終結したUproar

 結局、レボリューショニストの幹部は一人も捕まらず、ただモンスターが大量に発生しただけの事件となった。半ば事件の首謀者とも言えるはずの灰崎慎太は、何故か出会ったはずのレボリューショニストの幹部の、声も性別も体格もなにもかも記憶していなかった。恐らく、レボリューショニストの内部に記憶を操作したりするホルダーでもいるのだろう。

 今回の騒動で収穫として得たものは、今まで全く存在を確認されていなかったエルドラドという新しい幹部格の情報だけだった訳だ。


 僕と戦った後、椿によって連行された灰崎慎太は、レボリューショニストによってなにかしらの改造のようなものを受けたようで、既にギフトがまともに発動できる状態ではなかったらしい。

 今の灰崎はホルダーなのにギフトをほぼ認識することができず、もはやこれではホルダーとしても活動できないと言うことで、結局青騎士によって記憶処理を施され、一般人として生きていくことになるらしい。

 これからは、少し霊感のある人間程度で生きていくことになるのだろう。少し同情心も湧いてくるが、レボリューショニストの誘いに乗った自業自得だと椿が言っていたのを、妙に覚えている。


 僕はというと、今回の功績が認められて一気に幹部格に……なんてことはなかったが、どうやらドゥアトさんとエレボス団長には時間停止の能力の方もバレてしまったらしい。直接言及はされていないが、ギフトを隠しているな的なことを言われたからだ。


「……なんだか、無情な世界だね」

「そうかな? 私は、いい世界だと思うよ」


 僕の横で、今の僕と同じようにブランコに乗りながら驚異的なバランスで缶ジュースを飲んでいる椿の言葉に、僕は苦笑いを浮かべた。中学生の時から、こんな超常的な力を持って戦ってきた椿は、多分もう感覚が麻痺しているんだろう。


 力を正しい形で使えなかったから、組織に属すことができなかったからという理由で、二度とギフトを使うこともできず、ただの一般人として生きて行かなくてはいけない。簡単に放り出してしまう裏世界の日常に、僕はなんとなくモヤモヤを抱えていた。勿論、今まで灰崎にされてきたことを考えれば、同情するつもりなんて欠片もないんだが、果たして青の騎士団が本当に正しい組織なのかというのは、僕にはすぐに判断できる問題ではないと思った。


「いいんだよ、そんなに難しく考えなくても」

「……そう?」

「そうだよ」


 椿は笑顔のままそう語るが、僕はそう楽観的に考えられなかった。

 もし、僕が灰崎の立ち位置だったら……僕はレボリューショニストの誘いを毅然と断ることができただろうか。もし、青の騎士団が椿に危害を加えるような集団だったら、僕はこうして裏世界で集団に属して生きていただろうか。


 世の中の正義と悪は表裏一体。


 何が正しいとか何が悪いとか、社会経験の全くないただ超常能力を持ってしまっただけの高校生である僕には、きっと想像もつかない話だ。

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