第40話 アクリスが犯人だった件

 俺は突如現れた人間に驚いていた。危険じゃないと思っていたから油断をしていた。素早く攻撃体制に入り向かってきた拳を受け止め、1発お見舞いしてやる。まあ流石にこれで気絶はしないよね。


 殴りかかってきた本人は攻撃受けてもピンピンしてるし、おかしくない?ちょっとは痛そうにしてよ。結構痛かったと思うんだけど?俺の手は痛くなかったけど。


「やあっ」


 転生者は使い道があるから殺さないでって言うけど無理じゃない?だって…


「俺と勝負しろ!」


 重度のバトルジャンキーなんだもん!


「どっちが強いかやろうぜ」


「そこの弱そうなのは参戦しなくてもいいからさ」


 この言葉のせいで、何度ルカさんが暴走しそうになっただろうか?転生者である人間に中の上の人が勝てるとは思えないので、勿論全力で引き留めた。


 そして、質問の答えには正直ノーと答えたいところだが、それを許容しまいとしているのが隣で足手まといになっているルカさんである。正直なところルカさんがついていくと言い出した時は反対しようと思ったけれど「殺されたら困るから」と言われ、殺さないという保証ができなかったため隣にいるのを連れて行かなくてはならなくなってしまったのだ。なんとも可哀想な俺…


「拘束系の魔法使えないの?竜馬くんなら使えそうじゃん!」


 使えるかもしれないけどさ、魔物相手に使う魔法だから高速が強いんだよね。体が壊れてもいいならいいんだけど、流石に転生者でも体が壊れたら生きていけないだろうし…


 考えた末俺はこう答えた。


「殺しちゃっていいなら」


「殺さないで、ギルドに入れたいから」


「……」


 こんな凶暴なのをギルドに入れて平気かよ。ギルドの中でかなりの問題児になる気がするんだけど


「あ、こんな凶暴なのをギルドに入れて平気かよって思ってるでしょ?奴隷に使う首輪でもつけとくから大丈夫だよ。国の法で裁いてこっちに送って来て貰うから」


 あー可哀想な人、人間ななのに奴隷だって、俺なんかなんも悪いことしてないのに奴隷になったんだよ?もっと可哀想でしょ。この人が食事を食べさせて貰えてあまりにも過酷な仕事をさせられなければ俺は口を出すつもりはない。国の方で裁いてもらうならそれが国の法なんだしあんまり口出しても変な人と思われるだけか。


 というか、とりあえずこの目の前にいる名前のわからないバトルジャンキーをどうにかしないとだな。


「気絶させるくらいならOk?」


「やってほしくないけど、とりあえずは許容。すぐ目覚めるようにしておいて」


 いつの間にか解けた口調になっているルカさんがそう言った。いつからこんなに馴れ馴れしくなったのだろうか?最初からだったかもしれない。俺が溶けたからいつの間にか溶けてた系の?なんでもいいや。


 俺は頷いてから姿を隠したこれは相手からすると反則技音を頼りに戦ってる人以外は…この人は見た感じ自分の目で戦ってるタイプだから音とかは気にしてないと思う。多分ね。


 素早く後ろに回り、手刀を打ち込むバトルジャンキーさんは気づきはしたみたいだけど体までま反応しきれなかったらしい。俺の繰り出した手刀をモロに喰らって倒れている。今のうちにロープで体をぐるぐる巻きにして木に吊るしておく。


 吊るされたバトルジャンキーさんの今の格好は実にミノムシであった。


 ロープで縛った時に何人も拘束するかもしれないと思って長いの持ってきたから長さがいっぱい余っちゃってさ、切るのもめんどくさいから諦めて全部巻いてみたらミノムシになって、それをみた俺は笑いを堪えるのに必死ってわけ


 で、そんな俺をみていたルカさんは聞いて欲しくないことを聞いてくれた。


「どうしたの?なんか変な顔して」


「面白い。あはは、あはははは」


「え?なになになに?なんで笑ってるの?可笑しいんだけど?」


 ?マークを口頭に沢山つけながら聞いてきた。俺はもう笑いをこらえることができなくなり大笑いしていた。


 この世界にもミノムシみたいな魔物がいたはず。確か遠くの森で、凶暴な魔物が沢山出ると言われている森だったはず。そこに行った人間はもう戻ってくることができないとか言われている謎の多い森だ。大勢の死刑者が現れてときは転移陣で送るそうだ。死刑囚が強かったら生き残れるのにって思ってしまう。


「こうゆう魔物いるじゃん。死刑に使われる森、なんだっけ?確か滅亡の森、別名forest of destructionだったような」


「確かにいるねえ。絵でしかみたことないけど、初めてみた時爆笑した。森の名前は多分あってる。私もそんなに詳しくないけど結構有名だからね。貴族が送られる事の多いところだよね。平民は大体餓死だわ。多分そこには行ったことあるよ。中には入ったことないけど入り口まで行った」


 滅亡の森とforest of destructionは同じ意味なんだけどね。いいやすいのが滅亡の森かforest of destructionかの違いみたいだよ。


「そこに行ってみたいんだよね。レオ達から聞いた森につながってる気がするんだよね」


「国の許可がないと入れないよ。危ないから」


「誰に言ったら入れてもらえる?」


「陛下か、王妃様に交渉するんじゃない?誰も行こうとする人はいないから調査とか言ったら報酬つきそうだね」


「俺の興味本位で行ってみたいって言っても」


「うん、言っても」


 報酬は正直言っていらない。報酬のために動く人間みたいだから。


「うぎゃーなんじゃこりゃあ!なんでこうなってんの?無敵の俺様がなんでだー!」


 無敵の俺様ねえ、それだけ自信過剰してらあそうなるわね。なんとも可哀想な人ですこと。君は今から蓑虫くんでいいかね?名前が短くなって俺は呼びやすいよ。


「とりあえずこれを摂りやがれ!」


「質問に答えて答えたらいいよ」


「早く言え!なんでも答えてやる!」


 言質とったー!


「じゃあ、なんで俺の部屋に入り込んだのかな?なんでも答えてくれるんでしょ?」


「ああ、答えてやるぜ!それはなあ、よくわかんねえジジイに命令されたからだ。ロイ爺って呼ばれてる人間の友達らしい。俺のことを拾ってくれたのがロイ爺なんだ。ロイ爺関連の事なら俺は言うことを聞く」


「今、変な事件が起きてるだろ?それについては?」


「確か、そいつが犯人だ。俺は魔石をばら撒いてやったぜ。意外と面白かったな」


「その魔石をばら撒くことで何が起こる」


「えっと確か、人質が捕まえられて、人が流れていく、それで魔物が襲って来たり、魔王が出たり、骨竜?スケルトンドラゴンだっけかな?そんなのを言ってた気がする。曖昧な記憶だから間違ってくれてるかもしれないけど」


「ねえ君、ギルド入らない?入ってくれたらCランクから入れてあげるから」


「どうせ行き場所ないしな。入れてくれるなら」


「じゃあ、入って」


 ルカさんはさらっと勧誘していた。勧誘しなくてええわ!こんなの入れたら周りがどうなるかわからないや。


「俺は反対だけどな」


「えー!じゃあ君は国の法で裁かれる?」


「何されるか教えてくれたらそれでもいい」


「うんっとね。多分性格診断されるだけ。その後はどこかにつれてかれて労働だけど。俺が引き取るから衣食住は補償してやるぞ」


「じゃあ、国の方で裁かれる。そうすれば民の不安も無くなるだろ」


 なんか、こいつ性根はいいんだな。なんか変な感じだ。


「ルカさん帰ったら話を」


 俺はそう言って無理やり転移した。


ミノムシくんは廊下の前に置いてやった。今頃あたふたしてるだろう。


「ルカさん、俺の前世の死因をお話しします」


「え?いきなり何?」


 俺は構わず話を続ける。


「俺の死因は過労死と餓死です。種族は獣人でした。まともにご飯も食わせてもらえないのに仕事量は多かったです。獣人の体力でもたないとなれば相当な労働量だったんだと思います。ミノムシくんを奴隷みたいにするなら仕事以外は自由にしてやってほしい」


 俺がそういうとルカさんは頷いて了承してくれた。それはそれは居心地悪そうに


 外にいたミノムシけんバトルジャンキーくんが部屋にはいてきたのは数分後だった。


 今日は大人しく講義を受け、終わってからギルドにやってきた。そしたらなぜか知らないけどルカさんが青ざめた顔で出てきた。


「顔青いよ。大丈夫?」


「竜馬くん、助けて」


 話を聴いたらこうゆうことらしい。転生者の前世に関しては国家機密になるらしく、王族と一部のものしか知ってはならないものらしい。俺は親しい人に知っててもらう分には構わないと思った。転生のことは俺から話したわけではないのに気づいたし、俺は気にしないから。貴族にバレたら口封じで記憶消すかもしれないけど。ルカさんは特別だよ。


 で、転生者の前世を聞いてしまったルカさんは口封じのために消されるかもしれないんだとか。消されるって誰に?転生者本人なら分かるけど消した者が分らないとなると結構不気味だな。


『シア?消されるって誰に消されるのか分かる?』


『転生者本人か神です。基本転生者が知られた人間の名前を夢でいわれ、知られたくないのなら殺せと言うでしょう。竜馬くんのように優秀な人間はそう簡単に転生しませんからね。一番簡単なコロシを提案します。他の方法で解決する人間は私の知っているんかではいませんね。私が転生に魔力を使うようになってそう時間は経っていませんからね。まだ、いないだけかもしれません。そして、前世のことが広まってしまいそうな場合は我々神の出番です』


『そうなんだね。俺がこれで事件を解決すればルカさんは殺されないわけだ』


『その通りです』


「ルカさん、消してるのは転生者本人か神らしいよ。俺は殺さないから安心して、転生したことがバレてもルカさんのせいじゃないから俺の爪が甘かったって見るよ。もし、意図的に情報を流したなら容赦はしないけど」


「よかったー死ぬのかと思った」


 まあねえ、そんな事件があればそうもなるよね。知った人間が殺されるなんてそんなことが普通にあるのか。結構恐ろしいね。俺は危険な人間にさえバレなければいいかな。信用してる人なら、秘密を持ってることで連携がうまくいかなかったりもあるだろうし


「で、俺は事件の解決先について考えてるんだけど。ルカさんは何か考えた?俺の予想は考えてないだと思うけど?」


「その通りです。全く考えてません」


 考えてないんだ。でも素直に認めたね。ちょっとははぐらかすと思ってた。


「で、魔王領行って来ていい?」


「いきなりなんで?」


「事情は詳しく言えない。魔王同士のことについては話せない。話していい許可をもらってないから。俺の唯一と言っていい友人関係を壊せなんて言わないもんねぇ。ルカさんは優しいから」


「うっ」


 聞こうとしてたんだ。俺から引き出そうとしてたんだ。


 じゃあ、ちょっと急だけど行ってくるか。


『行かないでください!今行ったら死んでしまうかもしれません。絶対ダメです!』


 魔王量で何が起こった。考えられるのは3ヶ月後に起こるかもしれないと言われていた魔物しか思いつかない。でも俺が行っても死なないと思いうんだけどだって森に入らなければ問題ないはずだから。


『何が起きてるの教えて、俺はレオ達を見捨てられない!』


『絶対行かないでください。行ったら死んでしまうかもしれないんですよ』


『俺は死なないだから行くよ』


 そう言って無理やり転移を発動した。魔法の発動を阻害するような魔法をかけていたのかもしれない。発動時間が長かった。


 俺は魔王城の前に転移した。すると中から怒鳴り散らすレオの声が聞こえた。何を言っているかわわからない。でも何か中で騒動が起きている。


 早々と騒動が起きているであろう場所、大広間に向かった。そこは俺たちの思い出の詰まった大事な場所だ。荒らされてたまるものか!


 中に入った俺が目にしたのは魔物の大群に囲まれ血まみれになったレオの姿だった。そしてレオを支えるように座っているのがケンゴ、魔物に向かって難しい顔をしていたのがリオンだった。


「っ……」


 助けないと。その一心で魔物を狩り続ける。一応姿は見えるようにしているが身長が小さいのでリオンには見えていないだろう。ケンゴは座ってるからもしかしたら見えるかもしれない。


 魔物は強かった。覚醒させられていたのだと思う。誰が用意した魔物だかわからない。いつも森にいる魔物であれば4、5回切り込むことで倒せていた。だがこの魔物は完全に心臓を狙うか、頭を飛ばさない限り難しい。魔物は大体3メートルくらいの大型だった。今の身長が123cmの俺では身体強化なしに心臓や頭を狙うのは至難の技、身体強化を使って暴れるのは仕方ないのかもしれない。


「竜馬様ですか?なぜここに?」


「りゅうまだ。理由があってここにきた。話は後で構わないか?とりあえずこの魔物とレオをどうにかしないと」


「はい、レオ様は今はお休みになっておられます。魔王なのでこのくらいの傷なら数時間かそこらで治ります。魔王のレオ様に治癒魔法は毒ですのでどうすることもできないのです」


「魔物はまかせろレオのことは頼んだぞ」


「分かりました。お願いします」


 俺は段々とこちらへ近づいてくる魔物に自分から突撃し、心臓を狙っていく。いきなりの行動に驚いた魔物たちは反応に遅れる。その隙を狙う。


 ひたすら狩り続けた結果100匹近くいた魔物は残り5体にまで減っていた。


その時だった。魔物達が突然叫び始めた。


「仲間を呼びます。気をつけてください」


 そう言われた瞬間この城の外、門の灯りとして使われている魔石から膨大な魔力反応を感じた。何があるんだろう何か嫌な感じがする。レオがやられた理由、それは永遠に出てくる魔物に魔力が尽きたからではないかと考えた。でもそれだけではないはず。あの魔石には何かある。何かヒントがある。


「5分でいい。ここの魔物をお願いできるか?」


「5分でいいのであれば」


「頼んだ行ってくる」


「門の魔石には触れないでください。レオ様はそのせいでこの状態なのですから」


「わかった」


 魔の魔石やっぱり気づいてたか。何度も仲間を呼んだため、原因を潰しに行ったと言うわけだ。


俺は門の前に転移し、魔石を観察する。他の魔石とも比べてみた。


 見た目はなんら変わりのない魔石だった。でも、門の前にある魔石だけはよく見ると術式が封印されている。


「魔王殺し、それがお前(魔石)の役割なんだろ?カイン!」

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