動き出すTyrant Ⅳ
「妙な動きはするな」
「……それを、素直に聞くとでも?」
「聞いてもらう!」
ニライカナイは僕の警告を無視して懐から銃を取り出した。既に弾は込められていたようで、すぐにこちらへと向かって発射したが、加速した僕はそれを見てから避けることができる。同時に、この加速にあの男がついてこられるとは思えない。
一気に距離を詰めて銃を構えるニライカナイの右腕を切断しようとしたところで、虚空から突然、刀が現れた。それを避けて後ろに下がり、加速を解除するとニライカナイのすぐそばに、いつの間にかもう一人が現れていた。
「……エルドラドとか言ったか?」
「久しぶり、神代君。でも、今日はお相手できないの」
「おやおや。貴女が来たということは……もう終わりですか?」
「そう。早く帰る」
どうやら、ニライカナイの回収にエルドラドはやってきたようだ。もう終わりというのが、何を差しているのかはわからない。ただ、エレオノーラのことではないと思う。それがエレオノーラのことだったら、あの性格の悪いニライカナイだったら必ず挑発に使ってくるはずだ。
今、僕が時間を止めてニライカナイとエルドラドに追撃を仕掛けることは可能だが、それそすればエレオノーラがどうなるかわからない。僕が今、優先しなくてはいけないのはエレオノーラを助けることだ。
「おや……行ってしまいますか」
「またね」
背後から聞こえてくる敵の声は無視して、僕は最大加速で倉庫街へと向かう。蜂が集中している場所を把握しているので、そこを中心に片っ端から制圧して行けばいい。ニライカナイとの戦闘で、時間をかけるだけ無駄だと思ったから、力で解決しよう。
「どけっ!」
加速した状態では、巨大な蜂の動きも遅く見える。針を向けてきたり、顎を鳴らして威嚇してくる蜂もいるが、全部を無視して、近いやつの身体を切断するだけで対処する。そこから先は考えていないが、丁度目の前の倉庫から人間が顔を出しているのが見えた。
蜂を避けながら建物の窓を割り、中へと侵入する。
「て、敵だぁっ!?」
「青の騎士団か!?」
「は、速いぞ!」
なにか喋っているようだが、時間の加速した僕には言葉として認識できない。刀を抜かずに、徒手空拳で対応していく。一番近くにいた奴は蹴りで足の骨を折り、近づいてこようとする相手の腕を手刀でへし折り、周囲を確認してからエレオノーラが囚われていそうな場所を探す。
「き、消えた!?」
「上だ!」
「い、いや! もう下にいるぞ!」
銃を向けられているが、弾丸を放つまでが遅すぎて当たることはない。冷静に邪魔な奴だけを叩き、倉庫の中を全部確認したら隣の倉庫へ突撃する。
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