第16話 海水浴
「ちょっと海に寄って行きません?海に入りたいですわ」
窓からいきなり顔を出したと思ったら、いきなり海水浴なんてできると思っているのか。護衛が浜辺でヒヤヒヤしながら待っているって言うのにお前は楽しむというのか。
「奥様それは…」
「じゃあ、当主命令です」
「了解です」
お前はバカかー護衛のことわ考えろ!そんなことを考えていると騎士が声をかけてきた。
「君は海に入って魔物狩りをお願いしたいのだが、いいかな?」
これさ、俺に対しての気遣いだよね。完全に子供扱いしている。ま、これはこれで楽しいか。ここはお言葉に甘えて…
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「お願いね」
「わかりました」
社交の場と同じ言動をしてしまった。気を抜いたらいつもこうだ。貴族としての振る舞いを、常時行うために、訓練していた。そのツケが回ってきたらしい。冒険者としてはいらないものかな。この姿の時は感情も何もないから普通に喋れるな。ストレスが溜まるかもしれないが…不眠症になってまで治そうとは思わないけど。
「聞いちゃいけないかもしれないけど、君って貴族の出じゃない?それもちゃんと教育を受けている長男や次男のようだ」
「違う、俺はあくまで移民の子。ちゃんと作法を教えられたけど使うことはないと思う」
動揺しそうだ。でも今までと同じ喋り方じゃないと確信を持たれてしまう。感情をうまく制御していられるのも束の間だ。なるべく自然に見えるように…
「移民の子?そうか、名前もリュウマだもんな。と言うことは、漢字で書く方の竜真かな」
「そう」
俺はそう言って、ギルド長にもらった偽造カードを取り出した。それを渡せば納得してくれたようだ。流石にカードを偽造している事は疑っていないらしい。
「ありがとう」
そう言ってカードを返してくれた。
「海」
そう呟いた。この世界で初めてみる海はとても綺麗だった。まだ年齢が年齢だから家では海に行ったことがない。近いからいけないことはなかったが、いく気になれなかった。なんでだかわからない、でも嫌な感じのする海なんだ。
「じゃあ魔物狩りよろしく、濡れても服なら簡単なの買ってくるから」
「服は濡らさないから大丈夫」
「無理じゃないかな」
「無理だったら言わない」
そう言って俺は高さ10メートルほどの崖から飛び降りそのまま海に飛び込んだ。深さは結構あるみたいで、大型の生き物もウヨウヨしている。ちなみに俺は空気の膜で体を覆っているから濡れない。近くにいる魔物を片っ端から片付けていく。ナイフを刺したり、投げナイフを投げたり、色々な方法で倒していく。契約したみんなと話しながら。
『竜馬さん泳げるんですか。すげーです』
『私たちも泳ぎたい。夜なら泳げるかな』
『今日は無理よ。ご主人様がお仕事』
いつの間にか元気になっていたらしいお姉さんは会話に参加していた。名前は姉がカナで妹がサナだそうだ。声も容姿もそっくり!俺、たまに間違えて怒られるもん!快斗は溺れるから陸で待機!
海に多かったのは貝かな。1センチくらいのから1メートルくらいのまで沢山あった。それは全て「アイテムボックス」にイン!中でカナとサナが売れるのと売れないのを分けてくれている。ありがたやー
俺はなるべく早く狩って中に入れる。何でもかんでも中に入れる。どうせ全部持って帰るから同じだ。中に入っているのがグチャグチャかそうでないかの違いだけだ。結構違うけどね……出すのが楽かな。
海は動きやすい。元々運動神経はいいから、いろんなことに対応可能だ。この体は便利だね。身分以外…身分ってさめんどくさいと思わない?俺は一応貴族なのに仲間はずれだ。平民ならそういうことなかったのかね。でも、親には恵まれている。そこはそこだけは否定しない。実際いい人そうだし。
潜ってからだいぶ経った。呼吸とかいらないからいつまでもいける。まあそろそろ上がるか。俺は岸に向かって泳いだ。護衛対象は遊んでいる。波が強くなってきたな。大丈夫か?
「キャー」
「助けろ!誰か泳げないか」
しょうがない行くか。
「転移」
俺は護衛対象を生かしておけば報酬は貰える、まあ俺が助けないと誰もいかないよね。騎士が泳ぐって想像できないもん。
護衛対象を抱えて岸の近くまで転移し、そのまま上がった。俺はもう嫌だ。疲れた、ワガママ姫なんて嫌いだ!
俺がげっそりとした顔で帰ってきたら、声をかけられた。
「我が主君をありがとうございます。このお礼は必ず」
「当たり前のことをしただけ」
そう言って俺はナイフを研ぐ為に水、桶、研ぎ石を出した。これは俺が適当に側仕えに用意させた剣管理セットだ。まあ、高いんだろうけど。
だいぶ切れ味が悪くなっていた。昨日も今日も結構使ったからだろう。ナイフの替えは早めに準備しておかないとだな。いくところが増えた。雑貨屋に武器屋に防具屋……ため息が絶えない。疲れた〜子供の体どうなってんだ。体力少なすぎ!
時刻は夕方もう今日の移動は諦めたほうがよさそうだ。任務期間が増えた〜もういや!
『ご主人様元気を出してください私達とお酒飲みますか?』
『私もご主人様の癒しになります』
『未成年はお酒飲めないんだ。だってこの体だよ。そんなに大きく見える?実際5歳だし』
『秘密で』
『バレるに決まってるでしょ!』
俺は酒、酒というカナとサナを諌めながらナイフを研いでいた。だいぶ遂げたから切れ味の確認だな。自分の手にナイフを押し当てる。綺麗に切れた。これなら戦闘で困ることないだろう。
「この後はどうする」
「ああ、魚って少しもらえるか?大きめの一匹でいい」
「わかった」
そう言って良さそうな魚を「アイテムボックス」から出した。勿論俺に渡したのはカナかサナだが……
こうして俺たちは魚を焼いて食べ、夜に移動することが決まったのだった。もうこの女には構わない!どこか寄りたいって言ったら危険だからって言い張ってやる!
こうして夜の移動は始まったのだ。俺は家に帰って書類を消費しに行ったのは言うまでもなく。テヘッ、こんな笑い方したことなかったな。ははははは
夜は問題なく終わった。そしてやっと朝になった。朝日が眩しい、俺は基本的に陽の光に当たらない。大体の時間は森とか洞窟とかローブとかで覆われててでも今日はローブを脱いでいる。今着ているのはベルトがないと落ちてくる不便なズボンとYシャツだ。
不便なズボンは「アイテムボックス」をあさっていたら出てきたんだけど着替えなければよかったと後悔した。まあ、俺は歩いてないから邪魔ではないけど…
「君、その服で戦闘してたの?動きづらそうだけど」
「昨日は普通のズボンにYシャツだった」
「いや、それでも動きづらいでしょ」
「気にしない」
「そうか?この後街に行くんだけど、そこで戦闘服買ったら?あと、魔物の素材を換金してもらったり」
「今持ってるのは30000ゴールドなんだけど買える?」
「3万ゴールド!どれだけ高級な服が買えることやら、というか、全部君が稼いだの?」
「そ、そうだけど」
「うわお、やっぱり天才君は違うね」
なんか俺はずれてるのか?
(ズレてます、バリバリズレてますよ)
ん?今なんか言った?
『なんか喋った?』
『喋ってないです』
『喋ってません』
『誰も喋ってないと思います』
『気のせいか』
『きっとそうだと思います』
さっきの声は誰も喋ってないわけではないのだが、この時の俺たちには知る術もなかった。
次に街に着くのは3時間後といったところか。時間かかるね〜街で遅めのお昼がちょうどいい感じだ。まあ、みんなもそう考えてるだろう。ずっと歩いてる騎士を除いて…
ちなみに睡眠は順番に取っていた。俺は家で寝たけど。抜け出して「幻術」を使い続けるのは困難だったけど結果オーライかな。
俺の睡眠時間は快斗の上で取ることになっていたので、気を使われることもなかった。俺が寝てても戦闘時以外問題ないからかな。
護衛対象は貴族、暗殺者がつけていてもおかしくない。実際もう襲ってきている。俺がちゃんと跳ね返しているけどおかしな道具を持っている人がいる。この世界は、飛び道具がない筈なのに…持っている人がいるのだ。その武器の名はライフル、銃だ。銃撃は早いから切るのは大変だが1発ならよく見て剣を振れば大丈夫だ。3発の時は流石にきつかった。
最初の一発を縦に切り、2発目は投げナイフで速度を落としてから手で掴み、3発目は剣で縦に切った。銃の弾を見たが、竜真の時に研究した銃そのまんまだった。弾の大きさは6mm(.243”)口径 243Winthester.って言うのだと思う。合ってるか分かんないけど多分、前世でお店に行ってこう言ったら買えたと思ったな。これ全部言わなくても買えたかもしんないけど…
ライフルでは一番小さい玉のサイズ…暗殺を狙うならこれがいいだろうな。気づかれにくい、気づかれてるけど…俺だから気づいちゃっただけか!
て言う感じで暗殺ギルドに入ってる。ちょー高レベルなのがいるってこと。最悪だよね。俺今護衛任務中なんだけど。これからお買い物なんだけど!
暗殺に気をつけながら進めば街はもう黙然!普通に通過できればOKだ。多分ギルドカードを見せればすんなり通れる。
例のお嬢さんには「魔力壁」をかけておく。これで安心だ。
「えっと、戦闘服買いに行こうか」
「うん、頼む」
そう言って俺たちは服屋と防具屋に向かった。
服屋でズボンと緩いシャツを買った。この上にコートのようなものを羽織ればいいらしい。防具屋でロングコートを買った。ロングコートを買った理由は足が見えない方が戦闘する時に動きが読まれづらいから。
「オススメの武器屋にも行けるか?」
「そうだな、思ったよりずいぶん早く終わったから武器屋にも行ってみるか」
そう言って俺は武器屋に連れて行ってもらうことになった。防具屋を出た瞬間から跡をつけられている。なぜだか分からないが、俺が貴族だとバレていない限りこんなことはないはずだ。
武器屋についた俺はナイフを漁っていた。装飾が付いている飾りのナイフや、戦闘で使う実戦重視のナイフまで沢山あった。
俺はその中で釘型の手裏剣と隠し持ちのできる重めのナイフ、ソードベルトに手裏剣の持ち運びが楽なケースを買った。これで戦闘が楽になるといいな。ソードベルトは大きさの調節が可能だから大きくなってもしばらく使えるという便利アイテム。手裏剣のケースも大きさ変更自由自在便利だね〜
「他に行く場所はない?」
「平気」
「じゃあ、馬車に帰ろうか」
その時突然大きな音がした。それと同時に例の女に仕掛けておいた「魔力壁」が発動した。何が起きているんだ。多分今の爆発で護衛は死んだと考えていい。一応快斗は馬車にいる為動けない。カナとサナは今俺といるし朝だから動けない。やるしかないか。
「護衛対象が狙われた。俺の仕掛けておいた魔法が発動したからそいつは生きている。今は時間がないから走るぞ」
俺はそう言って身体強化を施し、全速力で走った。後ろのは荷物みたいに宙に浮いて引き摺られている。後少しだ。もう見える。
騎士は全滅していた。ダメだったか。
護衛対象と向き合ってるのは黒尽くめの男だった。こいつは確か懸賞金のかかった暗殺者じゃないか!王族を殺したことで有名な、確か名前はゴンド!
こいつは確か火属性と闇属性の持ち主だ。という事は俺は水で戦えばいいと言うことかな?何を使ってくるかわからない以上対策を立てようがない。仕方ないから剣ゴリ押しでやるしかない。
なっこいつ銃持ってる。と言うことは「物理結界」を使って防げばいいか。最悪「アイテムボックス」にぶち込むぞ。
「ゴンドだよな」
「そうだ俺がゴンドだ」
「竜馬やめろ!いくな」
俺は静止する騎士を無視して近寄っていく。こいつの持っている武器がいくつあるのか分からないからあまり近づきたくないのが本音だが俺はバリバリの近接近づかなければ始まらない。
「バァン」
銃を使ったな。この距離では魔法より剣で切った方が早い。鞘から取り足すと同時に弾を弾く。今度はわざと切らなかった。銃弾はいい報告になるから。
この弾はあまり警戒しないでおこう。そのうち弾が切れる。弾がなくなったら俺も勝ちだ。飛び道具を使うんだったら俺の飛び道具を使う。魔力の糸を使いナイフを操る。投げてもう帰ってこないと思ったのだろう。後ろが隙間見れた。俺は右肩に目がけてナイフを操る。ナイフはちゃんと刺さった。だがあんまり気にしてない様子。俺が子供だからって油断しているのだろうか。それなら綺麗に切ってやるよ。
「身体強化」
「魔眼」
俺が出せる最大級のスピードで後ろをとり切り刻んでいく。背中には綺麗に俺の名前が漢字で書かれていた。傷跡は残るだろう。こいつには反撃の余地は与えないさ。前世で人間を恨んでいた俺は、対人戦が得意だったりする。気持ちの問題なんだよ戦闘って…
「はあ」
俺は上から大きな岩を落とした。勿論魔法で作った大きなの。これで流石に犯人も気絶した。それを俺は拘束し警備に渡す。後でギルドから報酬が出ると言われた。今まで逃げ回っていた犯人だもんな。
これで街は安泰安泰!
「早く屋敷へ行ってしまったほうがよさそうね。」
そう言って護衛対象は馬車へ戻り、そこから30分くらいの豪邸で止まった。俺は報酬を貰い。帰りにまた連絡するからこいと言われた。騎士にはまだ、暗殺者が跡をつけてるから気をつけてと言っておいたから大丈夫だろう。
これで俺は第一回の護衛任務が終わったのだった。あとはギルドに行って、報告するだけだ。次の依頼は早くても2ヶ月後だそうだ。俺はそれまで気楽に過ごさせてもらうとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます