砕かれたIllusion Ⅲ

「ちぃっ!? 派手に動き過ぎですよ!」

「そうですか? 幻覚を見せるにも限界なんでしょうか」

「舐めないでいただきたい! 私もレボリューショニストの仮面者ですよ!」

「でも、弱いじゃん」


 エリーと話をしてから日菜に加勢しようとしたのだが、幻覚で生み出されたニライカナイを十人同時に相手にして余裕で戦っている姿を見て、改めて日菜の戦闘能力の異常な高さに感心してしまう。

 僕はそのまま三十倍まで加速して刀を抜く。一太刀でニライカナイの首を切断して、背後に現れた新しいニライカナイも頭から縦に両断する。

 通常なら、加速した僕の速度に対応することなど不可能なんだけども、圧倒的な反射神経と裏世界での身体能力の強化率から、日菜は三十倍に加速した僕の動きを視認して、動きを合わせることができる。

 僕が素早く動き回りながらニライカナイの首を落とすと、それに合わせて日菜が別のニライカナイを蹴り飛ばす。際限なくニライカナイの幻覚は増えているが、それを上回る速度で僕と日菜がニライカナイを潰していく。


「くっ!?」

「幻覚だって限界があるはずですよね?」

「それすら、貴女の幻覚だってありえるんですよ?」

「それはない。だって、貴方がシャングリラから重宝されていなかったでしょう?」

「黙りなさい!」


 まぁ、確かに際限なく無限に幻覚を見せることができるギフトならば、ニライカナイはもっと重宝されていてもいいはずだ。だが、やっている仕事はどちらかと言えばパシリというか、なんとなくだがレボリューショニスト内での立場が見える。そして、日菜はそれを感じていたのだろう。リーダーであるシャングリラから自由に行動してもいいと言われていた、日菜とは大違いだ。


「ただの暴力装置だった女が!」

「その暴力装置の方が、シャングリラは使いやすいと思っていたみたいだけどね。だって、事前にいつレボリューショニストが解散するか、私は知っていたもの」

「は?」


 日菜のその言葉に、ニライカナイの生み出した幻覚が一斉に止まった。彼の頭の中に、空白が生み出された結果だろう。


「蓮! 左後ろ!」


 ニライカナイの思考が止まった瞬間に、エリーから指示された方向へと加速しながら刀を振るう。空間が歪むようにニライカナイの幻覚が消えて、右腕から大量の血液を流すニライカナイがその場に現れた。


「どうやって?」

「単純に、空間の不自然な点を見つけただけ。あの女の言葉で動揺して、すぐにわかったわ」


 どうやら、日菜の一言はそれだけニライカナイに動揺をもたらしたようだ。なんにせよ、ここからニライカナイに負ける点はない。これで、終わりだろう。

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