第3話 誕生会準備と魔力操作

転生して一年が経った。今日は俺の誕生日会、といっても身内だけの簡単なものだ。まだ幼いうちは病にかかりやすいという理由で家族や側仕え以外との面会が許可されていない。国での決まりな為、守らないわけのはいかないのだ。


前世、竜馬の時だった時誕生日パーティーそれは自分にとって一年に一度の大切な日と言われて育ってきた。その為こんなに身近な者だけのパーティーは初めてだ。身近な者だけといっても家族に側仕えまでいれば相当な人数なので簡単とはいえないかな。


今はそんなパーティーのための準備をしている最中でみんなバタバタしているが俺は暇、手伝おうとしても貴族だから、まだ小さいから、足手まといになるからという理由で手伝わせてもらえない。狩りに出ているお父様は論外だそうだ、お母様が側仕えにそういっていた。


この暇な時間、俺は何をしているかというと…魔力操作だ。女神に早めに出来るようになっておいたほうが良いと言われていたのでコツを掴むために毎日暇な時間に頑張っている。


これまでやってきて分かったのは、竜馬だった時と同じように体外の魔力でも体内の魔力でも操作する事が出来るという事だ。


 自分の魔力を抑えきれないと、魔物が戦う前に死んでしまう。それはいくらなんでも悲しい。なんでこんな事になったか知ってるかって?それはね、家に入り込んだ魔物が俺の魔力が広がっている所に入った瞬間散りと化したからだ。その時、俺は魔力を抑えなくては!と思ったのだ。


 まだ体が小さかったから周りの人も耐えられていたけどだんだん体が大きくなって魔力量も桁外れになってきている。


普通の子供ならもう魔力の成長が起こらないはずなのに俺はまだ魔力が成長している。おかしな話だ。


 でも、前より魔力も増えなくなってきた。それでもまだまだ増える。魔力成長がなかなか終わらない。


 まあ、そんなこんなで魔力制御をした方が良いのではないかという事だ。


 今俺のできる魔力操作は、周りの人くらいに魔力放出量を抑える事、魔力を綺麗にまとめる事、体内魔力密度を増やしたり減らしたりする事、魔力循環だ。


 魔力放出量はなるべく魔力を体内に押し込めて放出されている所に蓋をするイメージで、これはなかなか習得できなかった。少し量を減らすくらいならできるけど、人並みに抑えるのは結構集中力が必要だ。


 魔力を綺麗にまとめるのは、体外魔力の密度を上げることで出来る。これは1日でできた。


 体内魔力密度を上げるのは、魔力を体外でまとめるのを体内でやる感じだ。これは魔力をまとめるのと違い1時間程度でできた。


 そして魔力循環は竜馬時代の魔法では必須だっただからやってみたはいいけど、今の世界に無詠唱魔法は古代の魔法とされており、この技術を必要とするのは無詠唱魔法だ。俺の知っている魔法は無詠唱魔術と呼ばれていた。この魔法は技術が全てだからだ。


 努力すれば努力しただけ威力が上がるという努力した者にだけ出来る魔法だ。俺は努力したから王宮魔道士とやりあえるくらいはできたと思う。


 でも、魔力操作が出来る人がいないってのは驚きだ。魔力を送らないと魔法が発動しないっていうのに。な〜んて思っていたけど、詠唱があるから勝手に魔力が吸い取られていて、魔力操作が必要ないという事が分かった今、魔法の威力が弱いと言われても納得出来る。


 まあ、そんな感じで魔力を練っているんだけど、なかなか漏れる魔力を人並みにし続けるのは大変なので魔道具について勉強したり思い出したりしようと思う。勉強するのはまだまだ先の話だけど。


 魔力操作を始めたばかりの頃は大変な事になっていた。魔力で形を作っていた時、くねくねと動かして筒状にして遊んでいた時に途中で魔力がうまく動かなくなり、水を出すための魔道具に触れてしまったことがあった。勿論魔力を操作していた為まあまあの魔力がこもっていた。幸い魔道具が壊れることは無かったけれど、床一面水まみれにしたことがあった。流石に俺の仕業とは思わなかったらしく、聞くことすらされなかったけれどあの時は本当に焦った。


 その他にもライトや自動人形に魔力を当てて大暴走を起こすなんて日常茶飯事のように起きていた。なので一時期この屋敷には悪霊や死者がいる、という噂まで流れたほどだ。この噂を聞いた時にものすごい罪悪感に襲われたのもいい思い出だ。元凶の俺がこんなことを言ってはいけない気もするけど。


 まあ今はそれどころではなくなってしまった。最近の疲れの元凶、お母様が来てしまったのですから。いつもいつも着せ替え人形にされている。それを見てもお父様は笑っているだけで止めに入ってくれそうにない。


 今日は誕生日パーティーだから一層気合いを入れていているだろう。女の服でないことを願うのみだ。お母様の実家は服を作る仕事をしている。その為お母様もかなりの腕を持っていて男女どちらの服でも作れてしまう。お母様は女の子の服の方が作りがいがあって楽しいということで、女の子の服も膨大にある。次、妹が生まれてくる事を願う。女の子の服はもう懲り懲りだ。


「アル、元気にしてたかしら?」


 な、なんだその膨大な量の服は!俺はあれを全部着せられるのか?嫌だ嫌だ絶対に嫌だ。涙目になりながらお母様に訴えてみたものの伝わっていないのか、知らんぷりしているのかでスルーされてしまった。そんな俺を見ていた側仕えは苦笑いをしていた。まあ自分の主人が母親に着せ替え人形にされていたらそりゃそう反応するしかないよな。


 パーティーの時間まで残り3時間俺はこの時間耐えられる気がしなかった。1時間半くらいは頑張るか。その後はもう知らん!


 結局1時間半耐えたがその後は限界が来て俺は意識を手放した。そんな俺を見てゆるーく止めに入っていた側仕えが必死になって止めるまでお母様は着せ替え人形にしていたらしい。そのお詫びにという形で俺は側仕えから平民の使う赤ちゃんの玩具を貰った。貴族の玩具は装飾が付いていて遊びずらいが平民の玩具はシンプルで遊びやすかった。これは俺だけの秘密だけどね。


 この地獄の時間が終わったらちょっとだけ休んでからパーティー開催ということになった。俺が気絶したせいでごめんなさい。でも、みんな優しい人たちだから許してくれるよね。


 こんなハプニングがあったがひと段落してパーティーの開催となった。


《アルフ筆頭側仕え》

 アルフ様が奥様に着せ替え人形にされるのはいつものことであまり気に留めていませんでした。ですが今日の奥様は一段と多くの服を持っていらっしゃいました。それを見てアルフ様は涙目になりながら訴えていたようですがスルーされてしまったようです。この光景を見て私達はただ苦笑いを返すことしかできません。いつもみたいにアルフ様に耐えてもらうしかないのです。


 でも今日は1時間半経ったか経たないかくらいのところでアルフ様気絶されてしまいました。その時私は心臓が止まるような思いでした。必死で奥様を止めてアルフ様を救出しましたが目覚める様子はありません。


「アルフ様、アルフ様」


 強制睡眠に入れれてしまったようです。隣で看病しながら、アルフ様が目覚めるのを待ちます。奥様も隣で泣きながら謝っています。流石にこの状態の奥様をそのままにしておくわけにいきません。奥様のせいではないという旨を伝えなくてはなりません。


「奥様、奥様のせいではありません。アルフ様の体調に気付けなかった私どもも悪いのです」


「いいえ、違うわ私が悪いの、気にしないで」


 パーティーが始まる直前、アルフ様はお目覚めになりました。アルフ様の体調を考えると少し休憩してからパーティーを開催した方がいいでしょう。


「奥様、アルフ様の体調を考えると少し休憩してからパーティーを開催した方が良いと思います」


「そうね。ガルアーク様にお伝えしてきます」


 そう言って奥様は部屋を出て行きました。


 少しして、アルフ様の元気が戻り始めたのでパーティー会場に行くと伝えると頷いてくれました。これからアルフ様の誕生日パーティーです。楽しみだな。

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