第14話 鬼ごっこの終わりと真夜中の狩

俺たちは無事にキャンプ場に戻っていた。


「魔力の調節は自分でやれ。人が見るもんじゃない」


「すみません。今度から気をつけます」


「ん」


「じゃあ俺は行ってくる」


「はい?どこへ」


「言っただろう。俺に護衛として監視を入れようとしたじゃないか。まさか覚えてないのか?」


「いや、覚えてます」


 俺は快斗と共に真夜中の狩の準備をしに行った。あと、「アイテムボックス」の時間が止まっている中身もどうにかしないとな。血抜きが終わっていない。


『快斗〜めんどくさい血抜きを2回に分けてやるか、一回でまとめてやるかどっちがいい?』


『俺は2回に分ける方をお勧めしますね。血抜きした血を使って、魔物を呼び寄せればいいんじゃないっすか?』


『すげ〜そんな事思いつかなかった』


『えっへん、これでもウルフですから』


 うん、うん機嫌は大丈夫そうだ。いい戦力になってくれよ。血を使うってことは、森の中にいる魔物が一気に集まって来るようなもんだ。不意打ちをされる可能性が上がる。誰だって後ろを取られれば戦闘態勢が崩れる。そうなれば俺たちは魔物の美味しいご飯になってしまう。ご飯にはなりたくない。


 じゃあこの辺でいいかな。血抜きの準備しないと…俺は木にのぼり、魔物を「アイテムボックス」から出して木につるさげていく。木につるさげたら木から降り、ナイフを使って首を落とす。ことはできなかった。なぜなら身長が小さくて首まで手が届かなかったから。今度は快斗に乗ってチャレンジしてみた。そしたらちゃんと届いた。今度から木の高さも選ばないとな。前世の体だったら余裕でとどいていただろう。


 俺は今まで買った動物や食べたことのある魔物の血抜きをした。これは家族へのお土産でいいかな。俺が持ってきたとバレないようにすれば良いだけだし。これで食事代が浮くだろう。まあ、決して貧乏ではないので食料がないということはないだろう。


『これで魔物が寄ってくるはず』


『そうっすね。もう寄ってきてますね』


 これで魔物を狩ればお金が入る。処理済み肉は氷漬けにして「アイテムボックス」に入れてある。その為、肉が食われることはないので安心して魔物狩りができる。


 早速やってきたのはオークとオーガ…猪と鬼ね。何効くんだろう?まあ適当に行き当たりばったりで大丈夫かな。今まで読んできた本には基本的なことが載っていなかったらしい。知らない。


 オークは毛が生えてるから剣に炎を纏わせれば燃えるかな。しばらく動くかもしれないけど避ければOKかな。鬼ねー大豆しか思いつかないな。前世じゃオーガなんて戦った事ないしね。どうしていいかわかんない。俺さ、剣ゴリ押しなんだよね。なんかもう剣でいっか、って感じだし…正直魔法って敵性とかあってめんどくさいんだよね。使えるに越したことはないんだけど。じゃあ倒しまーす。


 最初はオークから。剣に炎を纏わせて切っていく。まあ効いてないことは無いけどめちゃくちゃ効いてるわけでもない、か。まあ平気かな?


「うぇ!」


 平気じゃない、平気じゃない。挟み撃ちされてる!これは敢えて突っ込んでいくのがいいだろう。足を狙って剣を振る。切断された所が直るほど上位の魔物じゃないから突破可能だ。その時、様子を伺っていた快斗が参戦、俺は後ろを任せることにした。


『快斗、後ろは任せた。魔力は自由に使え!』


『了解!』


 海斗も参戦して戦闘がだいぶ楽になった。後はひたすら剣を振り続ければいいんだ。オークはこれでラスト、オーガは残り7だ。そして魔物は増えている。どんどん増えている。ミタノウロスさんとキメラさん、いつの間にか森の景色が変わっていることからトレントもいると考えられる。多い……


 俺は剣からナイフに切り替えた。両手で使える為攻撃速度が上がる。これは貴族として恥をかかない程度しか使えないが、片手剣よりマシだろう。なぜなら体が小さいから剣だと戦いづらい。まあこれが10歳くらいになると別なんだけどね。この話は一旦終わり、戦闘に集中しなくちゃ。


「はあ」


 俺はナイフにしては重めな物を使っている。そのナイフを使えばだいぶ致命傷を与えることができる。まあ、首や胴じゃなきゃ切断可能な位の重さかな。


 なるべく早くナイフを振る。魔眼を使えばHPが分かる。HPってさ人に見せちゃいけないものだからさあんまり気は進まないけど、魔物だからいいかなって思ったんだよね。死んでるのに攻撃したら可哀想じゃん。


 こんな風に魔物を倒していくうちに新しくやってきた魔物も残り4匹ずつ、もう属性とか相性とか考えないで倒し続けたせいか魔物の数の減りはまあまあだったけど、楽しかったな。残りの魔物も早く狩って仮眠を取ろう。


『竜馬さん離れてください!』


『わかった』


 そう返事をし、後ろに飛んだ。その時ガッツリ魔力が削れた。何かやったらしいが煙で見えない。多分高速移動か何かだと思う。


 煙が消えたと思ったら、魔物が全部やられていた。これはすごい。快斗にはいっぱい褒めてやらんとな。


『快斗すごい』


『えへへ』


 魔物でもこんな声でんだ。俺は地面に横たわっている魔物たちを「アイテムボックス」に入れ、帰ることにした。


『快斗、1時間の仮眠を取りに家に帰るぞ、野宿じゃ眠れないだろうし』


『俺は寝れますよ』


 寝れるんかい。でも見張り役が必要になると休憩時間が多くなって狩の時間が…という事で、一旦家に帰ろう。


『休憩時間が増えると狩の時間が少なくなる、だから家で寝る』


『はいっす』


「転移」


 俺たちは家で仮眠をとり、その後も魔物討伐と狩を楽しんだ。


 魔物と動物をある程度狩終えた俺は異常な魔力反応、例の闇属性魔石を探すことに全力を注いだ。「探知」では魔石の異常な魔力反応を探すのは難しい。魔力を感じることはできるけど、属性まで分かんない。変とかなんか違和感あるとか分かっただけじゃ闇属性の魔石かどうかなんてはっきりしないし……魔石を探すのは魔法に頼ることが出来ないと考えて良いだろう。まあ魔法構築すればいい話なんだけどね。そう簡単に作れたら苦労しない。あとは魔物である快斗に頼むのがいいだろうか?同じ仲間として見つけられないか聞いてみればいい。


『闇属性の魔石ってこの森にある?』


『えっと、魔石はないですけど吸血鬼ならいますよ。どうせならもっと強くなってから倒したいですけど、捕獲しといたらどうでしょう?』


『はあ?』


『ローレシア戻ってきたんだな』


『そんなことしてどうするつもり?吸血鬼なんだから火の光の下歩けないでしょ!』


『アイテムボックスに入れる。ちゃんと檻に入れて』


『いいけど、ちゃんと仲間にするんだよ』


『わかってるって』


 じゃ、早速しゅっぱーつ


『案内よろしく』


『分かりました』


 快斗口調変わったな。まあ、気分転換だろう。前の口調も良かったんだけどな。てか、こんな話し方できたんだ?


 全力疾走でおよそ20分程走ったところに大きな洞窟があった。その洞窟は確かに魔力反応が大きかったけど、オークやオーガ、キメラとなんら変わりはなかった。


 俺たちは緊張感からか無言で洞窟の中に入っていく。吸血鬼とはアンデッドの中の王と呼ばれる存在、これは前世と変わらないみたいだ。仲間になってくれるといいな。


 少し洞窟を進んだところに少し開けた場所がある。そこに魔力反応が二つ、一つは生きていて一つは今にも死にそうなくらいに弱っていると思う。気づかれないように音を立てないように物陰に隠れる。暗くて何にも見えない、なんかいい魔法ないのか?そういや…


「暗視」


成功?お、成功だ。


『竜馬さんこれなんすか?凄く見やすくなった』


『ここ出たら教えてやる』


 二つの魔力反応は二人の吸血鬼だったみたいだ。今にも死にそうな方大丈夫じゃなさそうだ。そう思った時には声を掛けていた。


「(大丈夫?なんでこんなところに子供だけでいるの?)」


「(人間?なんで私たちの言葉がわかるの?)」


「(なんか分かった)」


「(そう、お母さんが死んじゃったから食べるものがないの)」


「(魔物の血でいいなら飲む?)」


「(いいの?)」


「(ああ)」


 俺はそう言ってさっき狩ったばかりの魔物を取り出した。


「(そっちの子は?なんで死にそうなの)」


「吸血鬼ってね、双子だと普通はお腹の中で死んじゃうの。だけど偶然私たちは生き残れた。だけどお姉ちゃんはもう限界が来ちゃったんだ。寿命みたいなもんだよ)」


「(その子見せてくれる?)」


 そう聞いたら話していた子は頷き、誰かを抱えて戻ってきた。


「(私のお姉ちゃんだよ)」


「(うん、ありがとう)」


 そう言って俺は女の子を受け取り、契約できないか試してみた。本人の意識がないからだろうか?契約失敗とも完了ともこなかった。どういうことだ?声に出して魔力を多めに注いでみる。今度はうまく行っただろうか?1分くらい待っていると契約完了という念が返ってきた。


「(この子の命は助かったよ。君はどうする?契約してくれるなら戦闘はしない。契約してくれないなら戦闘しなくちゃいけないんだ俺も一応人間だから)」


「(契約して)」


「(分かった)」


「契約」


 こうして無事に契約が完了した。あとはこの後の生活の仕方だよね。


「(俺実は護衛任務中なんだよね。それで外に出なくちゃならないんだけどここで待ってるか、俺の魔法で陽の光に当たらないようにするか。どっちがいい)」


「(お兄ちゃんに助けてもらったからついてく)」


「(そうか、じゃあ契約したから使えるだろ?通話みたいのが、それで話してみてくれ)」


『う、うん、こんな感じかな』


『上手、上手じゃあこれに入って、ダメそうなら違うのにする』


 俺は魔物が五匹入っているところはどうかと聞いてみた。そしたら魔物の血を吸っていいならここでいいと言われたので許可した。お姉さんも一緒に入って看病するというので一緒に……さっき吸ったのをみると肉は食べないみたいだから魔物の血抜きをお願いしたいな。


 これで吸血鬼捕獲は完了した。あとは任務を再開するだけ、流石に睡眠1時間はキツかったかな?まあ数日だ我慢我慢。


 もうすぐ夜明け出発の時間まで後1時間ほど、急いで戻らなくちゃだな。俺は快斗を連れてテントまで戻った。


 この時の俺は返り血が凄かったのを忘れていた為そのまんまテントに帰ってしまった。


「今帰った」


 そう騎士に話しかけたら逃げ出されてしまった。最初はなぜか分からなかったが、隣にいた騎士が教えてくれた。


「君返り血がすごいよ。どれだけ戦ってきたの?」


「あ、ありがと。まあちょっと手強いのもいたけど大丈夫だった。ざっと数百体くらいかな。あんまり狩れなかったけど満足かな」


「す、数百体?」


 そう言われたので俺は「アイテムボックス」から取り出した。取り出したのは50体くらいだけど。なぜか驚かれた。お父様はいつも10分くらいで五匹くらい狩ってきてるから、そんなに多くないと思うんだけど?


「化け物だ」


「ば、化け物?魔力が」


「違う、魔物の量が多いんだ」


 そうだったのか怖がられてなくてよかった。


「で、その返り血どうにかして」


「あ、ああ」


 俺は水を生成し、汚れを落とした。


「すごい魔法練度」


 なんか言っていたがまあいいか。


「じゃあ、朝食の準備は整っているから食べておいで、食べたら出発だ」


「うん」


 朝ご飯は肉、肉、肉だった。肉しかないじゃないか。朝から胸焼けしそう…ちょっとだけ食べるか。


 こうして2日目が始まった。まだまだ至難はありそうだけど、頑張るぞ!

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