温泉地のMonster Ⅴ
「あ、怖い顔……でも、私のことをずっと見てくれるなら、それでもいいですかね?」
「……日菜、お前だけは許さない」
日菜は簡単に僕の逆鱗に触れた。
確かに、僕にとっても日菜は大切な幼馴染で、傷つけたいと思う訳ではない。それでも、僕のことを信頼してついて来てくれていたエリーを傷つけておきながら、嬉しそうに笑っている姿を許せる訳がない。
一度は失った幼馴染を、自分で殺すことになるとは思わなかった。ただ、レボリューショニストに加担して好き勝手にやっているのを見過ごせない。幼馴染だからこそ、僕がここで殺してでも止める。
「あ、目が変りましたね」
日菜の言葉を無視して一気に七十倍まで加速する。以前は五十倍で付いてこられていたが、素のスピードが上がっている状態で以前よりも加速も倍率が上がっている。日菜が僕を目で追おうとしているのが見えるが、そのスピードを上回る速度で近づく。
「っ!?」
日菜が反応する前に拳を腹に叩き込み、流れで武器を振るう。拳を受けて目を見開いた日菜だが、流れで首に向かって振るわれた刀は、なにか硬いものに防がれた。
「速くなりましたね」
「……なんだ、このギフト」
さっきから、日菜は僕の見えないところから物を取り出しているような動きを見せているが、明らかになにかがおかしい。槍、剣、銃、そして首を守るようにして現れた鉄板。
「ふふ……行きますよ」
日菜が何か言っているが、今の僕の速度に追い付ける方法なんて存在しないだろう。そして、恐らくだが日菜のギフトは物を創り出す能力だと思われる。その証拠という訳ではないのだが、今もまたどこかしらから僕が持っている刀と同じ様なものを持っている。
「うふふ……あははははっ!」
七十倍に加速している僕には、滴り落ちる水の粒すらも視認することができるのだが、そんな僕の目にも今の日菜の速度は普通の人間よりも少し遅いぐらいにしか見えない。普通の人間には目で視認することもできない速度だと思うと、少しゾッとするが、僕の方が速度は上だ。
「あら、見えません……」
「諦めてくれ」
もう、今更日菜に対して容赦するつもりはない。手始めに、日菜が刀を持っている右手の腱を切り裂き、刀を落としたのを見てから左足の腱を切断する。ゆっくりと倒れ伏していく日菜の腹を貫通するように刀を突き刺す。
「ぐっ!?」
「……終わりだよ、日菜」
腹を貫通されたぐらいで死ぬことはないだろうが、片足片腕の腱を切断されてまともに動くこともできないはずだ。この後、暴れるなら僕がそのまま首を落とそう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます