第18話 夜の依頼


 今日は珍しく起床時間になるまで家にいた。普段はもう外に出ているところだけど、昨夜の手紙に会議があるからこいと言う手紙があったから。これは当主命令で断れない。と言う旨も書かれていたので変に反抗したりはしないことにした時刻は朝食の時間、もうすぐだ。部屋に移動しようか。


「隠蔽」


「転移」


 廊下まで「転移」し、そこからは自分の足で歩く。紗理奈との待ち合わせ時間は3度目の鐘だ。時間はいっぱいある。


「失礼します」


「アルフ、来たか」


 俺は急いで「隠蔽」を解除し、部屋に入る。


「元気そうだな」


「はい」


「では、今回この会議を開いた理由は領内で異常な魔石が見つかったから闇属性の魔石だ。魔族または魔物の上位種のものしか魔属性の魔石は持つことができない。だが、ここ最近上位種発見報告は受けていない。これについての情報が欲しい」


「アルフ、お前は何か知らないか?最近、森に行っているだろ?」


 え?俺逃げ場ないじゃん?へ?もう逃げらんないじゃん!


「知っています」


「言ってみろ」


「闇属性の魔石、それは一定の間隔で置かれています。どんな基準になっているのか知らないけど大体数十キロくらいは離れています。そしてその魔石は、人間の手によって加工されている。その為我々が魔石に魔力を注ごうとすると反発を受けます。これで知っていることは全部です」


「お前はその魔石を持っているのか?」


 これはそう答えたら良いやら。悩む〜


「持っていません。ただ、触ったことはあります」


「そうか」


 お父様は安心したように言った。


「その魔石を見つけた場合は領主の館へ持ってくるように指示してください。それとこれは憶測ですが、人工的に闇属性持ちの魔物を召喚しようとしているのではないかと思います。これは童話と同じような状態です。魔石の配置が終わっていると言うことはもう次の段階に進めると言うことです。警戒度を高めてください。俺は外で情報集めます」


 そう言ってすぐに魔法を発動させた。これでバレずに抜け出せる。


〈アルフが抜けた後〉


「他にも有益な情報や危険な情報を持っていそうです。記憶を除く魔法を使ったのですが、弾かれました。それとアルフの魔力の質が変わっていました」


「あのピアスはなんだ?魔道具ではないがあんなものいつから付け出した」


 ガルアークとレティートゥアはアルフの変わったところを上げていたのだ。


 魔力の質が違う。ピアスをつけていた。自分の子の違い用に驚いていた。まだまだ情報を持っていそうなところからして何かの組織に入っているか、自分で情報を得ているか。前者はあり得ても後者はないだろうと考えていたが、実際は後者だ。組織で情報をもらったわけではないのだから。


 今の状態のアルフを見て、しばらくこのままにしてみようという結論に至った。ただ引きこもっているわけではないとなればこちら(社交界)に戻す必要はないだろう。しばらくは貴族という醜い存在から離れても問題ない。恥をかかない程度には教育してある。最悪学園に通ってくれればもう貴族としては問題ない。実際社交界にあまり出ない人もいるから。


 ただ、アルフが何か凄い事をして貴族にならないという保証はない。その為には次男も次期領主教育をしなくてはならない。


 入学までに解かなくてはならない問題集を買ってそれを書類の代わりにやらせるのがいいと言う話になったのできっと今日の夜から問題集が沢山置かれていることだろう。


 この頃アルフはもう冒険者ギルドでルカに会っていた。


「ルカさん、俺パーティーに入れました。紗理奈さんと二人のパーティーだけど」


「あの子か〜あの子めちゃくちゃ優しい子だろ。たまに口悪いけど」


「はい、とってもいい子です」


「そりゃよかったな、お前の将来の嫁か?」


「それは家で決められちゃうと思いますよ」


「そうか、じゃあお前が当主になれば?」


「ずいぶん先の話ですね」


「いや、功績上げれば貴族になれるだろ」


「もっと先になりそうですね」


「お前さ、ある意味運いいよな。魔物に好かれてて羨ましいぜ!と、言うことで出世できるぞ」


「嬉しいのか悲しいのか…」


 そう言いながら作業をしている。作業名は素材解体……地味に内臓とか内臓とか内臓とか所望してくる研究所がありまして、皮はいらないと意味わかんねー自分で剥げっつー話だよな。で、そんな俺に付き合ってくれているのがルカさんってこと、もうルカさんってお人好しすぎだよー。ま、俺は助かってるんだけど。


 今日の依頼もゴブリンか…違うの受けないか聞いてみよう。紗理奈は自分の評価がめちゃくちゃ低い…周りからこの子凄いって言われているのに、私はそんな強くないから、みんなと一緒にいたら私だけついていけないよって言うんだよ。めちゃくちゃ強いのに〜


 で、それを理解させるのはもう無理だと諦めたのだ。


 もうそろそろでお昼なのにおわんない。紗理奈には快斗が知らせに行ってくれた。手紙を持たせてあるから快斗の言葉の意味がわかんなくても大丈夫なはず…最悪ここに連れてきてって言ってあるから


 俺はこの作業をしばらく続けたのだ。紗理奈が来たらルカさんは二人の時間を楽しんで〜とか言ってどっか行っちゃうし、でも紗理奈も優しいから手伝ってくれた。しかも慰めてくれたんだよ。俺がこんなのやだって言ったら後少しだからって、優しい〜


 今日は依頼受けられないかと思ったら紗理奈が夜の依頼受けてみたいと言って夜の依頼を受けた。夜限定の幽霊退治とかが主かな?俺たちは訳あり物件の浄化を受けた。これは聖属性の魔法が使えれば受けられる依頼だ。


 じゃあ、屋敷に向かってレッツゴー。


 俺たちは今依頼の屋敷にいた。屋敷の前にいたのは騎士のみ。多分持ち主から門番だけでいいからしろと言われているんだろう。


「こんばんは、依頼を受けてきたのですが」


「あ、ありがとうございます早く浄化してください。もう心臓が持ちません」


「俺たちは何をすればいいですか?」


 そう言うとその人はゆっくりと話してくれた。屋敷を買ってすぐのこと、主人の安全を確認するために屋敷の中を確認していたらしい。その時、屋根裏部屋に血まみれの女の人がいたと言う。その人は多分自害した人だと思う。メイドの服を着ている使用人だ。地下室には処刑された人であろう霊がたくさんいたらしい。みんな血にまみれて無残な姿になっていた。この人たちは全員メイドや執事の服を着ていたと言う。


 あれで聞いていた紗理奈は恐怖からか顔が真っ青だった。そんな紗理奈を見て俺は耐えられなくなり、外で待っていても良いと告げたが紗理奈は自分が誘ったのだから行くと言った。


 もしものことがあれば逃げてと言い、俺は屋敷にはいっていく。紗理奈は俺の手にしがみつきながら歩いている。手を繋ぐだけじゃ足りないみたいだから。


 明日は屋根裏部屋から行くことにした。ここの屋敷の地図はもうもらっているので迷う事はないだろう。聞いた感じからして屋根裏部屋にいるのは1人地下室にいるのは複数人だ。ウォーミングアップのためにまずは屋根裏部屋から行こう。早く行って帰りたい。


 カッコつけて怖がっていないふりをしているが実際超怖い。俺が怖がっていたら紗理奈がもっと怖がる。


「紗理奈大丈夫か?」


「竜馬がいれば大丈夫」


 俺は屋根裏部屋に早くつかないかと思っていた。この屋敷は無駄にでかい。もとはすごくお金持ちな人が住んでいたのだろう。中の家具や絵はとても高価な物だった。それ1枚で家が立つほどだよ。この屋敷の元の持ち主はおかしい。こんなに金かけられるなんてそれこそ王族とかじゃないと……そういや、王族は離れに自分の家を建てるんだっけ?て事は王族の屋敷だったりする?


 屋根裏部屋の扉を開ける俺は開けると同時に聖魔法を発動させる。いた、そいつに向かって放つ。モロに食らってる。これならと思った時……


「ちびに浄化されたくない!それならご主人様に遊ばれる方がマシだ!」


 そう言って逃げ出した。俺は魔法を放ちながら紗理奈と追いかけた。その幽霊はなかなかに手ごわく浄化されてくれない。俺たちはしばらくの間この幽霊と追いかけっこをする羽目になったのだ。


 もう最後諦めかけた時、自分の願いを聞いてくれるならと止まってくれた。


「願いって何」


「私に綺麗な格好をさせて」


「紗理奈、俺もいるから化粧とかできる?」


「やったことはある」


「お願い!俺男だからできない」


 こうして俺たちは幽霊におめかしする羽目になった。まぁ、これもいい思い出になるだろう。そうゆうことにしてないとこんなことできない。


「竜馬君はきちゃダメです」


「俺、いない方がいい?」


「女性が着替えるのに男性がいていいわけないでしょう!」


 幽霊なのに…いても良くない?俺、今日一番役に立ってないよ。次に部屋に入った時はもう幽霊はいなかった。綺麗になれて満足して成仏したそうだ。そして俺は、帰って説教決定だと言われた。


 多分説教はされない。


 次は地下室だな。地下室には複数の幽霊がいるとみられる。そのため念入りな準備をしてから行こうと思う。地下室の地図を見る限り地下室全体がすべて牢屋だと思う。実際に地下室に入ってみるとそこにはうじゃうじゃと幽霊がいた。それは全て拷問器具で締め付けられてような跡がついていた。これは多分主人が拷問趣味だったのだと思う。なんともかわいそうな使用人たち。


 俺は安らかに眠れるように聖魔法をかける。苦手だけどできれば便利だな。


 これで俺はやっと屋敷から出られる。紗理奈はさっさと部屋を出ようとしているがなかなか出ない。そうしたのだろう。


「扉が開かない」


「は?」


 俺はチラッと見えたきっとここの主人だと思われる霊がいるのを…身の危険を感じた俺は咄嗟に紗理奈を抱き抱え転移した。


「紗理奈、転移するぞ」


「え?」


 俺たちは門の前に戻ってきた。騎士の方達はいなかった。いや、正確に言うと死んでいた。なぜ?もしやあれか?


 そんなことを考えてられるのも束の間、あの幽霊が襲ってきたのだ。


 もうダメかもしれない。紗理奈を守りながらの戦闘は…


『俺たちがいます』


『『私たちもです』』


『『『紗理奈さんは俺(私)が守ります!』』』


『頼んだ!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る