第22話 紗理奈のお母さん
俺が街を歩いていると、知らない女の人に声をかけられた。
「あなたが、アルフ・グラート様ですか?」
「そうですがなにか?」
何故俺のことがわかるのだろうか?
「私の娘を返して下さい。私の家で唯一の女児なんです」
「紗理奈さんは家でメイドとして働いています」
「それでも私の大切な子供なんですよ」
「紗理奈は家族みんなに嫌われていると言っていたのですが、間違いではなくて?」
紗理奈の母親を名乗る女性は反論できなくなってしまった。
もしこの人が紗理奈を傷つけた人なら、同じパーティーメンバーとしてその事を伝えておきたい。紗理奈は十分働いてくれるし、この家に居てくれた方が俺は嬉しい。
俺は紗理奈から聞いた家族の話を全て話して、それは間違っていないのか確認を取ることにした。俺が知っている限りでは紗理奈は嘘をついていないので多分本当のことなのだろう。
なんでこの人は俺のことを知っている?今は貴族の着るような服を着ていないのに…そして、紗理奈が俺のことを家族に話していても顔まではわからないはずだ。
「とりあえず娘を返して下さい。じゃないと町の警備隊呼びますよ」
呼んでもらっても構わないけど俺の身柄取り押さえようとするなら全力で戦うよ!これから俺にはやることが沢山あるんだ。3ヶ月後に来る予定のギルドの指名依頼などもあるから…捕まってる場合じゃない。
「今、紗理奈は仕事中です」
俺がそう答えた時だった。いつの間にか前に出てきていた紗理奈が反論する。
「お母さん、私は今仕事をしているの!それに私のことをいらないと言ったのはお母さんでしょう?もう帰ってこないでって、邪魔だからいないでって……うっ」
「紗理奈!」
「私の可愛い紗理奈ちゃんを泣かせたのは誰かしら?」
「お母様のではないですけどね」
「今は私のです!」
「……」
この様子を見ていた紗理奈のお母さんは黙ってしまった。まあ、これだけ娘が必要とされていれば無理矢理でも返せとは言いずらいだろう。ナイスお母様!多分本人はそんなこと考えずに言ったのだろうけど…
「今日のところは諦めます。失礼します」
俺は今思った。この人は貴族に向かってこんな態度をしても良いのか、と。意地汚い貴族だったら無礼ということでもうこの世を去っていたかもしれないな。その分までこの人は恵まれて……ないね。お母様が許しそうにないわ!
「お母様、命だけは助けてあげてくださいね。俺からはそれだけです。あとは紗理奈の希望を優先してください」
「はい、わかったわ〜紗理奈ちゃんお母さんのことでお話があるのだけどいいかしら〜」
「はい」
「紗理奈、お母様の用事が終わったらギルドのルカさんの部屋で」
「わかりました」
「何話してたの?もしかしてデートのお誘い?いいわね〜若くて」
「ち、ちがいます。仕事の話です」
「そうです。りゅ、アルフ様の言う通りです」
また間違えたな〜
俺はこれからギルド長のルカさんと調査をすることになっていた。
調査内容は例の魔石と、魔物が屈強化していることについてだ。過去の事件や被害などを書類で見ていき、同じ現象が起きていないか見ていくことになっている。
それと俺は魔領域の操作かな?人間では決してたどり着けないと言われているところだ。なんで辿り着けないのかわからない。
だからそこに行って、何が原因なのか見てくることが仕事!
見ていく資料の量は大体縦30センチ、横20センチ、厚さ5センチ程の本で、冊数はおおよそ1000冊くらいって言ってた。これを全て見るため、数日では終わらないだろう。
これからは部屋に篭るぞー!俺ファイト!
「転移」
ルカさんの部屋に行き、驚かす。
「ぐわああああ!」
魔物の声の真似をして転移する。
「ぎゃああああ」
「びっくりした?」
「その登場にしかたやめてくれないか?心臓というものが私にもあるんだ。これを毎回食らっていたらいつか死んでしまいそうで…」
「じゃあ早速始めようか」
資料を探し始めてから多分丸一日は経っている、と思う。と思うと言うのは、時計も外も見ないで作業をし続けていたからだ。後で紗理奈が来たら時間がわかる。
この時間で分かったことは、魔王を人工的に召喚させようとしているかスケルトンドラゴンを人工召喚させようとしているかのどちらかだ。まだ魔石を研究しきれていないのもあるが、魔王とスケルトンドラゴンを召喚させるための条件はほとんど同じだ。
魔王の召喚条件は、闇属性の魔石をばら撒くこと、10万の生きている魂を集めること、最低でも3メートル級の魔石を準備すること、生贄、生贄の魔力は3千以上であることが追求される。
生きている魂はそこら辺にいる魔物を倒せば手に入れられると。でもこの魂は一人の人間が集めないと召喚できないらしい。生贄の魔力が3千以上ね。俺はターゲットになるってとこか。
「ルカさんってターゲットになりますか?」
「私はギリギリターゲットだ」
「俺はバリバリターゲットです。魔力表示がなくても自分で引き出してもいい魔力量がわかるのでそれでなんとなく多いんだろうなーっていうか、表示されなからターゲットにならないかもしれない」
「君は「探知」使えば魔力がイカれてるのはバレるよ」
「そうですよねーわかってました」
スケルトンドラゴンの召喚条件は、闇属性の魔石をばら撒くこと、10万のアンデッド化した魂を集めること、最低でも3メートル以上の魔石を準備すること、生贄、アンデッド化した人間。
なんで人間なんだろうね。アンデッド化した魂はアンデッドになった生き物を殺すことで手に入れられて、魂を入れる専用の箱を持っていれば勝手に入るらしい。
「これって条件的にはどっちが楽ですか?」
「そうだね〜闇属性の魔石をばら撒くことは同じだし、最低3メートルの魔石も同じ、生贄は魔王の方が簡単だね。魂は集める場所によるよね。グリュアーノならスケルトンドラゴンだろうけどねえ、他の普通の国だったらねえ魔王だよね」
「グリュアーノってどんな国なんですか?女神様にそれについては学園に行ってからではないと知ってはダメと言われました」
「竜馬くんって博識だったから知ってるのかと思った。まあ、確かにあそこの情報が載っている本はないよね。行ってみないとわかんないよね」
「はい、どこ探してもなかったです。一応六つの町巡って探したんですけどね」
「そうか、そこまでしたんだな。その国の本は売らないってのが商人のルールらしいよ。だから自分で作るしかないとか。私のそこまでしている余裕ないから作ってないな」
「ですよね」
「それで、他にも気になる情報がいくつかあったので整理していきたいのですが」
「ああ、私もいっぱいあった。ここの本なんて履歴書みたいのだから読むことないと思ってたんだけどね」
「俺も読むことなんてないと思ってました」
俺は気になったことを話した。本に書いてあったことなのだが、魔石を使うものがあったのだ。でも感覚はいらないと思って除外していたものだ。
魔物の襲撃、これは違和感のある魔石を使えば起きることだ。だから闇属性にしなくてもいいのではないかと思ったのだ。魔物の襲撃というのは沢山の魔物が一箇所を襲う襲撃イベントみたいなもので、以前襲われたのは中央だ。こんなに大規模に起こすには相当な量の魔石が必要だ。
ちなみにこれらの事件を片づけたのは異世界人だそうだ。みんな「ニホン」と言う国から来たと名乗っているものが多く名前が漢字だったそうだ。それにファミリーネームもあったそうだ。
今回の場合そろそろ異世界人が見つかんないとまずい状況だそうだ。最悪俺がいるが、転生者だとバレれば何があるかわからないので公表しないほうがいい。
もう一つは亡霊事件、幽霊、アンデッド系モンスターの大量発生だ。条件は闇属性魔石の5メートル級だった。これはもうアンデッド竜でも倒さない限り手に入らないね。魔石ばら撒く必要ないし……
こんなふうに似た情報もまあまああるから紛らわしいわけで…ああ!もう!ってなるわけだ。これでなんとか3分の1ってとこか、あと3.333333……倍だね。割り切れないね。と言うことでこれからも頑張ろう!と言いたいところだが疲労感が半端じゃないので睡眠に入ろうと思う。
「ルカさん?」
はもう寝てたので俺も1時間だけ睡眠してもう一回やります。あと、3.333333倍分
「おやすみ」
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