飛来するDesaster Ⅲ

「……なんとか、割って入れないかな」

「あんな災害の中に!? 絶対やめた方がいい!」

「今回ばかりは椿の意見に賛成よ。迂闊に足を踏み入れるべきじゃない」

「うーん……私は楽しそうだと思いますけどね」

「日菜は黙ってて」


 エリーと椿から真っ先に否定されてしまったが、僕はこのまま放置することを是としたくない。これは僕のプライドに関わる話とか、組織的な確執とかではなく、このまま放置していると、必ずエレボス団長が敗北する。僕にはその確信があったからだ。

 はっきりと言ってしまえば、僕は青の騎士団がどうなろうが知ったことではない。恐らくだが、エレボス団長が倒れれば青の騎士団は一瞬にして崩壊するだろう。レボリューショニストがほぼ壊滅状態の今なら、青の騎士団がいなくなったところでそれほどの被害は出ないかもしれないが、あのシャングリラは別だ。


「ここでシャングリラを倒さないと、人間が数千年かけて築き上げてきた全てを破壊される。そこから先にあるのはただ無秩序で、暴力が全てを支配する世界。僕はそれを認める訳にはいかない」

「ちょ、ちょっと!?」


 背後から制止の声が聞こえるが、僕は止まる気など全くない。

 身体が持っていかれそうになる暴風を受けながら、加速してなんとか突破する。その先に見えたのは、額から汗を流しながら苦虫を嚙み潰したよう表情をしているエレボス団長と、つまらなさそうな表情で攻撃を加えるシャングリラだった。


「団長!」

「っ!?」

「ほぉ……やはりあの男、状況が一番わかっているらしいな」


 人間の頭ぐらいの大きさの雹や、雷なんかが行き交っているが、加速している僕には関係のないことだ。飛んでくる雹を刀で弾き、エレボス団長の前に飛び出してシャングリラの十束の剣を受け止める。


「いいぞ。お前はやはり、俺がこの手で殺さなければならない相手のようだな」

「いい加減に、しろっ!」


 ここまで好き勝手にやられたのは始めてだ。

 この男は、自分が神に選ばれた力を持つ者だと信じて疑っていない。そして、その力は自由に扱い、自由に生きていいのだと勘違いをしている。自由には、常に責任が付きまとう。この男は責任を放棄して、ただ力の限り暴れているだけだ。


「……僕は、お前みたいな奴が大嫌いだ」

「俺はお前のように歯向かってくる奴が大好きだぞ。それでこそ潰す価値がある」


 自分が勝つことを、疑ってすらいないのだろう。実際、エレボス団長ですら手傷すら負わせることができず、僕の攻撃も通用するかなど全くわからない。だからと言って、こんな奴に負けるつもりなど、毛頭ない。

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