暴走するHolder Ⅲ

「これで、五人目!」


 エリーが回し蹴りで男を吹き飛ばしているのを横目に、僕は椿からの連絡を待ってスマホを触っていた。裏世界で携帯電話が使える理由は知らないが、圏外とかにならなくてよかった。なんでも、青の騎士団の本部周辺だけらしいけど。


 今、僕とエリーは青の騎士団本部の周辺で動いていたレボリューショニストの下っ端を数人片付けていた。どうやら、青の騎士団がレボリューショニスト掃討に動いていることはバレているらしく、破壊工作にやってきた、というよりは好き勝手に暴れるためにやってきたチンピラに毛が生えたぐらいの連中が多いらしい。本当に、レボリューショニストは解散直前の状態のようだ。


「……あの、私はいつまでこうしていればいいの?」

「ずっと」


 スマホを触りながらエリーのことを見守っていた僕の視界の端には、身体を鎖でグルグルに巻かれている日菜が映っている。話を聞いたらさっさと殺すのだと思っていたのだが、面倒くさいの一言で僕が管理することになった。幼馴染なんて言うんじゃなかった。

 そもそも、日菜がレボリューショニストの幹部である理由が強いからの一点だけで、組織内でも制御不能な暴走装置扱いだったので機密もなにも知らないのが悪いのだが。まぁ、小学生の時に裏世界に迷い込み、そのままレボリューショニストとして育ったが故に、精神が小学生の時のまま歪に成長してしまった弊害だろう。


「六人目!」

「ぐぇっ!?」


 エリーは銃弾で腹を貫かれたのが昨日なはずなのに、随分と元気に暴れまわっているな。戦闘系のギフトを持っていないが故に、本格的な戦闘に参加することはできないけど、ギフトを十全に扱うこともできない下っ端共相手になら年季の差がでるみたいだ。


「死ね!」

「……椿、連絡遅いな」


 チンピラの一人が僕に向かって銃を構えて発砲したが、僕はそれを加速することなく片手で弾く。裏世界に入るようになってから戦闘ばかりしている影響か、どんどん身体能力が上がっている気がする。

 銃弾を弾かれたチンピラは呆然としていたところを、横からエリーに蹴り飛ばされてしまった。


 椿は、青の騎士団の幹部として広範囲の捜索を任されているらしい。まだ日菜とゆっくり話し合う時間も取れていない中で、幹部として走り回っていて大丈夫なのだろうかと思ったが、緊急時には頭で考えるより手が先に出るタイプなので多分大丈夫だろう。


「……どうするかなぁ」

「私のことですか?」

「そうだよ」


 まさか死んだはずの娘が生きていました、なんて日菜の両親にも言えないし。いや、本当は伝えた方がいいのだろうけど、裏世界を認知できるのはギフトの資格を持つ者だけだからな。

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