交差するDestiny Ⅴ

「我々青の騎士団は、元々リベレーターと呼ばれるホルダーが共同戦線のために作り出した組織だ」

「Liberator? 解放者ですか?」

「そう。私たちは元々、解放者を名乗って戦っていた」


 遠い昔を思い出すかのように視線を飛ばして語る団長エレボスに、僕は少しだけ胡散臭そうな顔を向けていた。


「因みに、青の騎士団を作ったのは私だ」

「あんたかい」


 なんなんだよ。

 てことはそんなに昔のことじゃないだろ、青の騎士団を設立したの。なんでそんな遠い昔を思い出すかのような目で語ったんだよ。


「何故、解放者を自称して戦っていたかというと、相手が革命家を名乗っていたからなんだ」

「革命家?」

「レボリューショニスト、と名乗っている集団のことだ。我々は、未だにそのレボリューショニストと戦っている」


 初めて聞いた名前だが、その「レボリューショニスト」と名乗っている組織に対抗するために「青の騎士団」を設立したのが、この年齢不詳の少女エレボスという訳だ。全く理解できないことが多いが、取り敢えず横にいるドゥアトさんの表情が変わらないので信じていいだろう。


「その、レボリューショニスト、は何を求めてどんな活動をしている集団なんですか?」

「端的に言うと、ギフトは優れた人間が覚醒する者だから、持たざる者に対して好き放題しようぜ、という無法者集団だ」

「タチ悪すぎるでしょその集団」


 選民思想と言えば複雑な組織に聞こえるが、端的にまとめると社会に不安を示すためにバイクで街中を爆走する半グレの暴走族でしかない。ただ、警察が適当に対応すればいい暴走族とは違い、ホルダーが活動しているレボリューショニストは、同じくギフトを扱えるホルダーしか対応することができない。なにせ、裏世界に介入できるのがホルダーだけであり、ギフトを視認できるのはホルダーだけなのだから。


「好き勝手にやっている連中は、正してやらないといけないだろう? しかも、下手をすると人を簡単に殺しかねないような連中だ」

「それで、正義感で青の騎士団の設立して、正義感でホルダーを束ねて戦っていると?」


 急に胡散臭そうな話になった。

 正直、ギフトなんていう名前がついている能力を持っている人間が、正義感だけで他のホルダーを取り締まるような組織を運営するとは思えない。僕はそこまで、人間という生き物の善性を信じられるような生き方をしていない。


「…………レボリューショニストのリーダーをしている人間が知り合いでね。そいつをなんとかして止めたいのさ」

「やっぱり打算じゃないですか」

「そうだね。打算で動く人間は嫌いかい?」

「まさか」


 聞くべき話を聞き終えた僕は、椅子から立ち上がった。


「打算のない人間よりもよっぽど信頼できる。僕は貴方を肯定することはないかもしれませんが、否定することもないですよ」

「それは敵にならなければ、だろう?」

「当然ですよ」


 青の騎士団が、一先ず僕の敵でないことは理解できた。それが分かればいいし、レボリューショニストという敵組織のことも理解できた。今の段階でこれ以上の情報は必要ないだろう。

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