変化したEvery day Ⅱ
「……モンスター、発見」
椿を待ちながら周囲を観察していたところ、春木高校を近くにあるアパートの一角が崩壊した。巨大ななにかの影も一瞬だけ見えたので、恐らくあのアパートの向こう側にモンスターがいるのだろう。
僕としては、椿を待っていたい気分なんだけど、裏世界での破壊は表世界へと影響を及ぼすということもあり、このまま見過ごす訳にもいかない気がした。
「ん?」
放置して街並みを滅茶苦茶に破壊されても困るので、仕方なくモンスターを討伐しようと自分の時間を加速させようとした瞬間、崩壊したアパートの屋上へと降り立つ少女と、それを追いかけるようにアパートを駆けのぼる巨大な蜘蛛が見えた。よく見る脚が長くて蜘蛛の巣を張るようなタイプではなく、ハエトリグモと呼ばれる巣を持たないタイプの蜘蛛のようだが、八本の脚を使って少女に襲い掛かっていた。
蜘蛛と対峙している少女は、恐らく青騎士のメンバーかなにかだろう。しかし、椿と同い年ぐらいのホルダーは、僕と灰崎しかいないと聞いていたんだが、あの少女は何者なのだろうか。もしかして、エレボス団長のように、見た目年齢詐欺なのだろうか。
「と、考えてる場合じゃないな」
一人で色々なことを考えている間に、少女は蜘蛛に向かって攻撃を繰り返しているようだった。ただ、少女の攻撃は蜘蛛に全く効果がないようにも見えるのに、何故か少女は退くようなことはなく効かない攻撃を繰り返している。
十倍程度の加速で一気に距離を詰めた僕は、そのままの流れで少女を襲おうとしている蜘蛛の腹を横から蹴り飛ばす。
「はぁ!?」
「おっと、ごめんな」
助けた少女が、街中を歩いていれば十人中十人が振り返るだろう金髪の美少女であることに驚きながらも、今は蜘蛛の方が優先だ。蹴り飛ばされた蜘蛛は、既に向かいのアパートの壁に貼り付いてこちらを複数の目で確認している。
現実の蜘蛛の目は、昆虫とは違い単眼が八つである。ハエトリグモのような蜘蛛の巣を張らないタイプの蜘蛛は、前方二つの目が発達していて、それ以外の六つが退化している。つまり、前方二つの目がこちらをしっかりと捉えているあの蜘蛛は、僕のことをしっかりと敵であると認識しているようだ。
「っ!?」
さっさと片付けようと足に力を入れた瞬間、蜘蛛は口から紫色の明らかに毒といった体液を吐き出した。普通の蜘蛛が吐く毒程度ならば、人間が受けても大した問題にはならないだろうが、相手の体長は数メートルも存在する。そんな蜘蛛が放つ毒は、当然のようにコンクリートを簡単に融解させる。
自分の時間を加速させているのでなんとか避けることができたが、出会い頭にこんな毒液を吐かれたら一瞬で殺されるかもしれない。この蜘蛛は、さっさとここで駆除しよう。
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