革命者暴走編

Peaceな日常 Ⅰ

「はぁ……」


 最近はなにかと忙しかったせいで、勉強に集中できていなかったのが、ようやく落ち着いたおかげでこうしてまともに授業が受けられる。隣の席に座っている女子は寝ているし、後ろに座っている椿はなにやら青の騎士団とスマホで連絡を取っているけど、僕は一人で平和に勉強している。


「……なんだか、親父臭いわよ?」

「それ、かなり失礼な言葉だからね、エリー」


 エレオノーラ改めエリーは、授業が終わった休み時間に僕の前までやってきて失礼なことを言う。

 因みに、エリーというのはエレオノーラの愛称で、頬を染めながらエリーと呼んで欲しいと言われた時は、僕も恋をするかと思った。鬼の形相をした椿が、すぐに突っ込んできたが。


「エリーは頭いいよね」

「勿論よ。そうでないとロッソの情報役なんてしていないし、こうして簡単に留学だってできないわ」


 なんでも、祖父母が大の日本好きな影響で子供の頃から日本語が喋れるらしいのだが、エリーは単純に頭がいい。日本語が喋られるからって、古典のテストでまで余裕で90点以上とるのは異常だと思うけどね。


「それにしても……ビアンコがいなくなったおかげでモンスターも減ったし、平和だね」

「まぁ、倉庫地帯はボロボロだけどね」


 裏世界であれだけの抗争になればそうもなるだろう。なんでも、原因不明の爆発事故が多発したことで倉庫の三十近くが破壊され、近くの住宅街にもそれなりの被害が出ていたらしい。幸いなことに、死者は出なかったらしいが、負傷者は出たらしいのでなんだか申し訳ない気分だ。

 青の騎士団が国の動かしている機関だったら、滅茶苦茶怒られたんだろうな。まぁ、ホルダーが勝手に集まって動かしているだけの無法者集団なんだけども。


「近くないか?」

「あら、そうかしら?」


 スマホから顔を上げた椿は、すぐさまエリーと僕の間に入って距離を取らせる。それに対して、エリーは挑発的な笑みを浮かべる。


「……今日も正妻戦争が始まったわねぇ」

「良くやるよねぇ」

「あそこまでになると、もはや羨ましいとも思えんわ」


 なんだか、クラスメイトから好き放題言われている気がするが、このさい無視してしまった方がいいだろう。僕だってなんでこうなっているのか全く理解できていないのだから。

 裏世界での仕事が減った代わりに、こうしてすぐにいがみ合う椿とエリーの仲裁をしないといけなくなったのは、面倒ごとなのかもしれないけど、このくらいなら可愛い方だろう。


「……平和だなぁ」

「あのキャットファイトを目の前にして平和とか、やっぱりメンタルが違うわ」


 いや、そんなこと言われても僕にはどうしようもないだけですから。

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