第36話 忘れてた人の安否確認

 帰ってきた俺は最初に家に行った。誕生日会っていつやるんだろうね。楽しみ、家族以外に貴族いないからだけど。


「りゅ、アルフです。ただいま」


 間違える。3ヶ月でついた癖はやばいぞ!


「紗理奈です。戻りました」


 そう言ってお母様の部屋に入る。


「おかえりなさい。心配したのよ〜紗理奈ちゃん」


 へえ、帰ってきた息子ではなく最初に心配するの紗理奈なんだ。まあ、紗理奈だからだよね。俺見えてないとか?俺からは見えているから見えていると思うけど。


「アルフ、で、あなたが最近名乗ってる名前は竜馬って言うんだってね」


 お母様が怒ってる。俺の身が危険だ。と頭が警報を鳴らしている。これはどうしたらいいかな?帰ってきて早々お怒りなのですが、そして俺は名乗ってる名前を教えていないのだけれど?バラしたの誰かしら?


「返事なさい」


 怒っておられる。もうとぼけるしか道はない!とぼけま〜す。文句言わないでね。俺は帰ってきて早々の説教から逃れたいだけだから。


「そんな名前で名乗った覚えはないのですが……」


「ルカ・ヤルウィさんから聞いたのだけれど?」


 アンニャロ〜俺の秘密をバラしてくれたな。なんで話すかな?それと俺の親といつどこで話したかな?こんな事が続くようだったら俺は契約を交わすしか無くなってしまうのだけれど?


「そうですよ。俺は竜馬です。だからみんなりゅ、アルフって言ってたでしょう?今日、部屋入る時に自分で間違えたし」


「なんで本名名乗らないんですか?いい名前でしょう?」


「俺がアルフと名乗ってみてくださいよ。貴族の子供だって見下されますよ。俺はそれが嫌なのでそう名乗りました。ギルドや肉屋に行って、貴族の名前を名乗ってみてください。白い目で見られますよ」


「気にしなければいいではないですか」


「性格的に無理です」


「頑固な息子、可愛くないわ。それに比べて紗理奈ちゃんは甘えてきてかわいいわ〜」


 息子よりメイドを可愛がるってどうなのかな。そして誕生日の件についてはどうなるのでしょう?


「つまんない。全然やきもち焼いてくれないんだもん!男の子は甘えん坊って言うのに!私の息子はなんでこんなに冷酷なんですの!」


 貴族としての仮面を被って接しているので冷酷でも仕方がないと思うのですが?俺だって冷酷が好きなわけじゃあないんだよ。好きでやってるわけでもないし……冷酷に接してるのは自覚症状ありだけど、これ以上心が年相応になりたくない。頭がだんだん働かなくなってきたんだよね。最近は特に大人の考え方?が出来なくなってしまった。子供の考える悪戯のような作戦しか思いつかなくて。


「貴族としての仮面を身につける為に家でも練習してるんです。でないと動揺した特に動揺しているのが相手にバレてしまいますよ」


「それはそうなんだけどまだ5、6歳なんだから!そんなことしなくてもいいでしょう!」


『お母様の考えには納得です。ですが竜馬くんの考えも否定できないんですよね。大人の考えを常にしてないと子供の考え方しかできなくなってしまいますもんね』


 勝手に人の心読むな!


 知ってて言ってくれなかったんですか。そんなことがあるなら言ってくれればいいのに、言ってもらっても解決方法はないと思うけど。


「で、アルフの誕生日会は明日やります。今日は疲れてると思うから早く休みなさい。それと、アルフには家庭教師をつけるので大人しく講義を受けること」


「無理です。やることまだあるんで、だいぶ解決に近づいたとはいえまだ解決には至らないのですから」


 しかも、俺は一回家庭教師からもう教えることがないから合格!と言われ、修行してから来ると言われた。今度は別人になって


「強制です。これは親からの命令と思ってくださいね」


「それにこの前の問題集は全問正解だったはずです」


「確かに全問正解でしたね。なので専門的知識まできっちり学んでもらおうと思って」


「じゃあ、ちゃんと講義を受ける代わりにこちらの意見も飲んでくださいね」


「いいわよ。なんでも飲むから」


 言質は取った。これで俺の勝ち。


「グリュアーノ、禁呪、ダンジョン、遠方への情報収集を飲んでくれるならいいですよ」


「グリュアーノは飲めないわ。そこについては知ってはならないことよ」


「あの国は、悪魔のような国と言われている。だが実際は違う。みんながそのような噂を流すから現実になってるだけだ。その噂が流れた理由も大体は把握している。だが、もっと他のことも知りたい」


「それは無理」


「では先に失礼します」


 俺はそう言って部屋を出た瞬間ルカさんの部屋に転移する。


「あの、一緒に行った仲間って生きてます?」


「ぎゃー、何が、何が生きてるの!」


「俺だよ。安心して、一緒に行った仲間どうなった?」


「壊れてたけど帰ってきたよ。いきなり俺の部屋にきたもんだからびっくりしたな」


 レオ、転移させてくれたんだ。やっぱり優しいな。


「よかった〜やっぱレオはすごいや俺も見習わなくちゃな」


「レオって?」


「魔王様」


「はああああ!」


「いい人だよ。俺たちのこと気に入ってくれた」


「魔王が仲間ねもう何が何だかわからない」


「で、これ全部買い取って」


「それは王国に持ってって。陛下が換金したいらしいから。帰ってきたらすぐに来るように伝えてって言われてるから。よろしく」


「え?じゃあ、行ってくる」


「飲み込み早!」


 俺は早々と転移し、王宮へ向かった。


「そんなにいそがれてどうしたのですか?竜馬様」


「魔王領から帰ってきたら招集がかかってたって聞いて飛んできた。紗理奈は一応置いてきた」


「中へどうぞ」


「ああ」


「ではこの前の会談室でお待ちください」


「わかった」


  俺はあの防音の働きがある会談室に向かった。そこはもう綺麗に準備されていて、お茶まで出ていた。俺は念の為に毎日の出来事を言葉にして録音しておいた魔道具を準備する。ここには1日の細かい出来事まで30分かけて話してある。これなら出来事や情報を忘れることはないので抜けもない。


「待たせたな」


「ただいま戻りました。では、早速報告を」


「頼んだぞ」


 俺は、魔王城であったことを順を追って話す。今までこちら、人間界に来ていたのは3人魔王がいる中の一人だったことと、大魔王がいることは伏せてある。時が来たら伝えるつもりだ。大魔王、魔王の存在は最近の以外歴史の本から抹消されている。王族の持っている代々受け継がれた国宝の歴史書にも載っていない。それだけ世間に知られるとまずいことなのだろう。


 それはそうか、あれだけ被害を出した魔王が3人もいる挙句それ以上に強い大魔王という存在いるんだもんな。混乱に陥ってもおかしくない。


「それだけの情報を、よくやった。其方には褒美を出さねばな。でも、君くらいの冒険者となれば手に入らぬものはないのではないか?」


 それはそうなんだよね。俺は貴族でもあるからお小遣いが貰えるんだよ。そのお金を合わせればほとんど買える。屋敷とか高価なものじゃなければ。それでも小さめな家くらいなら買えるよ。俺だって貧乏じゃないもん!


「……」


「じゃあ、竜馬として学園に行くことを許可してやる。爵位も竜馬としての君の爵位でどうだ?学園のテストなどはみんなと同じ時間で倍の量を解いてもらうことになるかもしれないがそれは頑張ってくれ」


 学園のテストって難しいんじゃなかったかな?


「せいぜい頑張りたまえ!」


「そう言われてもですね」


「頑張りたまえ」


「はい」


 陛下の有無を言わせない目に負けました。これじゃあね、負けるよね。これだけ言えって言う目で見られれば「はい」としか言えない。


「で陛下、魔王領で手に入れた素材を買い取ってくれると言うのは?」


「ああ、全て買い取ってやるからここに出しなさい」


「この部屋には収まり切らないと思いますけど?」


「は?」


「だから、ここでは魔物の素材が入りきらないと言ってるのです!」


「では、裏庭に出してくれ」


「了解です」


 俺は裏庭の空いているところに魔物を積み上げていく。多分これで全部だな。俺の使いたい素材だけ取っておいたから大丈夫!


「……」


 陛下、顎が外れてしまいます。これ以上口を開かないでください。そう思いながらアイテムボックスの中を確認していく。


 うん、何にも入ってないね。大丈夫!


「陛下、口を閉じてください聞いてます?陛下陛下!」


「ああ、なんだ?」


「顎外れますよ」


「いや、なんか幻が見えてな。こんなに魔物がしかも中には全て魔石が入ってると考えるとこれなら平民にまで魔道具を届けられるかもしれない」


「そうですね。監禁お願いします」


「数日中にはやらせておく。できるまで毎日来てくれ。聞きたいことが沢山ある」


「分かりました。お昼頃に来ますね」


「昼だな分かった」


 そう言って今日はもう帰ることになった。帰ってきたばかりだから疲れているだろうって言っていた。俺はお言葉に甘えまして今日はもう休むことにした。


 家に帰り、魔王領の出来事について紗理奈と話して過ごす。明日からは家庭教師が来る可能性があるから今のうちに楽しんでおいた方が得だな。


 いなかった間に溜まった問題集は体を酷使して終わらそうと思う。今日は少し寝てすぐに課題を終わらせるしかないだろう。そうでもしなきゃ終わらない。


 俺、ファイトー!!!!!

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