第13話 ゾンビ討伐

「倒せました」


「「「わあああ」」」


 俺はまたもや嘘をついた。倒せていないのに倒せたと。俺が「アイテムボックス」に魔物を入れるまでの時間はおよそ0.02秒並みの人間ではわからない。これはもう実証済み。騎士に対してやったが誰もわからなかった。という事で安心。


『快斗不死身な魔物に見覚えは?』


『あるっす』


 なんと快斗走っているのか。これなら研究が捗る。俺は強くなりたい。とにかく強くなってこの魔力が人間に害がないと証明したい。これから俺みたいな犠牲者が出るのを悠長に見ていられない。これは俺が体験した嫌なことを他の人にさせないのが目的……なはず。


 復習という言葉が頭に浮かんだがそれはないとその考えをさっさと取り消す。俺のためではないと。来世のためだと。そう言い聞かせる。


「俺のためじゃない、俺のためじゃない、俺のためじゃない……」


『竜馬さんおかしくなってるっす。顔青ざめてますよ』


 快斗にそう言われて現実に戻ってきた。また妄想の世界に入っているけどね。強くなる名は誰の為?復習の為、いいや俺自身の為だ。そうだ、そうだ俺の為だ。


 なんでこんなに思考回路がおかしいのか分からなかった。自分が言っているのは言い聞かせているだけということにすら気付けていない。こんな事今の俺が分かるはずもない。


 もう辞めにしよう考えても答えが出るはずがないんだから。今の俺が考えたらマイナスに向かうだけだ。そう言い聞かせているのに頭は聞いてくれない。もやを消そうとフル回転している。


 そう葛藤していたら戦闘が始まり現実に戻ってこれた。到着には後数日要するそうだ。今日はこの辺でテントを立て寝るらしい。貴族なのに……


(この先は言わないでおこう)


夜の見張りは「強制睡眠」でどうにかしよう。1時間で1日持つ。これなら夜は魔物狩りだ。魔石を集め換金してもらおう。今の俺では装備も変えるかどうか位しか持っていない。魔石はいつも足りていない。だから高価に売れる。貴族はまあお金あるからね。


「はあ」


 こんなことを考えていてもちゃんと戦ってるからね。ちなみに俺の魔力を分け与えているから疲れない快斗も参戦している。


「ガルルル」


 カイトーよだれで出るぞ!食べたくても我慢しろ。お前は俺の魔力があるから死なないぞ。契約していれば主人が死なない限り生きれる。空腹感はあるかもしれないけど…というか確実にあるんだよな。女神は例外らしい。俺死んでも死なないって、不死身だから!


『お腹空いているなら噛みついてそこから少し貰え!』


『いいんすか!じゅるっ』


 リアルに音出さんでええ!俺はそんなの聞きたくない!


『好きに喰らえ』


『はむはむはむ』


『もう食っとるんかい』


 お前は食には勝てないんだな。我慢のできないクソわんこめ!


『今、クソわんことか思いましたね?これでもウルフですから』


 読心術は怖い。心読まれたらどんなこと聞かれてるかわかんないからね。でも、俺主人だから最強だから…嘘です。最強ではないです。


『キャンプをする準備をしてくる』


『おおう』


 俺はさっさとテントを張り、俺専用の穴も掘った。穴の場所はテントから2キロ離れた場所テントを見張るには最適な場所だ。テントを張り終えたので次の仕事を聴きにいく。


「終わった。何すればいい」


『喋り方、人間不信の人みたいです』


『ローレシア平気か?』


『あなた様の魔力を少し頂きますね』


 質問に答えろ!魔石の件について聞いてみるか。女神なら何か聞いたことあるかもしれないしな。何もない魔石であることを祈る。


「じゃあ狩を頼んでも?なるべく高価な肉をお願いできるかな」


「わかった」


『人間不信どれだけ強いのよ。貴族だからか知らないけどいつもより過剰反応してるわよ』


『人間不信で悪かったな。俺はもう喋りたくないんだよ。ライバル寮のお嬢様を守る必要あるか?俺だったら殺すぞ!平民としてじゃなかったらこの人達もうこの世にいないよ』


 俺は狩へと向かった。高価な肉ね〜なんの肉が美味しいのか分かんないんだよな〜ブラックバイソンとか?魔物だったよな?美味しんだっけ?いつも動物だからわかんね〜俺鳥好きだな。ということで鳥を狩りに行こう!もう知らん。何持ってきても文句言うな!


「探知」


 俺は魔力反応が大きい場所に行ってみることにした。多分なんかの群れだと思う。魔石がいっぱい取れるかな?ワクワクする。


魔石と異様な魔物のことを俺はローレシアに聞くことにした。


『ローレシア、快斗この魔石知らないか?この魔石は人工的に作られたものだと思うんだ。俺の魔力が通らない。なんか見覚えない』


『知ってるけど、どんな効果あるのかわ知らないわよ。前にも見たことあるけど何も起こらなかったからなんもないと思いますよ』


『俺は知らないっす。それと俺の存在感って薄いっすか?』


『んーと、乗ってると自分の思考回路にまっしぐらかな』


『じゃあ、存在感ないのと同じですね。宣言どうもありがとう』


『快斗って普通に喋れるんだ。なんか違和感』


『喋れますよ。バカにしてます?』


 カイトは無視して俺は魔物を取り出し質問を再開した。


『じゃあさ、これ知ってる?一向に倒せないゾンビ』


『それは上位種のアンデッドの眷属ですよ。本体倒さない限り死なないよくわかんないのですね。しかも本体ってすごく遠くにいることが多いのでどうにもなんないです』


 俺はさ思ったのだが、そこにある大きな魔力の塊はそのアンデッドなんじゃないかと。俺ってこの任務運悪いよな。悪いことあたってばかりだ。じゃあ戦闘体制に入りますか。


 あの鳥を攻撃した時と同じように剣に聖の魔力を纏わせて構える。その体制を崩さないように忍足で近寄り素早く剣を振る。1秒あたり5振りくらいのスピードで切っていく。まあ目には見えないよな俺以外は。俺は見えてるから。魔力で強化してないけど見えてるよ。やってる本人だから。


 魔物の正体は人間のゾンビだった。まあ巨人かな〜名前は知らない。本でも見たことない。未確認生物だー……


「ヴヴヴヴヴ」


「身体強化」


 詠唱なしの身体強化はもう限界だから詠唱してもう一度使う。剣に魔力を多めに含ませ攻撃しようと思った時ローレシアが止めた。


『攻撃しないで!』


 俺は反射的に後ろに飛んだ。


『魔力の攻撃したら強くなります。この魔物は「魔力吸収」以外で倒せません』


 という事はどうしたらいいんだろう。闇属性は確か吸引的な役割だったと思うけど。イメージがしずらい。んー適当にやってみよう。


「魔力吸収」


 魔力を俺の体の中に送るようなイメージでやった。まあ成功したみたいで弱ってるけど俺の体が変……魔力がなんかせめぎ合ってるみたいな?


『手遅れですね。せめぎ合う魔力を押し出してください。自分の体に魔力入れてどうするんですか。空っぽの魔石に普通入れるんですよ』


 すんません。俺変なことしてる自覚あってやりました。今度から頭ちゃんと使います。


弱ってるゾンビを前に俺は満タンの魔石を取り出して、その中に「魔力吸収」で魔力を入れた。そしたら、さっき拾った魔石と同じような魔石ができていた。


 どういうことだろう。魔石が大変な事になってしまった。これもギルドにgoだな。


 俺はゾンビを倒したので狩に熱中するのだった。


 鹿に熊によくわかんない魔物たち…俺はなんでもいいからとりあえず狩り続けた。結果「アイテムボックス」の限界がきた。時刻はもうそろそろ仕事の終わり。できれば家に帰りたい。食事と書類を消費しに行きたい。だからそろそろ帰ろうと思う。


〈調理場にて〉


ドンッ


「要らないのはここいれて」


「ひっ」


「わかった?」


「は、はい!」


 料理長は食材の仕分けを始めた。使ったのはよくわかんない魔物と鹿だけだった。こんなんで足りんの?まあ騎士も食材集めて切るらしいからな。


「これくらいで大丈夫です」


「俺ここからしばらく離れるから食材の追加できないよ?」


「だ、大丈夫です」


「そう」


 そういうと俺は快斗に乗り離れた場所に行く。俺は快斗にすることを言い、実行に移す。


『家に帰って食事を摂って書類を消費しにいくよ』


『はいっす』


「転移」


 次の瞬間には俺の部屋に着いていた。やることはさっき言った通りでご飯食べて書類を消費する。


 「探知」


 部屋の外には誰もいない。


 ちなみに快斗は転移酔いで死にかけている。俺が死なない限り死なないが……さて行ってくるか。書類があんまりありませんように。


 机に置いてあったのは30センチ程の束になった書類たち。それに膨大な食事。肉の量が半端ない。これはおかしい。全てにおいての量が多い。そしてとどめはこのウザい手紙……提出期限は明後日までね。明日もこの量よろしくね。というお母様の字で書かれた挑撥手紙正直いらない。こんなのなくてもやるわ!


 俺は食事と書類を持って部屋に入る。快斗もそろそろ起きたかな?


部屋に入った俺は食事を取り分ける。そして書類を手に取って目を通す。これは記憶力がないとできない。内容と回答をセットで瞬時に暗記しなければならないから才能だよね。ちなみに俺は恵まれていたらしい。まあ前世からだけど。


『ご飯できたぞ』


『うー』


 まだ酔ってました。治ったら食べさせるか。よっても対処法知らないからな。俺が酔わないから対策とか知らない。目を瞑れば平気だって言ってた気がする。


『治ったら食べろ。俺は先に食べて早く書類を終わらせて20分で帰るぞ』


「くーん」


 限界らしい。じゃあ放置で、死なないし……


 これはこの解答でこれは……俺は早く終わりそうなものから進めていく。対策についてのお礼の手紙が沢山あったから読むだけのが多かった。読んでOKだったら判子で終わり比較的楽だった。中には計算仕事もあったがすぐに取り掛かっていく。


 今日の食事は、野菜スープにコロッケ、鶏肉、フルーツだった。フルーツの名前はドラゴンフルーツ、俺の好物だ。


〈20分後〉


「終わったー」


 これで安心して戻れる。あとは書類と食器をまとめて置くだけ。「探知」で確認し置いてきた。また転移酔いしないように注意事項を言っておこうか。


『転移酔いしないように目を瞑っていろ』


『はい〜』


 一応回復したみたい。元気ないけどじゃあいくか。


「転移」


 次の瞬間にはゾンビを倒したところまで来ていた。ここからテントまでは歩いて30分か。「身体強化」を使って全力疾走すれば10分くらいで着くかもしれないがウルフ君が死にかけてるんだよな。俺は戻ったことを知らせなくちゃいけないから、快斗にはここで待っててもらおう。


『快斗、一旦戻ってくるからここで待ってて帰ってきたことを知らせにいく』


『はいっす〜』


 だいぶ復活か?じゃあ行ってくるか。


「身体強化」


 俺は「身体強化」で使えるだけの魔力を使い全力で走る。木々にぶつからないようにうまく走っていく。まあこれが高度な技術な訳で…最初はいろんなところにぶつかっていた。だけどもうぶつからないぞ。スピード出しすぎると止まれなくなるからね〜意外に使い勝手がね。


「ついた」


俺は騎士の人と料理人の人に声をかけに行った。


「今帰った。俺の夜晩はいつ?」


「君できるの?だってさ、まだ5、6歳だろ。出来るならいいけど、今日は君のおかげで体力が有り余っているんだ。やんなくていいよ」


「じゃあ、起床の時間まで出かけてくる」


「待って寝ないの?」


「睡眠は1時間でいい。この辺の不審物の調査に行ってくる。ついでにこの辺のマッピングをしようかなと、ここの地図なかったよね」


「じゃあせめて騎士を一人連れて行け」


「足手まとい」


「いくらなんでも付いていけると思うよ。君の足で走っても騎士には追いつけないと思う」


「じゃあ試す?」


「うん」


「そう、じゃあいくね」


俺は無詠唱で「身体強化」を使い全力の半分くらいのスピードにする。もう既に着いてこれてない…


「「身体強化」使わないの?追いつけないよ」


「身体強化」


俺はしばらく走り続けて声をかけた。このままではテントに戻れなくなる。


「引き返そうよ」


「何故?」


「だってテントから離れておよそ28キロだよ。もう魔力すっからかんなんじゃないの?帰れないよ。」


「あ」


 あ、じゃないでしょ俺やなんだけど、こいつと帰るの快斗に連絡するか。


『快斗、聞こえる?今さ、キャンプから離れて競争してたんだけど、相手の魔力がすっからかんでね帰れないの、全力でこっちこれる?場所はわかるよね』


『いけますよ。俺は最強なんで』


 どうやら転移良いから脱出したらしい。よかった、よかった。


『じゃあ頼んだ。頼りになる相棒さん』


『竜真さんって意外と恥ずかしいことさらっと言いますよね』


『ん?なんて言った』


『なんでもないっす』


〈3分後〉


『到着っす』


はや!なに起きた?魔力吸われてたけど好きにさせたらこうなった。まあこれで俺は帰れるわけだ。よしっ、帰るぞ。


『快斗こいつ乗せてキャンプ場所まで行くぞ』


『りょーかい』


 こうして俺たちは無事に帰れたのだった。あー、よかった、よかった!

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