第34話 魔王領滞在!
「それで、お前らの仲間は無事に人間界に帰ったぞ。お前らは帰るのか?野宿するなら俺の屋敷に泊めてやる」
「ありがたいのですが、迷惑ではないですか?」
「其方らがいると賑やかだからな。俺は楽しい」
彼ははにかみながらそう言った。ここにいていいなら、あの情報について話せる。それにレオが人間界の情報を求めても、人間界に来られないから被害が出る恐れはほとんどない。と思う。だから、こちらもある程度の代価を払うことが可能だ。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「リオン、ケンゴこいつらを連れて行ってやれ」
「わかりました」
「了解」
人間界では使用人、執事、メイドが会談中に席に座ることなんてないのにここでは座っている。これが普通なのか?俺はそうしてもらったほうが気が楽だけど。紗理奈はパーティーメンバーだからってたまに押し切って座らせてるけど。これ秘密な、本当はダメなんだ
「紗理奈様、竜馬様、快斗様、カナ様、サナ様はこちらに」
「ほう、お前も魔法の腕が上がったようだな。いや、魔力感知か?」
「魔力感知でございます」
「わかった理由な、お前の魔力が一部違ったから。魔力が俺の義理の兄弟に似てたから。あってるだろカナ、サナ」
きょ、兄弟?
『私のお父様は先祖返りの吸血鬼だったんです。元々悪魔の多い家系だったんですけどね。それで次期魔王候補から外されてぐれたのがお父様、そのお父様と人間のお母様との間に生まれたのが私たちってわけです』
うん、うん?
「お兄様!」
「お兄様」
そう言ってカナとサナが出てきた。ここは陽の光を気にしなくていいんだな。カナとサナにとってはここが居場所だもんな。
「そうだ。レオ兄だ」
「レオ兄、元気だった?」
「レオ兄にはもう会えないと思ってたから嬉しい」
「お前らも生きててよかったな。コイツのおかげだろ?俺じゃあ助けられなかったもんな。あの時の俺は無力だったから」
しばらく兄弟トーク?を繰り広げていたレオたちがやっと解放してくれた。ちなみのレオの年齢は秘密らしい。なかなか背が大きくならなくてそれを気にしているらしい。だからそれはご法度話題だって。
そんなに小さいかな俺より20センチくらい大きいのに。
案内された部屋はまたまた魔王城という雰囲気を出した部屋だった。俺は思い切って聞いた。
「このお城綺麗にしていいですか?」
「お客さまにそんなことさせられません」
「俺がやりたいのでやりますね」
「へ?」
ケンゴという執事は固まってしまった。まあいいか。フリーズなら治る!はず。
そして俺と紗理奈の泊まる部屋が一つなのはなんででしょう?ベットも一つなんですけど?そこはいいか。俺がソファーで寝ればいい話だ。
「夕食時にお呼びします」
フリーズから立ち直ったケンゴ氏は部屋を去って行った。俺は早速部屋の掃除をすることにした。蜘蛛の巣や埃をはらっていく。魔法を使って汚れを落としたりしながらきれいにしていく。こんなにいっぱい掃除したの久々だな〜俺も前世は掃除サボってたもんね。男一人なら掃除いっかーってなっちゃうよ。多分、俺はそうだった。
でも今は綺麗なところにしばらくいたからかな?綺麗じゃないと落ち着かない。
水魔法で洗浄してみたり、布で叩いてみたり色々な方法で汚れを落としていく。
このお城ってすごいね。全部電気にマークが付いている。俺には読めない文字だけどなんか書いてある。これについてなんか知らないか聞いてみよう!
「お食事の準備が整いました。食堂へ参りましょう」
「ありがとうございます」
「あの、綺麗にしてくださってありがとうございます。3人で書類を片付けるのでやっとなので掃除まで手が回らないのです」
「ここに置いて貰うお礼だと思って。あと、このマーク何?俺には何が書いてあるかわからない」
「こ、これは、レオ様に知らせて参ります」
そういってリオンがさってしまった。そして10秒後凄い勢いでレオとリオン、ケンゴが来た。は、早い。
「よく見つけた!これで俺は魔王と認められるぞ!」
は?魔王なんじゃなかったの?
「レオ様は正式な魔王としてのマークを体に宿す前に先代魔王がこの世を去ってしまったので神に認められた魔王ではなかったのです。だから仕事の量がこれでしょ?」
そう言って見せてくれたのは書類の束。こ、これはすごい。人間じゃやりきれないよ。
「ありがとうございます。お食事が遅くなってしまいますので食事を先に済ませましょうか」
そう言って、俺たちを食堂に連れて行ってくれる。食堂だけは綺麗だった。埃も蜘蛛の巣もなく。なんでだろ?
食事はおいしかった。人間界で食べてるのと比にならないくらい。個々の食事を3カ月も食べたら太って舌が肥えそうだ。
「で、寝る前に俺の部屋集合だみんなわかったな」
「了解」
「わかりました」
「はい」
「了解だ」
食事が終わり、部屋についてる風呂を借りる。ここは本当にびっくりした。浴槽が広い!深い!プールみたい!だった。
夜の集合で行ったのは今日の振り返りと明日の予定。俺はできる仕事をやって、敵を排除するのに専念することになった。紗理奈も同じ、資料に載っている魔物は全て素材にしていいらしい。
これで驚きがいっぱいな1日は終わった。
俺はもう監視役の魔物を狩るのが習慣になっている。ちなみに今日は俺の誕生日、10月25日だ。誕生日は祝ってもらいたいけど人間界にいないから祝ってくれる人がいない。レオ達には俺の誕生日のことは伝えてないから知らないだろうし……うん、祝ってくれる人いない。
朝も早く出てきてしまったので誰にも会っていない。魔王城に滞在させて貰ってからというもの紗理奈は白の家事をやっている。家事が終わり次第俺と一緒に狩をする。
俺の武器はもう半分以上消費してしまった。あれだけ買ってあったのに、思った以上に魔物の皮が硬くてすぐに使えなくなってしまう。毎日ちゃんと刃を研いで切れ味の確認とかするんだけど、次の日使ったら全然切れなくて吹き飛ばされたことが何度もあったような。
なんか知らないけど切れないのに驚いて固まったらすぐに可愛くない硬い尻尾で俺のこと引っ叩いてくれるんだよ。俺何にも悪いことしてないのに、さてると言えば敵を倒して素材にしてることぐらいかな?
魔物を毎日毎日送ってくれるのは大魔王反発派?だそうだ。俺はいい鍛錬になってるから文句言わないよ。
レオはちゃんと神に認められた魔王になったから仕事が減って剣を振っている時間が増えた気がする。リオンとケンゴはレオと一緒に訓練してるのをよく見かける。
魔王としてこれからも生きれてよかったな。って思う。俺が掃除したから見つかった変な文字の書いてあるのは魔王の証。先代魔王に付けてもらう筈だったけど戦争で急死してしまった為付けてもらえなかったらしい。そうゆう場合は自分でそれをつけなくてはならないらしいけど付けるマーク?が分からなかったからつけれなかったんだとか。そんなことを言っていた。
なんか今日はいつもより紗理奈くるの遅いな。何かあったんだろうか。こんな思考を巡らせてる間にも魔物は寄ってくる。だからなるべく外傷を負わせないように気をつけながら急所を狙っていく。いやーナイフさんが大活躍だな!
「お待たせしました。遅くなってすみません」
「今日なんかあった。ちょっと料理に手こずってしまって」
そう言って小さく笑う。なんか嘘っぽい。でも散策するのはかわいそうだし、そんな大事な問題でもないからいいかな。
「そうか。今日の夕食が楽しみだな」
「期待しててください。頑張ったので」
魔王領では食事は2回、朝と夜だけ、必要以上に栄養を摂る必要はないと考えられているそうだ。俺もだいぶこの習慣に慣れてきた。最初の頃は狩った魔物の肉をちょっと食べたりしてたっけ?まあどれも不味かった。そりゃね、食用じゃなくてあくまで監視用だから。まずくてもなんも言えない。
「今日はちょっと早いですけど夕食の準備をしてきます」
「うん」
なんかおかしい。でも誕生日が関係してることってないと思うんだよね。だって紗理奈には俺の誕生日伝えていないから。
〈1時間後〉
「ただいま〜」
「「「「お誕生日おめでとう(ございます)」」」」
「え?」
「今日誕生日なんでしょ?紗理奈ちゃんに聞いたよ」
「私はお母様に聞きました」
「俺の誕生日はなしたことなかったから知らないと思ってた。私、アルフ様の専属メイドなんですよ」
「それは初耳だ」
「同じく」
うん、それについては話さなくてよろしい。
この後俺は俺のことについて聞き取り調査?みたいなのを受けた。みんなに囲まれて隠してることを全部吐き出された挙句の果てには心の声を読んでくるもんだから俺はヒヤヒヤが止まらなかった。ずーっと、正座させられていたため足が痺れてて、まともに歩けないまま食堂に向かった。
「じゃあ、俺からのプレゼント」
「私どもからはこれを」
「私からはこれ」
レオからは魔王領でしか手に入らない高価なペンダント、リオンとケンゴからは何故か羽ペン、紗理奈からはピアス。お揃いらしい。
「みんなありがとう。こんなことしてもらえるなんて夢みたい」
「人間のくせに人間の輪に入れていないハブれものなんだな」
「いいだろ!魔力のせいで仲間はずれなんだから解決しようがないし!」
「あと、子供にしては出来すぎてるから気味悪がられている」
そんな理由もあるのか。俺は冷酷人間とかしたほうがいいのかな?
「俺からのアドバイスだ。わざわざ嫌味を言ってくる輩には本気の殺意を向けてもいいと思うぞ。君は転生者と見受けられるからそのくらい朝飯前であろう?」
「……」
転生者。なんでバレてしまうかな?
「だって、人間にしては強すぎるもん。紗理奈ちゃんはまあ、規格外だけど人間でいられるギリギリだけど、君はもう人間じゃないもん」
「それはそれは申し訳ございませんでした。人間の体で耐えられる限度というものを知らないもので」
こうして俺の誕生日は賑やかに過ぎて行った。
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