くんからどうぞ」
そう言われたのでまずはナイトから動かしていく。ナイトの場合ポーンを動かさなくても動かせるけど他のは動かせないから動きが読みづらいので責めに行く作戦だ。
これが成功するかは分からないけどとりあえずやってみる。
「クイーンゲット!詰めが甘いね」
「くっそー、作戦が逆に使われてる!どうしたらいいんだ!」
「頑張れー初めての人に何年もやってる僕が前たら結構来ると思うんだよね。だからある程度は本気でやらせてもらうよ。被害が大きそうなのは避けてあげるから」
「今ちゃっかり俺のクイーン取っていきましたよね?」
「うん、取って行った」
「俺はそれがないとチェックメイトできない気がするんですが?」
「うん、できないね。でもポーンがこんなにいるから」
「向こうにたどり着く前に消されちゃうんですもん。一個も届いてないんですけど?」
「頑張って」
「……」
頑張ってって言われてもどうしたらいいかわからない俺に言われても解決策が見当たらない。と言うことで俺が考えたのはダイゴのところにあるルークを頑張って消してみようと思った。俺が今あるのはないとが一つとルークが一つチェックメイトできなくないんだよね。ポーン使えばでもポーンが使える位置にいない。と言う問題がある。どうしたらいいだろう?とりあえずは適当にルークに向かって進んでみるか。ここはポーンで近づいて、ルークでバーンがいいかな?うまくいく気はしなけど、
「おお、作戦変更だね。結構いい線きてるんじゃない?俺も頑張んないと」
「もう勝ちそうな人に頑張らないと、とか言われても頑張んなくても勝てそうだよって言いたくなります」
「もう言っちゃってるしね」
「そうですね」
結果俺はダイゴにボロ負けした。勝者はダイゴ、タケル、ケンゴ、リオン、カナだった。くっそー。
ちょうどその時ウルハが急足できた。今日は用事があってそれを早急に済ませてきたそうだ。それはご苦労様です。というか仕事とはダイゴから調べておいてって言われてたことを調べに行っていたらしい。緊急だから集合時間に間に合わなかったんだと言っていた。
「お疲れ様。サンキューな」
「とんでもございません。このくらいの誤用であれば何度でも調べて参ります」
「頼もしいね」
そう言いながらチェスのコマをペンのように回して遊んでいるダイゴ。魔王って感じがする。なんかカッコいい。
普段の顔と魔王の顔は違うんだな。普段の顔の方がなんかイキイキしてる。それはそうか、俺の社交界専用の笑顔をずっと貼り付けてるようなものだもんね疲れちゃう。
だからたまに普段の姿を出してるんだ。
「紗理奈、今日はメイド服なんですね。仕事の途中に連れ出されました?そうだったら最低ですよ」
「まあ、連れてこられたけどこの服は動きやすいのであまり気にならないです」
「それならいいけど」
あ、ごめん紗理奈。服装まで気が回ってたけどいっかって思ってた。
「えっと、じゃあ戦力も揃ったところだし行くか。しゅっぱーつ!」
元気な声でそういい、何か魔法を発動させる。なんて言う魔法なんだろう?気になる……
で、次の瞬間には違う場所に来てい。ここは魔属性の魔力、ここでは魔素とでも言おうか。魔素が多いから俺は有利だな。逆に紗理奈には不利だ。魔属性が味方な俺と魔属性が敵のサリナでは戦いやすさが違う。なるべく魔素を紗理奈に吸わせないように魔力の壁でも作っておくか。これならちゃんと本来の力を出せるはず。
「ここは魔物が異常に強いから気をつけてな。単独行動はなしだ。わかったな」
「了解です」
「魔力反応も探りながら進みますね」
「基本は全員行動でいいですか?」
「そうだな。全員で行動したほうが楽なことは楽か。そうしよう」
「じゃあそれで行きましょう」
「頑張るぞー」
そうダイゴが言ったので俺たちも掛け声をかける。
「「「「がんばるぞー」」」」
人間の戦争みたいに酷くない。人間の戦争の場合は数で押し切るとかもあるけど、ここでは一人一人の質を大事にしてるのがいいと思う。
強くても数には押し切られるかもしれないけど撤退ができる人数なのがいい。
ここからはみんな真剣な表情になり、会話も少なくなった。
「何回俺たちはスケルトンドラゴン倒してると思ってるんだ。それに今回は3人じゃないだろ!確かに3人でいくって言うのは間違ってたかもしれないけどさ。そんなにトラウマ?魔王なのに情けないね」
「ト、トラウマなんかになってない」
「そんなことないな」
「そ、そうですよ」
大丈夫なのってさ、ダイゴとタケルだけじゃない?レオとウルハは大丈夫そうじゃない。
「確かにトラウマになってもおかしくないですね。」
「そうですね。魔力に余裕があったダイゴ様とタケル様だけ元気に帰ってきましたもんね」
「ウルハとレオは最初に突っ走りすぎて魔力切れ起こすわ怪我するわで散々な目に遭ったみたいでし……」
魔王様たちがそうなるくらい強いんですか。スケルトンホースって、俺なんかワクワクするんだけど、これってバトルジャンキーっていうの?
楽しみだ。早く見つかんないかな。どんな魔物なんだろう?記録にも残したい。俺だけの秘密の日記に書きたいな。
「魔力反応が出始めた。スケルトンドラゴンだと思う。魔力の膨らみ具合から出現は5時間後だ。これ以上遅くなる可能性もある。まだ、反応確認できたばかりだから判別できない」
「ありがとう。確かに感じる」
感じる、感じる、感じる……感じない!なに感じてるんだかわからない!
「5時間後だから今からは休憩だ。あんまり魔力は使うな!魔物と戦うなら剣で勝負しろ!男なら平気だ!」
「私は女なんだけど?」
紗理奈はそう小さく呟いていた。
「みんなで出現地までゆっくり進めば間に合うだろ」
「問題ないかと多少の誤差は出ると思います。多くても1時間程度です」
「出現地点にその時刻に向かう」
そう言ってみんなはそれぞれ準備を始めた。
「報告です。スケルトンドラゴン出現までおよそ1時間です。出現地に移動を」
「わかった。出発するぞ!」
そう言ってダイゴは走り始めた。それに続いて走り始める。俺も紗理奈の後を追って走る。出現まであと1時間もあるのに出発するってことは随分と遠いところにいかなくてはならないのでは?と思っていたけど案外近かった。それでも結構なスピードで走って30分だから結構進んだと思う。紗理奈はもう疲れてヘナヘナになってる。
「紗理奈大丈夫?」
「はあ、はあ、みんな早いよ!疲れた!」
「結構早かったもんね」
「結構早かったもんね。じゃないよ!死にそうだったんだよ」
そこにダイゴが割り込んできてこう言った。
「いやーでも、ちゃんと付いてきてくれてたから大丈夫かなって思ってたんだけど違った?」
「大丈夫じゃなかった。もうヘトヘト……」
「ごめん、でも凄いね。魔王軍入れるよ。しかも特務部隊に」
「入れても嬉しくないです!私は人間なので」
「そうだな。竜馬くんはバテてないね。魔王直属の部隊に入らない?みんなソロだからやりやすいと思うよ」
「一応俺は人間から生まれたので遠慮しときます」
「自分が人間ではないことは認めるんだ」
「認めます。もう人間は辞めました」
「竜馬くんはそれ言っちゃダメでしょ。本当に人間辞めちゃいそうだから」
こんな楽しい会話を繰り広げていた時だ。いきなり魔力派が起こった。魔力の量は人間では到底再現できない程の量と言えばいいだろうか?俺でもここまで魔力を出したことはない。出せるかも分からないい。
「スケルトンドラが出た。戦闘準備開始!構えて待て!」
そう指示されたので俺は剣を抜き、一番スピードの出る構えをする。色々試した結果この構えが一番早かった。
グアああああああ!
叫びながら現れたのが魔力派を引き起こした元凶、スケルトンドラゴンだ。ここでは大きな魔石やアンデッドの魂は簡単に入手可能なものなのでわざわざ呼び寄せる必要すらないとか。そもそも今の魔王たちはスケルトンドラゴンにトラウマがあるみたいだし……
「や、やっぱりデカいなぁ」
「でかいな。前出現した時から2年しか経ってないからこの前より小さいことを祈ってたのに」
「まあまあ、今回は戦力いっぱいいるから、頑張れば早く終わるよ」
スケルトンドラゴンはほとんどの攻撃が物理攻撃らしい。ごく稀にブレスを放ってくるが大体は避けられるらしい。そして、弱点は骨のヒビが入った部分だって、なんとも単純。本当は綺麗な骨を攻撃し、ダメージを与えられるのがいいらしいけどそう簡単にいかないのだろう。
そして気をつけなければならないのは尻尾の骨、なんと伸びて攻撃するらしい。それに、鉄砲のように飛んできたりするみたいです。骨がデカいから鉄砲じゃなくてグーパンみたいなんだとか。この攻撃は結構痛いらしい。それにくらったら吹き飛ぶらしいし。結構気を付けないと飛ばされちゃいそう。
「来るぞ!」
そう言った瞬間大きな足が俺たちのことを踏み潰そうとしたり、手で掴もうとしたりしてきたりした。みんながみんなその攻撃を華麗に避けていく。なんか鳥が飛んでるみたいだ。
「攻撃しろ!タイミングは自分で測れ」
そう指示が出たので俺はこっそりと剣に溜めておいた魔力を解放し、ヒビの入った場所目掛けて一直線に飛ぶ。
まあ、ヒビにピタリ合わせて攻撃なんてできないよなあ。俺は見事にずれて攻撃をした。でも攻撃力があったのか骨にヒビが入った。
「竜馬ナイス」
「ダイゴもですよ。骨を焼きながら攻撃するなんてすごいです。下手したら自分が燃えますよ」
攻撃が上手く入っときはお互いに声を掛け合いながら戦闘をする。まあ、それだけ余裕があったと言えるが、この後もしばらく攻撃を加えていったが、スケルトンドラゴンが弱る様子が見当たらない。尻尾での攻撃が始まらないのでまだ、3分の1もダメージが与えられていないことになる。だがなんか変だ。みんな攻撃を加え、骨に入ったヒビの量は増えているはずなのにそれが見当たらない。
「ヒビが見当たらない。何か変だ。作戦を立て直すぞ!」
そう言われたのでスケルトンドラゴンの上ではなく地上に戻り、ダイゴを追いかける。着いたのはちょっとした洞窟。ここでならしばらくは安全だ。
「あの骨人ドラゴンは回復している。そんな気がするんだ。君たちの思ったことを伝えてくれ」
「回復してると思う。つけた傷が無くなってる」
『魂がさまよってます。その魂で回復している可能性があります』
ローレシアがそう言った。魔力が枯渇してからは最低限しか喋らなくなったな。
「魂がさまよっていて、それがスケルトンドラゴンの回復する燃料になっているのではないかと」
「それはどうゆうことだ」
俺は、この地に魔物の魂が沢山さまよっていて、たまたま今回のスケルトンドラゴンの固有能力が魂を得て回復するものだったのではないか、と言うことを伝えた。
するとみんな仲良くしてくれたみたいで作戦について話し合いが始まった。
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