動き出すTyrant Ⅱ

 この男の情報は一つも持っていない。得体の知れない相手と言うのもあるが、レボリューショニストの幹部になれるような相手だ。無策のまま突っ込めばやられてしまうからもしれない。


「このまま膠着状態、というのも貴方の望むところでは」

「ない。だから、時は止まった」


 ギリギリ僕の間合いに入ってくれていて助かった。時間を止めて射程に入っているのならば、刀で首を斬り落とすなんて手段も取れる。

 言葉を喋る途中で停止したニライカナイと名乗った男に一気に接近して、首を一振りで斬り落とす。これで幹部は一人倒した。


「レボリューショニストの幹部がここにいるってことは、あの工場地帯の何処かにいるのは本当。早く探さないと」

「闇組織に葬られてしまうかも、しれませんねぇ」

「はっ!?」

「くくく……些か、不用心ではないですか?」


 首を斬り落としたニライカナイが喋っている。首と胴体が分かたれた状態のまま、あの男は一人で喋っている。ホルダーとなってギフトを手に入れても、別に人間じゃなくなる訳じゃない。首を斬り落とされれば普通に死ぬし、出血しすぎれば死ぬ。だが、目の前のニライカナイは死ぬ様子を見せないどころか、地面に落ちた自分の首を、切断されたはずの胴体が拾いながら喋っている。

 明らかに何かのギフトを使っている。まず最初に疑ったのは、不死、とかなんだが……流石にそうなったらもうどうしようもない。だから万が一の可能性は捨てて除外。次に考えられるのは、再生とか。本当かどうかは知らないけど、オオサンショウウオは真っ二つにされても死なないから、ハンザキなんて名前がついていると言われているぐらいの再生力があるらしいし、このニライカナイが首を切断されても死なない可能性だってある。だが、これも別に傷が治っているようにも見えないので違うと思う。

 まぁ、最後に疑ったものが一番、怪しいかな。


「むっ?」

「粉々に斬り刻んでやる」


 そもそも、首を切断したと思っているだけで、実は切断できていなかった。これが一番の有力候補だ。

 加速して一気に距離を詰めて、身体を三つに切断する。ついでに、手で持っていた頭も縦に両断する。これなら、再生能力を持っていようとも関係がないし、これでも死なないなら恐らく、この身体が本体ではないというだけのこと。


「おしいですねぇ」

「……は?」


 身体をバラバラにしたのに、背後からもう一人同じ格好の奴が出てきた。つまり、切断したのはやはり本体ではなかったということなんだろうか。それにしては、一つ目の死体が消える様子もなく、血が流れ続けている理由はなんだ。そういうギフトだと言われたらそれまでだが、そんな単純な問題ではない気がする。


「さぁ……謎は解けましたか?」

「……ぶっ殺す」


 挑発するように笑っているニライカナイの仮面の下は、多分ニヤけた顔だ。絶対にこちらを舐めている。

 謎は解けていないが、必ず殺す。

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