第21話 こんなところに転移させたの誰?

(ご主人様がが詠唱するなんて何事?)


(竜馬さんの魔法初めて見ます。剣に魔力を纏わせてるのしか見たことなかったので)


(息止めます)


 みんなの心の声だ。


 ありったけの魔力を込めて水を生成する。使った魔力量は俺の所持魔力の十分の一くらいかな?まあ、規格外な量の水が出てくるのは仕方ないよね。これだけ魔力込めれば……


ゴゴゴゴゴ


 魔術は成功した。あとは自分達の身を守るだけ!早くしないと…間に合わない、もういいやいつも通りゆっくりと発動させよう。


 どこにいるかわからない相手に魔法をかけるのは困難だ。いつもより発動時間が長くなっても仕方がない。


 こんなことを考えながら空気を発生させて結界にするために魔力を練っていたらサリナが溺れていた。言われてすぐに反応できなかったらしい。酸欠でヤバそう。


 やっと発動できた!これでみんな安全だ。


「ぐおおおお」


 は?なんでこいつ普通に叫んでんの?はあああああ!なんでこいつにも魔法かかってんの俺の馬鹿〜一部解除……よし、今度はうまくいった。火龍のみ解除できた。


「ぐお、ごぼぼぼぼ」


 うん溺れ死ね。体温低下と溺死であの世へgo!だいぶ水が引いてきた。これならなくなるのは時間の問題だな。そういや火龍ってS級モンスターじゃね?てことはさ、ここは誰も近寄らないと言われる。ブラックゾーンでは?俺たちやばい。ブラックゾーンに入ってしまった。


「水無くなった」


「えっと、よわ、てる」


「い、き、て、る」


「生きてるなぁ」


 魔法を解除して火龍を観察する。


「(もう許して、殺さないで!お願いこの先のお宝もあげるから)」


「「「「は?」」」」


「(どうゆうこと?とりあえずここは攻略ってことでいいのかな)」


「(うん、立派な攻略者だよ)」


 そう言って俺たちは奥の扉の中に案内された。そこには箱が一つあった。結構大きな箱だよな、俺よりおっきい。


「(この中身全部あげるよ。元々これは勇者が使ってたとされる武器なんだ)」


「(じゃあ、遠慮なく)」


 箱の蓋を開けると中には杖が2本に剣が一本、双剣一組が入っていた。


『私はこれ』


『私はこれ』


「えっと、どっちがいいですか?」


「じゃあ、双剣で」


「私は剣を貰います」


 これで攻略か、なんかあっけなかったな。


「ここから出て行っていいよ。ここは特別転移神だからすぐに地上さ」


今度はちゃんと人間語で話してくれた。俺たちはお礼を言って転移陣に入っていく。


「私の敵を倒してくれると嬉しいな」


 火龍がこんなことを言っていたことを俺たちはまだ知らない。


〈転移門に入って10分後〉


「これおかしくない?」


「なんか長いです」


『これどこかに向かってます』


『わかんないですけど』


 これは北方向に行ってるみたいだ。転移陣でこんなに歩かされるなんて現実ではどれだけ進んでるんだよ。これじゃあ外に出た時凍える未来しか見えないわ!


「一応これ着といて」


「俺が予備で持っていたコートを渡す」


『カナとサナは自分の体温は自分で管理できるか?』


『できます』


『大丈夫です』


これならどうにかなりそうだな。


「やっと外ですね」


「保温」


「あったかくなりました」


俺たちは外に出た。外はもう見事氷の国……誰だよこんなところに送ったの…


「グオおおおお」


 そしてまた龍のお出ましだったのだ。


 こんな寒いところでどうやって龍の体温下げんだよ!無理だろ!


 なんで〜こんなの聞いてないよ〜地上に返してあげるって……確かに地上に帰ってきたけれどこう言うことじゃなーい!こんなことになるなら俺、自分の足で帰ったのに……


「せっかく来たし、倒そう」


「で、倒すのって誰?」


「竜馬さん以外に戦える人がいないと思います」


『精神系の魔法は得意だけど、攻撃系の魔法は苦手です』


『私もできれば使いたくないです』


 と言うことは戦力がいない……あ、そういやあの剣はどんな効果がついてるんだろう?試してみるか。双剣、攻撃の重さではなく速さ、ね。俺には無理な話だ。速さは、速さだけは俺の専門外です。


「フォローお願い」


「了解です」


『ご主人様、守る』


 氷龍の顔目掛けて飛ぶ、竜の死角、背後に回れれば大成功だ。「身体強化」を使い、優位に戦闘が進められるようにする。四角にうまく入れた。素早く、無駄な動きをなくすように心がけて剣を振る。


 剣の属性は炎属性、こいつに相性抜群!これで魔法もプラスすれば……お、いい感じに魔力がこもるな。これなら安心して攻撃できそうだ。あんまりにも効かない武器なんてこっちはヒヤヒヤするからね。いやだよ?こっちは必死だ。こいつに殺されないように戦わなくちゃなんだから!お前らはいいよな!余計に耐久力があって、人間なんて弱すぎて刺されただけでコロッといっちゃうよ?


『みんなさっきの報酬の武器を使ってるから、少しずつ効いてきてる。大技で仕留めるよ』


 サナがそう言った途端二人が向かい合わせになり、杖にありったけの魔力をこめていく。俺と紗理奈は時を見計らって離れる。


 強大な魔力が一気に放出されていく。と言うかもう放出っていうよりビームみたいな感じだ。強大な力が放たれている。二人が放出するのと同時に龍の方もブレスを使っている。その為今は魔力で押し合っている状態だ。


『魔力が』


『限界です』


 そう言って二人は膝をついた。俺は二人に魔力を注げないか考えてた時だった。


『魔石を経由して魔力を分け与えては?』


 女神にそう言われた。今まで全然帰ってこなかった女神が帰ってきたのだ。しかも、いいアドバイスじゃないか!


 俺は早速大きめな魔石を二つ取り出し、カナとサナに魔力を吸わせながら俺も魔力を注いでいく。魔力の受受け渡しは困難な為誰もやろうとしない。第一効率が悪すぎてほとんど魔力供給できない。魔力供給するなら自分で魔法を撃ってもらったほうがマシだ。というレベル……


 でも魔石を使えばそのコストを考えずに魔力を渡せると言うことか!凄いな。


「頑張ってください!」


 あと少し、龍まで後10メートル、9メートル、8メートル、7メートル、6メートル、5メートル、4メートル、3メートル、2メートル、1メートル、これで終わりだ。


『いっけー!』


『届け!』


 これで終わるこれでやっと…俺たちは帰れる。


氷龍はまだ生きている。正確にはまだ脈があると言うところか?もうおしまいだ。


「人間よ。この宝と俺の体はわたす。だから、火龍にこう伝えてくれ、頼む」


「わかった。会った時はそう伝えとく」


「ありがとう。これで成仏できるな」


 そう言って氷龍は息を引き取った。この龍は優しいな。二人の関係は知らないけど仲良さそうだ。


「竜馬さん、中は装備だったようです」


 中身はペンダントや指輪、ピアスに腕輪、ネックレスなど様々だった。今回もいい冒険ができてよかった。でもこれは伝えないとな。宝探しの街にこんなモンスターいていいのかってね。これはこれで面白いけど、犠牲者の数が洒落にならん!ということだ。


 俺たちは転移門を再び潜り火龍のとこに戻ってきた。


 そして俺は伝言を伝えた。氷龍の伝言を、それは


「君のことが好きだったんだ。だけどもう無理だからせめて大切な優しい人と恵まれてほしい」


 だった。なんて優しい龍なんだろう。これ聞いて俺も最初泣きそうになった。目の前の龍は俺たちの事を忘れて泣きじゃくっている。これは当分帰れないな…


俺たちは泣きじゃくっている龍を置いてけぼりにしたのはまた別のお話。



 龍を倒した後俺たちは家に帰って休息をとっていた。俺は1時間睡眠をし、出された課題をやる。正直なところこんなに睡眠時間が短いと子供の体ではすぐに限界を迎えるだろう。限界を迎える前に課題を終わらせたい。ずっと夜中からやり続けて終わったのは3冊この問題集は難しいから進みが悪い……計算は大して問題ないんだけど文章題が難しくてさ


 紗理奈はメイドの部屋にいる。仕事の始まりは早いから起床時間よりも早く起きていかなくてはいけないらしい。で、快斗は置いて行ったのがとても気に食わなかったらしく拗ねられてしまった。帰ってきてからずっと独り言を言っている。言ってる内容は聞こえないけど、ずっとこの調子だ。まあ、拗ね方が可愛いよね。


 部屋に魔物がいるうちなんてないだろうし、これはこれで楽しいよね。レアな快斗も見れたしね。


 そろそろ朝食の時間前だから帰ってきてもいいはずだ。だけどいくら待っても紗理奈は帰ってこない。なんでだろう?


 お母様に取られたかもしれないと思った俺は「探知」を使ってみた。だけど屋敷の中に聖属性の強い紗理奈の魔力反応がない。どうして?そういえばお母様の反応もない。取られた?


 「探知」範囲を広げていく。すると隣町に入るところに二人の反応があった。何か手紙とかが置いてないか扉の前を見ると目には紙が落ちていた。そこには文字が書いてあった。まだ文字を書くのになれてない感じの字だから紗理奈の字だろうか?初めてにしては上手にできていると思う。


手紙の内容は『奥様が遠くに行くからついてきなさいって言われてので3日くらい開けます』


 だそうです。てことで俺はもう冒険者として明け暮れていいわけですね。では行ってきます。紗理奈は俺の専属メイドなのに、これはこれからもお母様に紗理奈をとれれるんだろうな。


 服を戦闘服に着替え窓から外に出て森に向かう。この森は危ないからあまり入らない。魔物もそれなりに強いが、数が多くて帰らぬ人になることが多いからだ。でも俺ならなんとかできなくないから稼ぐにはいい場所だ。これを大量にギルドに売りつければいいだろう。中には高級な素材もあったりするからな。


 そう言えばローレシアどこ行ったんだろ?さっきいたよね?声かけてみるか?


『シア、いる?』


 返事がない……


魔力が足んないです。(ローレシア)


 まあいっか魔力切れって言ってたから、全回復したら戻ってくるだろう。


 えっとじゃあまずは俺の魔力に寄ってきた魔物から倒してくか。まずはナイフで暴れよう!俺の得意な武器って言われてもピンとこないんだよね。一番好きなのはナイフかな。間合いは狭いけど戦いやすい気がする。次は双剣これも間合いが狭いけど沢山攻撃が与えられると言うとっても優れてる武器だと思う。片手剣長くてこの身長じゃ扱えないんだよね。かと言ってずっと飛んでるわけにもいかないし、一人ならいいんだけどね1発で仕留められるから楽だし。


「ぐああああ」


「ゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ」


 こんな感じでいろんな魔物が寄ってきてるんだよね。今回は、オーク、オーガ、キメラ、レッドバイソン、ブルーバードなど沢山の生き物たちがやってきてくださるんです。嬉しくないですけど。


 俺なんかに寄ってきて何が楽しいんだよ!お前らに利益ないだろ!俺魔物に好かれても嬉しくない好かれるなら人間がいい。社交界のこともあるから人間に好かれたほうがうれしい。


なるべく外傷を少なく倒せるように頑張る。


「ぐわっ、うっ」


「ぎゃー」


 いやーしかし魔物なのに人間みたいな声出すよね。なんかこれすごく怖い。どうやって出してるんだろう?魔物なのに、あっ、そうか魔物も人間と同じ部類だから出そうと思えば出るのか。


 と言うよくわかんない妄想論で片付けた。


 魔物は次々に倒されていく。早く倒して早く売って紗理奈の監視しなくちゃ!紗理奈のではないか。お母様のだな。


 俺はそろそろいいかとギルドのギルド長室に直接転移した。


「ぎゃー」


「ルカさん!きましたよ」


「今度はなんだ。言ってみろ」


「では遠慮なく!」


「ちょっとは遠慮しろよ」


「これを買い取ってください」


「お前のおかげでギルドは金持ちになるな」


 そう言いながらめんどくさそうに鑑定していくルカさん、本当にめんどくさそうだ。


 鑑定を終え、お金をもらった俺は追跡を開始した。これで数日分の生活費は大丈夫だな。魔物を狩ったのは追いかけてついていけるようにだ。


 追跡開始!

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