Shangri-Laの野望 Ⅳ
「百足、か? 気持ち悪いな」
「こっちは蠅かな」
シャングリラが自らとの融合を解除することで多数出現したモンスターは、どれも不快害虫だった。モンスターは全て不快害虫みたいな連中だが、巨大な百足なんかは相手にするのも嫌だと言うか。
「さっさと片付ける!」
椿はモンスターの見た目なんか気にならないのか、念動力で百足数匹を一瞬で圧縮して潰していた。周囲に体液がまき散らされているのを見ると、なんだかげんなりしてくるのだが、シャングリラがこちらを狙っているのかもしれない中でそんなことを言っていられない。
僕も加速を最大限活用しながらモンスターを輪切りにしていく。モンスターは確かに強力だが、四人で密集して庇い合いながらなら相手にならない。
「……惜しいな。お前達のその力、俺の革命の為に使えば人間の頂点に、成り上がれるだろうに」
「生憎だけど、頂点なんてものに興味はない」
どこからともなく聞こえてくるシャングリラの言葉には、全く賛同できる気がしない。当然、僕だって表世界の全てに対して納得して生きてきた訳ではない。なんなら、生きてきて辛かったことの方がよっぽど多かった。それでも、力で全てを解決しようとする、シャングリラの世界は否定しなければならない。僕は優れているからギフトを手に入れたのではなく、ただ運がよかっただけなんだ。
「俺に賛同しないのなら、仕方がない。脅威になる前に消してやる」
その言葉と同時に、シャングリラが宙に浮いていた。
「この、三種の神器の力でな」
宙に浮いているシャングリラの周囲には、三種の神器と思わしき物が浮いていた。
「させるか!」
「もう遅い」
椿が即座に念動力を飛ばしてシャングリラを攻撃しようとするが、それが届く前に三種の神器が消え、シャングリラの身体が光り始めた。
団長であるエレボスは、三種の神器そのものではなく、その神器が持つ古い神性をシャングリラは欲しているのではないかと考えていた。そしてどうやらそれは合っていたらしい。
「……素晴らしい。これが、古代の力か」
まるで堕天した神のように、神々しさの中に圧倒的な歪さを放つシャングリラの姿を見ただけで、知能なんてないはずのモンスターも、それと戦っていた僕たちも動きを止めてしまった。
黒い四枚の翼を揺らしながら、シャングリラは自らの額に生えた角に触れた。
「人間を超えるとは言ったが、こうも姿が変わるとは思わなかったな……まぁ、支障はないか」
呟くと同時に手を前方に翳した瞬間に、僕は時間を停止させた。
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