飛来するDesaster Ⅱ
「珍獣とは酷いことを言うな。これは、俺が人間を超えたことによる進化だ」
「進化? その真っ黒でよくわからない珍獣化が? 冗談は相変わらず笑えないな」
突然やってきたエレボス団長が全く緊張感のないことを口から発しているのに、場の緊張感が一気に高まっていく気がする。なんというか、今は下手に動けば即座に殺されかねない危うさがある。それが分かっているからか、日菜もエリーも椿も、全く動いていない。
「今更、何をしに来た?」
「勿論、お前を消しに」
にっこりと笑顔を浮かべたエレボス団長が腕を振った瞬間に、上空から数センチの隕石が超高速で落下してきたのを、加速している僕の視力が捉えた。
数センチと言えど、主成分が金属で構成された隕石が人間の目でとらえきれない速度で落ちてきたら、周囲には甚大な被害が出るはずだ。僕はそれを理解していたので、隕石が見えた瞬間に最大まで加速して三人を抱えて逃げた。
「……この程度の石ころで、俺を止められると」
「思ってない」
超高速の隕石を片手で受け止めたシャングリラの言葉が終わる前に、エレボス団長を中心にして周囲が一瞬で凍り付いた。初めて見る青の騎士団トップの戦いに、僕と日菜は言葉が出なかったが、噂を知っていたエリーと椿は顔を青褪めていた。
「こ、ここからもっと離れるのよ!」
エリーが本気で退避するように僕に言うので、抱えたまま更にその場から離れる。確かに、以前にエリーはエレボス団長のことを「災害」と呼んでいた。それに見合うようなあまりにも範囲が広すぎるギフトに見えるが、凍結と隕石に共通点が見えてこない。
「……団長のギフトは『災厄』なの。自然災害を意図的にその場に引き起こすことができる力……人間では、抵抗することもできないギフト」
ゆっくりと、エレボス団長とシャングリラから目を話すことなく椿が語る。
ギフトが『災厄』で二つ名が「災害」という訳か。腕を振るだけで隕石を落下させ、周囲を一瞬で凍結させるホルダーなら、そう呼ばれても間違いはないだろう。
「きゃっ!?」
「こ、今度は暴風か?」
「地面も揺れてるわっ!?」
距離を取って加速を解除した瞬間に、身体が投げ出されるのではないかと思うほどの突風が吹き出し、地震すらも起こり始めた。いくらホルダーと言えども、人間が自らの意図で起こしているとは全く思えない自然現象の数々に、開いた口が塞がらない。
ただ、古い神性を取り込んだシャングリラに対して、自然現象だけで勝てるとは、僕は到底思えなかった。
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