暴走するHolder Ⅰ

「……ふふ、強いですね」

「暴れないでくれ。君からは聞きたいことが沢山ある……殺すのはそれからの方がいい」

「冷たく、なりました?」

「あんなことをされれば、それはそうだろう」


 僕の視線の先には、腹を撃ち抜かれたエリーが椿に介抱されている。あれを見ただけで、過去に失った幼馴染である日菜のことを許せなくなるぐらいには、僕はエリーのことを大切に思っている。


「ホルダー、らしくなりましたね」

「黙ってくれ」


 片腕片足の腱を切断されて、そこから腹を貫通するように刀を突き刺しているのに随分と元気そうだな。両足両腕の腱を切断しておいた方が良かったのかもしれない。


「しっかりしてくれ!」

「…………私に、そんな顔できるんじゃない」

「うるさい!」


 向こうは大変そうなことになっているが、思ったより余裕がありそうだな。周囲を飛んでいた蜂も、椿の念動力で首を捻じ切られているようだ。さっきまでは混乱しすぎて全くギフトも使えていなかったのに、エリーが撃たれたショックで逆に冷静になったみたいだ。

 向こうの心配は必要なさそうなので、僕は日菜を抑えることに集中しよう。僕が個人的に聞きたいことは多いし、青の騎士団としても聞きたいことが多いはずだ。なんとなく冷静になってきて、殺すって思っていた自分が恥ずかしくなってきた。


「……ねぇ、神代君。私、綺麗になりましたか?」

「……どうだろうね。見た目だけかもしれないよ」

「酷い人……椿ちゃんが、お気に入りですか」


 見た目だけなら、日菜だってやっぱり美少女して成長しているのは間違いないのだが、どうあっても仲間を撃たれたことやレボリューショニストに加担していることに対する内心的なマイナス点が低すぎる。

 元気な割には全く抵抗する意思を見せないと言うか、日菜の態度には違和感があるのだが、今の状況では僕たちには何もすることができないので、とりあえず任務の達成報告と一緒に日菜を突き出すことを考えればいいだろう。


「椿、エリーは大丈夫なの?」

「血、血が沢山出てる!」

「そりゃあそうよ……大丈夫。これくらいなら、慣れてるわ」


 ホルダーとしては慣れているという言葉は安心できるのかもしれないけど、一般人的には銃に腹を撃たれるぐらいなら慣れてるという言葉は、全く安心できない。

 椿が慌てている姿を見ると、なんだかホルダー界隈の中でも一般的ではない様に思えるが。


 とりあえず大丈夫そうなので、慌てている椿を宥めてからさっさと本部に帰って日菜を突き出そう。 

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