幕間 囚われのPrincess
「……ん」
海外からの輸出入が多い港の近くにある倉庫街の裏世界で、多数のギャングが歩き回っている中、椅子に縛り付けられたまま見張られている女性がいた。
神代蓮と共に蟻と戦っていたところを不意に襲われ、イタリアのギフトを使うギャング組織であるビアンコに囚われた、エレオノーラである。
「……外は、夜かしら」
「そうだな。そこの窓から見えるだろ」
エレオノーラは、こちらを監視しているギャング組織の人間に外が夜かどうかを聞いたが、聞かれた男は窓の外から見えるだろうと、適当か返しをした。
自分が囚われの身になってからどれだけの時間が経過しているか、あまりわかっていないエレオノーラは、単純に今の日付を確認しておきたかったのだが、ビアンコの構成員もそこまで馬鹿ではない。
「いい女だと思うんだけどなぁ……ヤったら駄目なのか?」
「舌でも嚙み切られて自殺されたら、人質の意味なくなんだろうが」
聞こえてくる下種な会話に腹を立てながら、エレオノーラは頭を冷静にしようとしていた。窓を注視していると、外では蜂のようなモンスターが飛び回っているのが見えた。自分がどこにいるのかエレオノーラは把握できていないが、少なくとも簡単に助けが来る場所ではないと理解していた。
「なら、口を動かせない様に縛ってとかよぉ」
「駄目だ。大体、その女だってホルダーなんだぞ? 殺されても知らねぇぞ」
「ちぇ……本当にいい女なのによ」
「それは認めるがよ。組織の人間は、上に逆らっちゃ駄目なんだぜ」
組織の男は、ロープで縛られて動けなくされているエレオノーラの身体と顔を見て、明らかにいやらしい視線を向けていたが、もう片方の男は危機管理能力が高いのか、絶対に近づかせないようにしていた。
エレオノーラは、手元に鋼線を持っていたので、近づいてきたら首でも落としてやろうかと思っていたが、誰も近寄ってくることはなさそうだと考え、時間が過ぎるのを待っていた。
「おーい!」
「どうした?」
「青の騎士団が、俺らの要求を受けたらしいぜ」
構成員の一人がやってきて喋った内容に、エレオノーラは顔を勢いよく上げた。
「じゃあ、この女は見捨てられた訳か」
「そうみたいだぜ。まぁ、イタリアの組織なんて日本の組織が助ける必要ないからな」
「そんな……」
「おいおい、そんなに絶望するなよぉ……興奮してきたからさぁ」
さっきからエレオノーラに下衆なな目線ばかり向けてきていた男が、ゆっくりとエレオノーラに近寄ってくる。鋼線を持っているので抵抗できるはずなのに、エレオノーラは抵抗することができなかった。自分が見捨てられたという事実に、心が絶望してしまっているのだ。
「へへ……この身体、好きにしていいんだよな!?」
「好きだな……いいぜ、どうでも」
「ラッキー!」
「……れ、ん」
最後に、エレオノーラが呟いたのは、短い間だったが自分と共に行動していた相方の名前。普段は優し気な笑みを浮かべているのに、いざとなると自分を助けてくれる騎士のような人。エレオノーラは一人で神代蓮のことを想いながら、自分の身体に手を伸ばす男から逃れるために目を閉じる。
「エレオノーラに触れるな」
「ぎぃやっ!?」
温かい腕が、エレオノーラを守るように伸ばされた。
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