Gangの最期 Ⅱ
「ちぃっ!?」
レオーネは僕のギフトが理解の範疇の外側にあることを察して、無理に斥力を止めることができなくなった。それにより、僕の速度を追いきることができなくなっている。僕を捕えるために引力を発動させれば、正体不明の攻撃で反撃を受けるのがわかっているのだ。
「やってくれるな小僧」
「どういたしまして。そう言われるのが、敵の仕事だからな!」
引力と斥力によって発動できる力がどれほど強力であろうとも、このレオーネという男は自分の身を守ることを最優先においている。つまり、僕が自分の安全を無視して突っ込むことが、レオーネの攻略方法だ。
「っ! 更に加速した!?」
「ろ、六十倍はキツイ!」
今までの僕なら、自分の動きを最低限に制御することができる五十倍までしか加速をしていなかったが、限界を超えて六十倍に加速した。ここまで加速すると、既にレオーネには視認することすらも不可能な域に達しているらしく、五十倍の時に感じた視線が合う感覚が完全に消える。
「はぁっ!」
僕の速度を追いきれないと判断したレオーネは、すぐさま自分の周囲に斥力を発生させて全方位を防御する。それは、自分の身体を守るための行動なのだが、それが今は逆に都合がいい。
「なっ!?」
「ど、どうだぁっ!」
自分の斥力なら必ず相手を吹き飛ばせるだけの自信があったのだろうが、僕は加速を七十倍にすることで更に突破力を高め、斥力に対抗するように刀を突き出す。絶対に折れないと、青の騎士団の鍛冶師にお墨付きをもらった刀が、悲鳴を上げているが関係ない。僕は斥力を無理やり突破する為に全ての力を込めていた。
「ま、まず」
「遅い!」
加速する僕の視界には、全ての行動が遅く見える。僕の行動に対して後手に回った時点で、この勝負の行く末は見えていた。
斥力の壁を刀が少しずつ貫通してくるのを見て、レオーネが逃げようと身体を動かすが、七十倍に加速した世界では虫が止まりそうな動きだ。
「がぁっ!?」
「はぁぁぁぁ!」
斥力の壁を貫通し、レオーネがなにかをする前に肩を刀が貫く。激痛によって顔を歪めながら、レオーネは肩が貫通した刀を抜くこともできずに地面に倒れ込んだ。僕が手に持っていた刀は、半ばから折れていた。
「はは……折れちゃったな……怒られるかも」
絶対に折れないと自信満々だったのに、こうも綺麗に折ってしまっては流石に怒られるだろうな。それでも、エレオノーラが追いかけ続けていたギャングの人間を、ようやく追い詰めることができたんだ。悔いは、ない。
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