第10話 初任務
依頼掲示板を見ている。Fランク依頼は沢山あった。特に魔物討伐が……
(ローレシア、魔物討伐でもいいの?)
(それだけ力を持っていればFランク依頼は簡単だと思いますよ?一応貴族でしょう)
(あ、はい)
そうして俺は初めての仕事をすることにしたのだった。
「よう、そこの坊や。俺のパーティーに入らないか?」
「俺、ですか?俺レベルが低いですし、足手まといになるので遠慮しておきます。それに、俺の魔力怖くないんですか?」
(絶対なりませんよね、面倒なだけでしょう)
「魔力が怖い?それは冒険者の憧れの魔力だが?」
「つい先日怖がられたばかりなので…」
「そうか今はパーティー勧誘はやめておくよ。もう少ししたらまた来ることにしよう」
(意外と諦めよかったですね。ってなんで?)
俺はいつの間にか泣いていたらしい。この魔力が怖くないって言ってくれたことに安心して。
(いや、なんか嬉しくって)
(ちょっとは心の傷が癒えました?ここに連れてきてよかったです)
(ローレシアはこれが狙いだったの?現実逃避のように魔力のことを考えなくて済むようにしてくれたでしょ?)
(バレてしまったものは仕方ありませんね。さっきの人はこの街を拠点にしているAランク冒険者で魔属性を好いている変わり者です)
(変わり者扱いしてる〜一応先輩なのに〜)
(あなたも一応と言ってますよ〜)
(……)
俺は女神の言葉を聞かなかったことにし、依頼を受けに行った。
(無かったことにしないでくださいね)
ローレシアからは顔を見なくても分かるくらいにこにこオーラが出ていた。ローレシアは笑いながら静かに怒るタイプみたい…怖いからやめてほしいです。
「この依頼受けます」
「はい、ゴブリン退治ですね。今、書類の処理をしてきます。待っててください」
「はい」
(ゴブリン退治にしたんですか。ネズミ退治でもよかったんですよ)
(絶対やだ)
女神様や、一応貴族の俺にドブネズミを退治させるつもりでしたんかい。一応俺だって貴族のプライドというものを理解しているつもりだ。家の名を汚さないようにするのも俺の役目。
「お待たせしました。ゴブリン退治の依頼の登録完了しました。初任務頑張ってくださいね。では依頼が終わりましたらまたこちらにお越しください」
「はい、了解です」
ギルドを出て、依頼のでている森へと向かった。持ってきた剣はあまり高価なものではないので、ゴブリンを遠慮なく切れる。臭いと有名なゴブリンを高価な剣で切る気にはなれない。
いずれはそうしなくちゃかもしれないけど。正直嫌なので魔法も頑張ろう!
そんなことを考えているうちに森の入り口に到着した。森にはほとんど道がなく、獣道の様な道が続いていたが途端に整備された道が現れるようになった。人間がこの森に出入りしている痕跡はほぼないその為、この綺麗にされた道はゴブリンの作ったものなのかもしれない。俺は獣道をはずれ、ゴブリンの作ったと思われる道を辿っていくことにした。俺の仕事はゴブリン退治、ゴブリンが見つかればいいんだ。
(あのー、ご機嫌のところ申し訳ありません。ゴブリンについての知識はどこに行きました?竜馬君は知ってる筈ですよね?というか知ってますよね?)
(あ、そういやゴブリンって群れるんだっけ?俺今自殺行為してない?)
(してますね)
サラッというなサラッと。一旦この道から外れてゴブリンの巣を探さないと……意外と大変だな。それにしてもこの道凄い分かれ道が多いんだけど、なんで?ゴブリンって頭悪いんじゃなかったっけ?上位種のゴブリンキングは違うけど。
ゴブリンキングの目撃情報はない、だがこの道は知能のないゴブリンだけで作れるとは思えない。どうしたものか?あ、そうだ。魔法で巣を探せばいいんだ。えっと、「探知」かな?この世界にこの系統の魔法ってあったっけ?いいか?一緒にいるのは女神だし、いいや。
確か「探知」は魔力を体に纏わせるようにしてから魔力を広げるような感覚で、こんな感じかな?お、できたできた。すげーなんかこっちの世界の方が魔力を操作しやすいかも。
〈2分後〉
あった〜ここ何処だか分かんない。1分あたり100キロくらいのペースでやったから、およそ東に200キロ……どーしよ無理じゃね?
(ローレシア、ゴブリンの巣ってここから200キロ東なんだけど?合ってる)
(残念ながらあってますね)
(この依頼何?異国の依頼?)
(依頼人は異国ですけど、依頼をだしたのはこの街です)
依頼人め!でも俺も運悪っ。100枚くらいあった中からアレを引いたのかよ!初依頼からこれじゃあ俺は冒険者運ないね。俺の稼ぎ先が〜
よし、「飛翔」で頑張ろう!頑張りたくないけど頑張ろう!
(ちなみに、休憩は無しですよ。何日かかってもなしですよ。食事や睡眠などもしながらですよ)
何言ってんだ。食事は良くても睡眠は流石に無理、頭から真っ逆さまだぜ?という事で睡眠はなし!悲し〜なローレシア怖いな〜
(私の事怖いとか思ってません?顔に全てで出るんですが…)
オー顔に出てるんすか。俺やっぱ身内の前だと顔に出るんですね。俺ダメだ〜。でもありがとう俺はこれから頑張ることが増えたみたいだ。頑張ります。
では早速出発します。もう魔力をゴリゴリ使っていきます。寝たいので!これ終わったら瞬間移動の魔法を習得していくことにしよう!
〈飛翔し続けておよそ3日〉
俺は魔力をゴリゴリ使ったせいで魔力切れ寸前の状態でゴブリンの巣に着いていた。もう剣術のゴリ押しで…睡眠は結局頭から落ちてする事が出来なかった。
巣の前には見張りが2人、中には100近いゴブリンがいる模様やばいこの数はやばい!奥は魔力反応が大きすぎて分からないところが多い。では早速入っていこう。
まずは目の前のゴブリンから倒していく。なるべく助けを呼ばれないように静かに。俺はゆっくりに見えるが実は早い剣を使って倒していく。そうすることにより助けを呼ばれにくいと考えたから。逃げられる数がいるときは、目に見えないスピードで。
そんな感じでゴブリンを倒していくと魔力反応が大きかった場所に辿り着いた。そこには扉があり、何人もの見張りがいた。見張りは頑丈そうな装備をしていた。恐らく冒険者のものだと思われるものを、実はD級依頼だったりするのか?あってもおかしくないな。これだけゴブリンがいるんだもんな。ないこともないな。今のところゴブリンの牙だけ刈り取ってる。牙以外は使い所がないからだ。
そして門番ゴブリンを瞬殺し、扉を開ける。そこにはゴブリンキングがいた。これは苦戦しそうだ。まずはゴブリンを倒して邪魔をなくす。最後になったゴブリンキングは不気味な笑い声をあげている。俺はその目の前に「スリープ」の魔法を仕掛けておく。気づかれないように無詠唱で。多少の魔力の流れは無視
「さあ、掛かってこい」
そういうと、ゴブリンキングがこちらに襲いかかってきた。これはお見事「スリープ」に引っかかりそうだ。そう思った時だった。ゴブリンキングは一瞬かかりかけたものの効かなかった。俺は急いで剣を抜くが間に合わなかった。左腕に痛みが走っている。血が流れている。でも、それどころではない。俺はこいつを倒さなければならない。倒さないと帰れない。もう魔力は30分の1くらい回復した。「火球」くらいは打てるだろう。
「火球!」
これでどうだ。右腕くらいはと思ったら焼け焦げていた。どう言う事?剣術はダメだったのに…俺ってもしかして剣向いてない?
(よくでくました)
(いたのか。この傷どうにかしないとな。その前に素材の回収か)
俺はゴブリンが集めたであろう戦利品をとりあえず斜めがけのバックに入れ帰ることにした。
(瞬間移動使えますか?使えなかったら教えますよ)
(一応これでも転生者、しってる)
(それは良かった)
そう言って竜魔の時と同じように感覚で魔法を使ったら成功しました。やばいな、俺天才!
これで俺の初任務は終了!
〈帰還時〉
(あのー気づいていらっしゃいますか?周りに沢山いるの)
(気付いてなかったです)
「ん?」
だいぶ獣道が和らいできた頃なんとなく違和感を感じた。こんなところに魔石があったのだ。この魔石は魔物から取れた物そのまんまではなく加工されている。魔石の感じからして闇属性の魔力が宿っているだろう。だがおかしい、魔石に魔属性以外が宿っているのは上位種、いわゆるヴァンパヤやアークデーモン、魔王などといったもの以外はない、筈だ。魔物とは魔、そのため魔属性は人間に害をなすとされてきた。
だがこの人間でもたまに見られる魔属性、人間の人体には影響がないとわかっていても避けられるのは仕方がない。
(なあ、ローレシア?この魔石ヤバくないか?この魔石に宿っているのは闇属性だろ、普通のは魔属性だろ?)
(おかしいのはあなた様のですよ。竜馬のせいで魔物がいっぱーい!おめでとうございます戦闘のお時間ですよ!待ちどうしい)
まあいいや、持って帰ろ。俺は魔石をポケットに入れた。
ローレシアは心の声までダダ漏れです。それと、質問に答えろ!これは一旦置いといて、ウルフがね俺のこと恋しいって言ってわざわざここまで来て襲い掛かって来てくれているからねお友達になろうかな?
「グワー」
「グルルル」
「ガルルル」
「はいはい、お相手いたしますよ」
「ガオー」
そう言って襲い掛かってきるウルフやオークその他諸々の敵意を向けてくるものたちを死なない程度に戦闘不能にさせる。魔物で可愛くないのには容赦なし!中には俺の魔力に気づいているのか襲いかかってこないのもいた。
(オーク達には容赦ないですね。専属にできなからとかいう理由じゃないでしょうね?)
というかこの世界契約できたんだ。
(多分あなた様だけですよ。魔力が多くて魔属性を持っているなんてほとんどいませんからね。なぜかこの国では魔属性は敵という認識が強いですが…)
(そ、そうなんだ。俺もこの国じゃないとこに行けば差別されなくて済む?)
(多分されないと思いますよ)
(でも亡霊の国、グリュアーノには行かないでください。まだ理由は話せないですけど。でも大丈夫、嫌でも行くことになりますから)
ローレシアは俺がその国へと言って欲しくないような振る舞いだった。何故だろう?理由を聞いてから行きたいが好奇心が勝ちそうだ。でもローレシアがいる限り行けなそうだな、自分の心配というよりか俺への心配があるような言い方…俺はローレシアのことならなんでも分かっちゃうんだから〜。
俺は会話から意識を背け、戦闘に集中する。
一匹ずつ意識を刈り取り、数を減らしていく。明らかに戦意が剥き出しななのは死んでるかもだけど。多分平気だ。
剣の鞘と水の魔法でなんとか致命傷を負わせることなく倒せた。これを連れて帰れば大金が手に入る。俺は何か収納でくる魔法がないかと竜馬の記憶を除く。そうすると、空間魔法と出てきて感覚でやってみたらできてしまった。やっぱり俺はおかしい。
(あ、言い忘れてました。竜馬で使えた魔法は全て使えますよ。何故なら私がなくならないようにしたからです。感謝してよね)
おお、マジか!それと素が出てるぞローレシア……
(アルミ缶の上にあるミカン!)
(えーといきなりなんですか?)
(ダメだったか〜)
ローレシアは笑わなすぎな。
そうして襲い掛かってくるウルフを片付けた。
(竜馬、その真ん中のウルフを契約されてはいかかでしょう。私も契約しているので負担は少ないでしょう)
真ん中のってあの若干銀色っぽい毛のしてるやつかな?とりあえず近寄ってみて、契約と口にしてみよう!
「契約!」
『我のご主人様と認めよう』
「うわっ喋った〜!」
『私も今から契約特典で喋りますね』
「うわっなんかすごい」
『ご主人様もしゃべってくださいよ』
「ローレシア、どうすればいいの?」
『思ったことを頭に思い浮かべればできますよ」
『できたかな?お、出来た〜』
『ではオークは持ち帰りましょうか』
『俺忘れてた』
『初めての任務でしたか、頑張たんですね。よかったら俺のこと乗り物にしていいっすよ』
『いいのか!?俺、オーク仕舞まったせいで魔力切れだったんだ助かる!後、俺の事は竜馬って呼んでくれ、本名はアルフ・グラートだが』
『了解っ』
こんな感じで俺の仲間は増えたのだ。
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