イタリアギャング編
変化したEvery day Ⅰ
「はぁ……」
僕、神代蓮が裏世界と呼ばれる世界で使う超常能力「ギフト」に覚醒してからはや数週間。僕は青の騎士団のメンバーとして、日々裏世界のモンスターを狩る仕事をしていた。
「あ、灰崎君おはよう」
「お、おぉ……」
僕の目の前を通っていった彼は、元々僕を毎日のように虐めていた灰崎慎太。僕よりも前から「ギフト」を持つ超常能力者「ホルダー」として裏世界で活動していた人間だったが、度重なる問題行動とレボリューショニストという敵対組織に唆されて暴走した結果、裏世界に関する記憶を消去されて一般人となった男。
裏世界の記憶を消去されただけなので、いつも通り表世界では僕は虐められると思っていたのだが、なんだか僕と椿を見た時だけ露骨に怖がるようになった。記憶を消去されても、身体の何処かで覚えているのだろうか。原因はわからないが、春木高校内で虐められなくなったのはいいことだと思う。
「蓮、ここにいたのか」
「……どうしたの?」
部活に所属している訳でもないので、授業が終わったらさっさと帰ろうとでも思っていたけど、後ろから椿が僕の名前を呼ぶので、反応しない訳にはいかなかった。
「最近、春木高校の近くでモンスターが多いらしいから、少し付き合ってくれないかい?」
何の用事で呼び止められたんだろうと思ったが、すごい距離を詰めてきて耳元で小さな言葉を喋ってくる椿に、少しくすぐったさを感じながら頷いた。
確かに、最近は春木高校の近くでモンスターを倒す機会が多かった気がする。春木高校に高校生として通っていることもあって、きっと青騎士幹部としての仕事を与えられたのだろう。
「クラス委員の仕事が終わったらすぐに向かうから、先に行っておいてくれないかい?」
「わかった。先に行って待ってるよ」
クラス委員をしながら青騎士の幹部も務めるなんて、大変だろうな。
適当に考えながら、僕は春木高校前の雑居ビルへと入る。明らかになにも入ってなさそうなビルの内部で、青騎士で貰ったボイスレコーダーのような機械のボタンを押す。すると、エレベーターが勝手に上なのか下なのかどっちかわからない方向に動き出し、いつの間にか裏世界へと辿り着いている。
「……全く、わからん」
既に何度か経験しているはずなのに、どうやって裏世界に入っているのかは全くわからない。どうやっているのか謎を解きたいがために、何度も裏世界と表世界を行ったり来たりしていたら、後日エレボス団長に呆れられたことがある。
ともかく、これで再び僕は非日常の世界に足を踏み入れたことになる。当然のように四階建ての雑居ビルの屋上へと飛び乗りながら、周囲の索敵を始める。
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