第24話 お婆さん

 魔道具を持って帰った俺と紗理奈は頭痛に襲われていた。なぜかルカさんは痛くないらしい。おかしいよね紗理奈なんてほとんど魔力を抜いたのに頭痛いなんて…


「じゃあ早速だけど魔道具を解体して術式を解いていこうか」


「俺たちは何をすれば?」


「えーと、竜馬くんは術式解除を紗理奈ちゃんは時間管理をお願い」


「あーね。確かに必要ね」


「つまんないです」


「まあまあ、大事だから我慢して」


「紗理奈頼んだよ。他の指名依頼もあるから、日付が狂ったら大変だ」


「うう。しょうがない、私が一番役に立たないもんね」


 俺は魔力を使って少しずつ部品を外していく。魔道具は大体魔力で止められてるから魔力で剥がすことができる。ルカさんはそんな芸当できないと、諦めて工具でやっているけど。魔力でやったほうが早いよ?魔力の扱いも上手くなるし……


『竜馬さんこの人ですか?』


 そう言って快斗が視界共を発動させてらしい。いつの間に使えるようになったんだろう?それは置いといてとりあえずこれを紗理奈とルカさんにも共有しなくちゃ。


「視界共有」


「これは」


「おばあちゃん!」


「これは快斗の視界を共有したもの、この人はずっと前からここに住んでいると言うのは間違えではない。だけどこのお婆さん人間じゃあない。だって普通に魔法使ってるし、寿命がいくらなんでも長すぎる。見た感じもう90はいってるでしょ?」


「おばあちゃんは自分のことの質問は絶対に答えなかった」


「すごいね」


「これは一旦置いておいてお婆さんなんだけど会いに行かない?」


「え?いいの?」


「うんじゃあ言ってくるね」


 そう言って俺は快斗の真上に転移した。


『ぎゃっ』


『うんいい反応!』


『竜馬さん!』


『まあ、許して。で、例のお婆さんは?』


『目の前の家』


 中にはお婆さんが一人で、他に誰は誰もいなさそうだ。この魔力は多分レイスとかそんな感じの魔物だろう。これはなんか嫌な感じがするな〜


 とりあえず二人を連れてもう一度ここに来るか。


『すぐ戻ってくる』


『了解っ』


「懐かしいです」


「ここは、まだ新しい区域じゃないか』


 ルカさんは疑問をひたすら口にしていた。なんでこんなところにいるんだって。


 俺の予想だけどこのお婆さんはこれで死んでしまった被害者なんじゃないかと思うんだ。レイスになってまでこれを伝えようとしたのは後世の人間が巻き込まれないように、巻き込まれても逃げられるように、教えてくれたと捉えていいだろう。もしくは単に元凶がお婆さんということもある。


 どっちにせよお婆さん話しかけないという選択肢はないだろう。何か聞いたら前者の場合素直に答えてくれると思う。後者の場合は何もことえないだと思う。


「話しかけてみる?」


「私が行く」


「お婆ちゃん!お久しぶり」


「あら紗理奈ちゃんじゃないか。どうしたんだい?」


「昔に話してくれてお話あったでしょ?それについて話してくれない」


「いいよ。お仲間さんもいるんだろ。入っといで」


「お邪魔します」


「お邪魔します」


 部屋は木で作られた家具で揃えてある。シンプルな部屋だ。お婆さんはみんなを席にすすめて話を始めた。


「竜馬です」


「ルカ・ヤルウィです」


「竜馬くんにルカ・ヤルウィさんね」


「このお話が本当だってなんでわかったんだい?」


「今起きている不思議な現象にピッタリだったから。それに子供に聞かせてるってところが広めてと言っているようなものだから」


「君も紗理奈ちゃんと同い年なんだろう?すごい思考だね」


「じゃあ私の正体にも薄々気がついているんじゃないかな?」


「レイスではないでしょうか」


「そう思った理由は」


「ゾンビ特有の匂いがなかったのと自我を保つにはそれなりの階級が必要だから。レイスくらいがピッタリかなと」


「うん、すごい」


「じゃあ全て教えるよ。前にあったこと、歴史書に刻まれていないところを…」


そこからおばあさんはゆっくりと話してくれた。


 もう何百年も昔の事。ある1つの問題が発生した。今までに見たことない不思議な属性の夜宿った魔石が発見された。その魔石には所有者の名前が書かれていたらしい。所有者の名前は普通の人には見えない。ある方法を使うと見ることができるのだそうだ。その方法は一般人に知らされる事はなかった。だから研究部に侵入して情報をかき集めたらしい。だがその情報は既に燃やされていたので見つけることができなかった。ただそこにはまだ焼けていない書類があったため、この事件は亡霊の国グリュアーノが仕掛けたと言う事になっているということのみわかった。


 大切な、重要な書物はもう燃やされていた。焼けていない書類には大した情報は載っていなかった。そこでせめてもの報いとして後世の異常な属性の魔石を研究したんだって、この研究にはたくさんの時間を要したがそれなりの結果が出ているらしい。


 それは魔石の対処の仕方や扱い方などその他諸々は教えてくれるらしい。なんて優しい人なんだろう。これでほぼ確信だ。この人は悪い人じゃない。


「竜馬くんこの人はレイスって言ってるけど、多分レイスじゃない。人間だ。魔道具を使って魔力の質を変えている」


 どうゆうことだ?じゃあこの人は人間?でもこの人自身もレイスって言って…俺が疑問を浮かべてたらルカさんは助け舟を出してくれた。


「過去にこの国、ステラ王国は人口がゼロに近くなったことがあるのは知っているかな?」


「歴史書に載っている魔物襲撃の時の?」


「あれは誰かが仕掛けたってこと?」


「そうゆうこと、スプールド共和国とステラ王国の一部が手を組んで起こしたことってこと。それで一部以外の人間を皆殺しにした。だからこれについては学校で習わなかったんだ。これで疑問が解決した。で、このお婆さんの正体は人間であり幽霊でもある」


「どうゆうこと」


「うーんとね。おばあさんはいわゆる死がないってやつかな?」


死がない。死なないってこと?不死身じゃん!でも歳取ってるから不死身じゃなくて死なないだけか。なんかそれはそれで辛そう。


「理解」


「理解してくれてよかったよ。そろそろ時間かな」


「じゃあ、これが魔法陣これで解けるよ」


「ありがとうございます」


「今日は突然お邪魔したのにありがとうございました」


「いいのよ」


「さようなら」


 結局わかったのは少しだったな。まあ1日でって見たら収穫はあったのかもしれないけど今までの努力を見ると少ないな〜せっかく快斗に見つけ出してもらったのに……


「転移」


 転移した瞬間をお婆さんが見ていて不気味な笑みを浮かべていたなんて知らない俺たちはお婆さんに勝つことができなかった。この時点で敗北は決まっていた。何故なら俺の最高の手札(転移)を晒してしまったから。


「紗理奈落ち着いて聞いて」


「うん」


 俺はルカさんと話したことを紗理奈にも話した。そしたら悲しそうな顔をしながら静かに聞いてくれた。今まで信頼していた人が嘘をついたなんて認めたくないよね。それは俺も分かる。だから理解してくれなくてもいいかなって思っていたのだが理解してくれたらしい。ありがとう。俺じゃあしばらく立ち直れなさそう……


「紗理奈ヘーキ?無理だったら言って」


「平気だよ。お婆さんには悪いけど謎が多い人だったから、私名前も知らなかったし、今も知らないけど」


「そういや聞いてないな」


「聞いてないし、教えてくれそうになかった。俺たちの名前は記憶したらしい」


「俺らって大丈夫?いきなり殺してやるーなんて言われないよね」


『ローレシアを奪うやつなんて殺してやるー。もう許さん、許さん、許さーん。竜馬、今度こそ息の根を……」


「ぎゃー」


「竜馬くん!」


「竜馬さん!」


「えーとですね神様の恨みが……」


「どうゆうこと?」


「いやー色々ありまして……また今度話すから待っててください」


「えー、気になる」


「いや、でもね。ほら長くなるから」


「気絶してた時のだったら言いなさい!」


 珍しく紗理奈が強気だ。


 俺はこの後洗いざらいはかされたのだった。


「もう勘弁して、俺の秘密暴かないで」


 こんな時に一通の手紙が届いた。内容は社交パーティーのお誘い……

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