砕かれたIllusion Ⅱ
「で、しらみつぶしって言っても、ほとんど日菜が倒したじゃん」
「まだまだ。三人だけ」
そりゃあ、ニライカナイの幻覚が三人で終わる訳はないんだけども、そんなことを言ったら無限に続くのでは?
「どんな強力なギフトだって、無限に発動できる訳ない。神代君の時間操作だってそうでしょう?」
「まぁ……」
確かに、時間停止は息を止めるような感覚だし、時間加速も身体から少しずつ水分が奪われていくような感覚がある。立ち止まった状態でも、加速を維持できるのは僕の体感時間で十分いけばいい方だろう。
日菜のしらみつぶしというのは、もしかしてニライカナイの幻覚が息切れするまで粘るのだろうか。脳筋が過ぎると思うが、いい攻略方法も思いつかないし、とりあえずは従っておこう。
「来るよ」
「相変わらず、頭の悪い人ですねぇ……だから私はあなたが嫌いなんですよ」
「そう? 私は別に、貴方に興味なかったけど」
日菜は、どうやら本当にレボリューショニストに所属しているだけで、特に横の繋がりがあった訳ではないらしい。だからって同じ幹部仲間に対して興味がなかったは酷いと思うが。
恐らく幻覚だろうが、ニライカナイがなにか武器のようなものを取り出そうとしている。僕はそれに対して受け身の構えを取ろうとしたが、次の瞬間には日菜の蹴りで上半身が消し飛んでいた。よく見ると、足の裏になにかブースターらしきものが見える。
「やぁ」
日菜のギフトである『創造』は、まさしくなんでも生み出すことができる万能に近いギフトだ。どんな原理で動いているとか、日菜が理解している必要はなく、ただ漫然とこういうものが作りたいと思ったら産みだせているというのが、日菜の創造の強み。銃の構造を知らなくても銃が生み出せるし、恐らくだが反重力なんていう現実味のない物も作れるはずだ。
日菜の蹴りの威力を見て、複数人のニライカナイが少し怯んだ。どうやら、僕たちに現在進行形で幻覚を見せているニライカナイの本体にも、今の蹴りは見えたらしい。ということは、ニライカナイの本体は比較的近い所にいるはずだ。
「エリー、ニライカナイの本体を探す手がかり、ない?」
「ないわよ。けど、戦闘を二人に任せていいなら、なんとかしてみるわ」
「それでいいなら頼んでもいいかな? 僕は日菜と一緒に幻覚の相手をしてるから」
あれだけ派手な動きをしている日菜一人でも、ニライカナイの注意を惹きつけることもできるはずだが、念のために僕が日菜のフォローに回った方がいい。日菜は確かに強いが、頭はそこまでよくないから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます