第12話 護衛対象はライバル領の当主様

〈早朝〉


 俺はなんとか朝鐘が鳴る前に起きれたみたいだ。快斗に俺の転生話を聞かせる約束だったからな。快斗は寝てる気持ちよさそうに……まあ約束は約束、約束を破る男は嫌われる!と言われて事があるから、いつだっけなーでも言われた。確実に言われた。子供の時かな親に言われた気がするけど〜いつだか分かんない!ということで起こしまーす。


『えー、あるところに快斗と名乗る旅商人がいました。その旅商人はいつもいつも魔物のよく出ると言われる森を通って街を行き来していたのですが、一度も魔物に合わなかった、と言って調子に乗りました。その結果史上最強と呼ばれる老龍に出会ってしまいました。その老龍は快斗という旅商人が自分の縄張りを駆け回っている愚か者だと勘違いし、攻撃しました。そしたらお見事に命中!焦げて跡形も残っていない馬と商人、荷馬車が残りました。』


 そろそろ起きるかな?俺は快斗の夢に干渉して悪夢で起こしたんだ。頭いいだろ?目覚めは最悪かもしれないけど俺が楽しい。


『はあ、はあ』


 お、起きた起きた。予想通り!


『おはよう!どうかした?凄い魘されてたけど…』


『悪夢で飛び起きました』


 そりゃご苦労様…笑いたい、爆笑したい、気づいてない


「ブッ」


『今なんて言ったんですか?なんか言ってるのは聞こえるんですけど何言ってるかわからないです』


『「夢干渉」使ったんですよ』


 ローレシア!余計なこと言うな!と叫びたいところだが叫んだらはぐらかせなくなる、という事で否定しよう


『ん?使ってないぞ?なんか面白い物語ないかな?と思っていたら良いのがあったから音読してただけだ。ついでに快斗も起きるかな?と思って……』


 自分でも分かるような醜い言い訳はしないようにしましょう。まずさ、「夢干渉」の発動条件に見させたい夢の音読をしなくちゃなんない時点で俺は言い訳できないわけだ?これ知っててやった俺も馬鹿よねーという事でなんでも罰は受けます。


『そ、俺犯人いい夢でしょ?上手じゃね?褒めていいよ?いい目覚めだったでしょ?』


『すんなり白状ありがとうございます。ご主人様でも遠慮しませんから、』


『寝坊するお前が悪い、俺のこと話す約束したから起こしてやったっていうのにひど〜い、快斗が俺のこといじめてくるー』


『竜真さん体ちっさいからこう言われると怒る気失せるんですよね。約束は守ってくださいね』


 作戦成功!じゃあ話すね。


『俺は転生者だ。元は獣人だったんだ。35歳の独身!』


 そうして、俺は前世から今に至るまでのことを全て話した。快斗は契約済みだから秘密と言えば逆らえない、はず多分……


『ううっ、竜真さん大変だったんですね。俺感動しました。一生ついていきます』


『うんありがと』


 さて空気は重くなったがそろそろ出発だ。間に合うようにしないとな。俺は約束を守る男!


『行くぞ、転移だ』


『はいっす』


「転移」


 俺は集合に間に合うように早々と転移したのだった。


〈待つこと10分〉


「あれ竜馬君早いね」


「はい、ギルド長も30分前ですよ」


「貴族の馬車を呼びに行こうと思ってね」


「付いて行っても?」


「勿論だ」


 こんな会話を繰り広げた後俺たちは貴族の馬車に向かった。正確には貴族の家だ。俺は今魔力を全く放出せずに快斗に送っている。これは契約することによってすることの出来ることだ。これなら俺だとバレない。一時的に社交界を去っている俺は冒険者として働いていたらおかしいのだ。もし魔力がバレてもウルフがいるからなんとかなる!快斗は魔物だー万歳ー


 今日は外套を着てきている。中は茶色のチェックの長ズボンに黒のYシャツというラフな格好。この世界のファッションじゃないんだけどね。気になってたからオーダーで作ってもらった。そしたら動きやすくて俺の戦闘服になったってこと。まあ大体コート着てて見えなかったけど。今日はたまたま見つけた簡単なマントにフードがついたようなものを着ている。周りから見れば怪しい人だな間違いなく……


 そんなことを考えながら歩いていたら目的地に到着したようだ。屋敷の大きさは俺ん家と同じくらいだから、準男爵か男爵くらいだろうか?


「今日の依頼は男爵のアルトン領所持者レイラ・ローファ様だ」


 俺の領のライバルだー。絶対バレないようにしよー。というか当主が女性なのか珍しー。基本的社交界では男性の方が立場が上だからな。相当な理由がない限り女性当主はいない。


 レイラさんが出てきたらしい。俺は平民ということになっている。だから無礼がないように……ってそんなのできるかー!じゃなくてやらなくては


「良き出会いに祝福を…今日の護衛を担当します竜馬です。挨拶を」


「はい、新たな出会いに祝福を護衛担当の竜馬です。以後お見知り置きを」


 この人挨拶したー。一回会ったことある!こりゃバレたら一大事だ。まあバレさせないけどね。隠蔽を本気で使います。言い訳は快斗でどうにかなるし。


「隠蔽」


 俺はそう小声で呟いた。これならフードを取っても大丈夫そうだ。


「今回はよろしくお願いしますね」


「はい、お任せください」


「徒歩で大丈夫かしら?しかもかなり小さいようですが?」


 小さくて悪かったな!俺は脳味噌以外5歳なんだよ!


「はい、でも腕は確かです。私でも勝てるかどうか……」


 ギルド長は俺に余裕で勝てるだろ!私でも勝てるかどうか…とか要らないから、俺多分ボロ負けするから。お父様にも勝ったことないんだよ。無理でしょ!


「では早速お願いします。いくわよ」


「「「はっ」」」


 うおっすんげー声揃ってる!俺は快斗に乗っていく許可を得ないとな。


「俺はこの魔物に乗って行ってもいいですか?」


「かまいませんけど大丈夫ですの?」


 大丈夫だわ、ぶぁーか。俺のペットは最強なんだよ。表面には出さないけどね。俺は隠蔽使ってるから表情操作も完璧!


「大丈夫ですよ」


 これで俺は疲れない。戦闘だけだー。わーい、わーい、わーい、わーい、目的地どこだか分かんないけどワクワクするな。


「出して」


 俺は馬車の後を付いていくだけだ。まあ簡単。


『俺は乗り物にしていいって確かに言ったけど、こんなにこき使われると悲しくなるっす』


『まー我慢して』


 こうして俺の護衛任務は幕を開いた。後の楽しそうな冒険に心を躍らせながら。


 護衛任務を開始しておよそ1時間というところかな?俺は探知を使いながら進んでいた。護衛対象は馬車の中なわけである程度は安全だ。まあ、市販の馬車にちょっと手を加えれば最強の馬車になるんだけどね。それはさておきどうしたらこんなに魔物が出てこないんだろうと思っていることだろう。実はな、ここに護衛任務としている俺は「幻想」で作り出した偽物(カイトは本物)


「10メートル先ゴブリンの群れ10体、27メートル先鳥型の……名前なんだっけ?まあいっか…」


 魔物狩りハンターは俺でした!いえーい、ということで快斗に連絡を入れて戻りますか。


『快斗、一応周りの魔物終わった。返り血でグジョグジョなんだけどどうしたらいい?』


『あれっす、泉とかで洗えないんすか』


 伝わらなかった。このままお前に乗っていいかと聞いているのだ。まあ嫌だったんだろうな、なんとなく分かる。流石にこれはね。


『自分で水を生成するから平気、魔力で作り出せば塗れないし』


『そうっすか』


 俺はいつものように水を出そうとしたら魔力がちょっと入りすぎちゃったみたいで大きな泉ができてしまいました。魔力で作った水なら服は乾いたままって言ったけど、地面は論外な。これ実証済み。


 これで俺は帰れる。快斗の真上に転移しよ。「隠蔽」使うよ流石にね。


 「転移」


「わうっ」


『間抜けな声出てる』


『竜真さんがいきなり転移すっからですよ』


『ごめんごめん、なんかやってみたくて……』


『今回は許してあげますよ』


『お、ありがと』


 なんだこの反応は魔力だまり?にしては小さい。でも威圧感がとんでもないどうゆうこと?俺は先頭に行き騎士の方にこう伝えた。


「もう少し先に異常が見られる先に視察に行ってくる。多分ここは安全」


「分かった。行ってきてくれ」


「すぐ帰る」


 そう言って俺は目的の場所に向かった。そこには魔石があったこの前見つけたのより一回り大きな闇属性を宿した大きな魔石が。これはポケット行きだ。みんなに不安は持たせられない。後で研究しよう。何があるかわからないからワクワクする。


 俺は何もなかったということで報告をしに行った。


「何もなかった。だから安心しろ」


「あ、ああ」


「あいつなんかおかしくないか?紫のモヤが見える。ポケットに何か入っている。何かあったが気を使って報告していない感じだよな。それに帰ってきるのもやけに遅かった」


「だな、血はついていないか?スキルでのぞいてみろ」


「そうだな。なんだこれ返り血?自分の血ではなさそうだ」


「どうゆう事?いままで、魔物が出て無かったのはこいつが先に倒してたから?でもこいつはずっとここにいた筈では?」


 なんか怪しまれている。しゃあないから「アイテムボックス」使うか。魔石をアイテムボックスの中に入れれば大丈夫だろう。



 その時突然魔物が飛び出してきた一直線に馬車に向かった。それを俺は全力で阻止する。阻止はできたが流石に倒しきれなかった。


「こいつゾンビだ。ゾンビなってる」


 ゾンビ?俺が倒した。C級モンスターじゃん。しかもそこら辺にうじゃうじゃいる奴…もやしとけばよかった。ゾンビになった以上聖属性以外効かない。この中に聖属性の持ち主はいない。という事は、死なないうちに俺が倒さなくちゃならないということ。正直めんどくさい。


「はあ」


 俺は聖属性を剣に付与し、切り伏せていく。俺はここで異変を覚えた。なぜか消滅しない。いつもなら消えるのに。なぜか消滅しない。おかしい。魔石……がない、だから消滅しない。どうしたら倒せる?そう考えた結果俺は「空間転移」を使って「アイテムボックス」に入れた。勿論魔石とかが入ってないところだよ!


謎の生物はなんなのか?これはギルドに提出しないとだな。何か大きな事件が始まりそうだ。貴族社会で行方不明者は最近続出してることにも関わっているのかもしれない。

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